第5話:これがスライム・・・・・・。



「わぁ」

 愛那が声を上げた。

 視線の先は、テーブルの上に置かれた透明なケースの中にいるスライムだ。

 ケースのサイズは縦横奥行き共に五十センチ位で、その中にいるスライムの大きさは約三十センチ。

 そのからだは透き通った薄い水色で、その中心部分に青い石のようなものが見える。

「これがスライム・・・・・・」

(綺麗。ゼリーみたい。柔らかそう。指でつついてみたい! ・・・・・・だけど、そっかぁ。私が想像していたスライムと全然違う)

 肩を落とし溜め息を吐く愛那。

(あの漫画のスライムみたいにピョンピョン跳ねたりしないのね。ナメクジとかカタツムリみたいな動きだわ。それになんといっても・・・・・・顔がない!! この世界のスライムはのっぺらぼうなのね! あれじゃあ表情がわからない! 私が期待していた愛らしいスライムはいませんでした! 残念!)

「マナ様。わかりますか?」

「え?」

 声をかけられ愛那が横に立つナチェルへと顔を上げた。

「スライムの気配を感じますか?」

(そうでした!)

「ちょ・・・・・・っと、待って下さいね」

 愛那が目を閉じて気配を感じるよう感覚を研ぎ澄ます。

「・・・・・・・・・・・・?」

 首を傾げて愛那がまぶたを開いた。

「よくわかりません」

「そうですか。わかりました。では」

 そう言ってナチェルが手を上げると、布をかぶせた中の見えないケースが二つワゴンに乗せて運ばれてきた。

「この二つの内どちらかにスライムが入っていますので、マナ様にはそれを当ててもらいます」

(わ~。何だかクイズ番組みたい~。・・・・・・って、違う! 魔物の気配を感じ取るために必要な能力なんだから真面目にやらなきゃ!)

 愛那は二つのケースの間へと移動して目を閉じた。

(気配。・・・・・・魔物の気配。・・・・・・右? なんて表現したらいいかわからないけど、右の方に何かいる気がする。左は・・・・・・ない)

「こっち、かな?」

 目を開けた愛那が右を指さして言うとナチェルが頷いた。

「正解です」

 二つの布が外されケースの中が見える。

 片方は空で、愛那が選んだケースの中には薄い赤色をしたスライムがいた。

 中心には赤い石のようなものが見える。

 愛那は浮かない顔で正直に話した。

「ナチェルさん。今は当たりましたが、なんとなくといった感覚でしかわかりませんでした。自信を持って魔物の気配がわかるとは言えません」

(どうしよう。救世主なのに・・・・・・)

 そんな気落ちしている愛那へ、ナチェルは微笑を浮かべて「大丈夫ですよ」と伝える。

「魔物の中でもスライムの気配が一番感じにくいものなんです。危険な魔物は強ければ強いほどその気配を感じやすい。だから、大丈夫です」

 その言葉に、愛那はホッとして笑顔を見せた。

「そうなんですね。よかったぁ」



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