第19話:・・・・・・何故?
「・・・・・・・・・・・・」
神官長サーゼンはしばらく口を噤んだまま考え俯いていた。そして、顔を上げリオルートへと口を開いた。
「その問いに対する私の答えはありません。国王陛下と王太子殿下からの命令で異世界召還の手はずを整え実行したのは私です。が、そのことについてのお考えは何も聞かされておりません」
「進言もしなかったと? まさかと思うがまったくの考え無しだったとは思いたくないな。・・・・・・大体、異世界召還をするのであれば最低でも公爵家の同意を得るのが道理ではないのか?」
「・・・・・・陛下はずっと魔物被害に関する王家としての対応、特にバリンドルからの催促に頭を悩ませている御様子でした。禁止されていた異世界召還を強行したことを考えれば、もしかしたら精神的に追い込まれ、正常な判断能力を欠いていたのかもしれません」
「バリンドル家か・・・・・・」
御三家の一つ、バリンドル公爵家と王家とは他の御三家に比べ一番結びつきが弱い。
元々一国の主だったバリンドル家が今の王家の臣下となったのは、初代国王である救世主の力、魔力があってこそ。その当時と同じこの国難に対応する力なくして王家といえるのかという精神的重圧が国王にあっただろうことは推測出来る。
「レディルは何も考えてなかった可能性が高い。魔物の異常発生のせいで延期されているルーシェとの結婚のことばかり気にしていたようだしな。・・・・・・しかし、だとしたら、考え無しにも程がある」
ライツは眉間を寄せ、片手で頭を抱えた。
そんなライツへとリオルートが声をかける。
「ライツ、そのレディル王太子のことだが・・・・・・」
「?」
「現在この城内にいらっしゃる」
「・・・・・・は?」
その低音に神官長は背筋を正した。
「この部屋を出て左正面の部屋にいる」
「何故?」
一緒に来ただろう神官長へとライツは問うた。
「わ、私はお止めしたのだが、どうしても救世主様とライツ様に謝罪がしたいとおっしゃって! もちろん身分を隠し、変装してきているのでそこはご安心ください!」
「・・・・・・何故?」
納得がいかないのか、ライツは同じ台詞を繰り返した。
「お、おそらく、ライツ様がこちらの領地へお帰りになった後、登城し今回の経緯を知ったルーシェ嬢に長くお説教を受けたご様子でしたので、それが理由かと」
「・・・・・・・・・・・・」
しばらくの沈黙の後、ライツはリオルートへと一礼し、無言で部屋を出て行った。
それを見送ったリオルートが息を吐き「やれやれ」と言って背もたれに体を預けた。
「頭の痛い問題が山積みだな」
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