初討伐はモンスターの自滅でしたw
彼女から教えられた方に向かう中、呟く。
「でもなぁ、人いっぱいいるとこでやるのもアレだしな?なんだったら人目につかないとこでやるか?そうなると…助けてもらえなくなる?うーん…まぁ、何とかなるか?それにしてもさっきの娘可愛かったな?これやってればまたどっかで会える!そんな気がする。いやいやいや、まずは稼がないと!」
鼻の先を伸ばしながら、先に進む。
「やっぱ、迷うな!?ここで迷ったらもともこうも無い!」
そう言い放ち、少しずつ人目のいない所までやって来た。
進むにつれ、森は深くなる一方。木々たちは風の中で踊っていた。陽の光は木の枝の隙間と、葉と葉の間から落とされている。オレの足はそこで歩むのを止めた…人目を測り、居ないのを確認しながら大きく息を呑み、人の姿がいないのを良いことに……
「マップ!!」
深くなる森の中で1つの声が響き渡る。葉と葉で反射しているようであった。すると、オレの前にウィンドウが現れた。
「はぁー、この青いマーカーがオレね?んで、ここがと…うんうん!さっきの街は、やっぱり【始まりの街】ってとこか?うーんと、今いる場所はと…あぁ、これね!?【森と泉】さっきの子が教えくれた通りだ」
バツマークを押し、マップを閉じる。そして再び歩き出した。その時、ガサゴソと茂みを掻き分ける様な音……
「なんだ!?もしかして…このタイミングでモンスターのお出ましか?」
茂みの中から湧くモンスターの姿がある。その姿は動物のイノシシであった。茶色の毛皮で覆われ、牙が2本口の先から飛び出し、全長は大体1.5メートル位であろうか。オレは悪い事にそのイノシシと目が合ってしまう。
「ヤベェ、どうしよう?ええっと、あの案内人の猫から貰ったダガーナイフ出しとかないと……」
今にもそのイノシシは襲って来そうな目つきをオレに向け、威嚇しているかの如く唸っているのであった。すかさず腰に回すベルトに手を回し、引っ掛けられているダガーナイフを取り出す。ダガーナイフを片手にし右足を前に出し構えながら、そのイノシシと対面するのであった。
「良しっ、来るなら来いよ!」
そう恫喝して己に力を与えていた。だか、意外と思ったよりも冷静であった。自信が有るとは言えないが、緊張のあまり…とは違った。
そしてふと思うのだ–––。
「普通にこの武器で倒しても、なーんか、つまんねぇよな!?敏捷100に極振りしたからな!?その力試してみるか?」
攻撃よりも回避し続ける事を選んだ。【AGI】を100に極振りしたその力を試してみたくなったのであった。
その上において、自分の中ではHPがゼロになり、運営にアカウント凍結された場合の、アカウント買い戻しのコストについてはまだ知り得ていなかった。
そのコストは「1ジェム1円」と言う価値のもと、計り知れないのはもっともだ。その為、安易な戦闘は愚か、攻撃を食らってしまうのはもっとも滑稽で愚かである。
すなわち、攻撃絶対回避と言うのは、必ずと言って良いほどの戦略的であると言える。
イノシシの先行攻撃が始まろうとしていた。頭を下に向け、最早速さ勝負と言わんばかりに、突撃を喰らわしてやろうと仄かしている。
そして、前傾姿勢になったイノシシはオレの方へと突っ込んで来る。そのイノシシの第1打が始まろうとした。オレは肩に力を入れ、イノシシの動きをよく観察する。一挙一動とも見逃さまいと……
「バッ、バババババッ」
土を蹴り上げながら突進する姿。それは一瞬の出来事であり、想像を超える速さを持って、ものの数秒ほどでイノシシはオレの目の前に現れた。自ずとダガーナイフを握る手には力が加えられ…オレはすかさず身を交わす。
するとだ、オレの体は現実では考えられない程の動きを見せた。冷や汗を纏ったオレの体は、余裕でイノシシの突進を交わし、2メートルもの距離を瞬時にして移動していた。
「あれ?オレ今の交わせたの?えっ?めっちゃ早えーじゃん!これじゃあ余裕じゃねぇの?幾らでも突っ込んで来いってんだよ!」
そして体勢を直しつつ、イノシシの第2打が始まろうとしていた。
案の定だ、何の躊躇なく攻撃を回避できたのであった。これが【AGI】に極振りされた力か?と納得しつつオレは……第3打、第4打と繰り返し避けきるのだ。
「あぁ、これが今のオレの力ね!?つか、これずっと回避してたらイノシシ疲れ果てて倒れたところにグサリで良いよな?」
そんな言葉を言い捨てて、それを繰り返して回避すること1時間経った頃……
通知音が頭の中で音が鳴り響き、オレの前に白い半透明のパネルが現れたのだ。そこには『スキル【一重の極み】を取得しました』と表示され、次の画面に変わる。
【一重の極み】
回避能力・回避成功率大幅アップ。
このスキル所有者は【AGI】1.5倍にする。
取得条件
ある一定の時間、回数を被ダメ無く回避成功
「【一重の極み】??うーんと、【AGI】1.5倍だから…150か?やったね!なかなか使えるんじゃないかな?どうせ1層のモンスターなんて雑魚だから…イノシシのくせに良いスキル貰ったわ!」
そして、とうとう疲れ果てたイノシシはと言うと、躯体を地面へと叩き付けて、横に転がっていたのだ。
弱り切っている吐息が激しく、ゼーゼーと音が響く。
「ふん!やっぱり思った通りだぜ!こいつー、倒れやがったな!?」
オレは倒れているイノシシの前に向かい、ダガーナイフを振り上げ、とどめを打つ。
すると、イノシシはガラスが割れた様に、破片となり空を上昇しながら消えて行った。
イノシシの倒れていた場所に、ドロップアイテムとコインが2つ現れた。
そのコインは宙を浮き出し、オレの方へと向かっては体に入り込むようにスッと消え、たちまち頭の中で鳴る通知音だ。
半透明のパネルが出ては『金貨【100ジェム】を取得しました』と現れて、ドロップアイテムを前にし【鑑定】スキルを使ってみることに……
【イノシシの皮】
イノシシから採取、またはドロップで取得出来る。装備品の素材として使われる。
売価価格『75ジェム』
数秒後、その白い半透明のパネルは消えたのだ。
「今日はこの辺でログアウトしますかね?」
はぁと、溜息を溢(こぼ)しつつ呟く。
「モンスター一体で100円かぁ…まだまだ頑張らんと…家賃払えねぇ!」
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