銀翼の毒龍

 そこは土壁で縦に高く続く空洞が広がる。遥か彼方まで伸びて、丸く切り取られた灰色の空を見上げる事が出来た。幾つものモンスターらしき骨と火山灰が地面に転がる。あの雄叫びを上げ昂揚(こうよう)したモンスターが捕食した残骸なのだろうか。


「たっけぇーなぁ…それにこの骨の量…食い過ぎだろ!?ってもしかしてここ……」


 そう呟きながら、オレは縦に続く空洞の下から、丸く切り取られた灰色の空の光景を眺めていた。


「あれ?なんか……黒い影が……」


 その丸く切り取られた灰色の光景の中に、何やら黒い影が滲(にじ)み出す。それは次第に大きく膨らみ……銀色の胴体、輝くふたつの翼、先が尖った長い尾に鋭利に輝くかぎ爪……それが分かる程にまで、オレの視界に大きく写り込む。


「ドっ、ドラゴン……?ってやべぇよ!!」


 後退りして……この場から逃げてしまおうか?そんな事を抱く。縦に丸く続く空洞を急降下して来るドラゴンの姿……そして、自信を鼓舞するかのように叫ぶ。


「逃げたらダメだ……逃げない!!アイツが戻ってくんのを待つんだ!」


 武者震い?否、とてつもなく大きい姿のドラゴンをいざ、この目にして恐怖と戦いながらも立ち向かわなくてはならない……決して武者震いでは無く、恐怖から来る身体の震えである。


 急降下した銀龍はオレを一見する。そして雄叫びを上げるのだ。オレの顔程ある瞳は鮮やかなブルーで、小さな丸を描く黒の瞳孔。それはオレの姿を餌食の如く、まがまがと凝視された。

 目の前で捉える事が出来るこの銀龍……今までのモンスターよりも遥かに大きい。体長はおおよそ30メートルだろうか。それを覆うこの空洞はさらに広かった。難無く、銀色に輝く翼は振り下ろされる。

 翼で巻き起こされる強烈な風圧。それに舞い踊る土埃と、火山灰がこの空洞を覆った。


 このドラゴンからしては、オレの事をここに転がる腐敗した骨……捕食したモンスターと同じモノだとして認識しているに違い無い。


 そして、再度放たれる雄叫び……それと同時にスキルを発動する。


「【断固たる決意】!!」


 臨戦態勢が整えられた銀龍……それに対して光に包まれたこのスキル効果である、防御壁が生成された。

 その中に立つオレに向けて、余裕さながらの表情を見せるのだ。そして、銀龍の頭上には≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫と表示されていた。


 オレは改めてここが隠しダンジョンであり、目の前に対峙するモンスターが≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫だと再認識する。


「これでどうにか15分間は耐えれる。だけど……」


 

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