第11話 ブレーメンの裸音楽隊

 むかしむかし。

 一頭のロバが、ブレーメンという街を目指して、街道を歩いてました。

 ロバは、ロバ耳とロバ尻尾、ロバ手袋とロバブーツだけを纏った、裸な少女の姿をしておりました。

 牝で小柄なため、荷運びには適さないと、お暇を貰った少女ロバは、これ幸いにと、ブレーメンで演奏家になる決意です。

 街へと続く道の途中で、娘ロバは、一頭のイヌと出会いました。

 イヌは、イヌ耳とイヌ尻尾、イヌ手袋とイヌブーツだけを纏った、裸な少女の姿をしておりました。

「あらイヌさん、こんにちは」

「あらロバさん、こんにちは」

 娘イヌは、小柄で牝なので牛追いには適さないと、お暇を貰ったのでした。

「それなら、私と一緒にブレーメンへ行って、演奏家になりましょう。私はギターを弾きますから、あなたは太鼓を叩いてはどうでしょう」

 娘ロバの提案に、娘イヌは答えます。

「バンド的にはドラムスね。すてきだわ。ぜひ一緒に行きましょう」

 ロバとイヌが道を行くと、今度は、一匹のネコに出会いました。

 ネコは、ネコ耳とネコ尻尾、ネコ手袋に猫ブーツだけを纏った、裸な少女の姿をしておりました。

「あらネコさん、こんにちは」

「あら、ロバさん、イヌさん、こんにちは」

 娘ネコは、小柄なせいかネズミを追っても怖がられず、ネズミ捕りには適さないと、お暇を貰ったのでした。

「それなら、私たちと一緒にブレーメンへ行って、演奏家になりましょう。あなたは夜の演奏が得意だから、きっと音楽隊に入れるわ」

 娘ロバの提案に、娘ネコは答えます。

「夜の演奏って、響きがいやらしいわ」

 娘ネコの言葉に、娘イヌが提案します。

「それなら、三味線がいいわ」

「もっとイヤだわ。そうだわ、ガールズバンドを組むのなら、私はベースを担当するわ」

「まあ、なんて丁度いい組み合わせでしょう」

 ロバとイヌとネコが道を歩いて行くと、一羽のニワトリと出会いました。

 ニワトリは、頭に嘴の飾りと、お尻にニワトリの尾羽、羽根手袋とニワトリブーツだけを纏った、裸なグラマーティーンでした。

「あら、ニワトリさん こんにちは」

「あら、ロバさん、イヌさん、ネコさん、こんにちは」

 ティーンニワトリは、雄鶏のような大きな声では鳴けないので、朝を告げるには適さないと、お暇を貰ったのでした。

「それなら、私たちと一緒にブレーメンへ行って、演奏家になりましょう。あなたは声がとても綺麗だから、センターでヴォーカルがいいわ」

「まあ、センターでヴォーカルなんて、夢のようだわ」

 少女たちは意気投合すると、みんなでブレーメンへの道を行きます。

 日が暮れる頃、森に差し掛かった裸の娘たちは、森の中に明かりを見つけました。

 娘ロバが提案します。

「今夜は、あの家で休ませてもらいましょう」

 明かりがこぼれる小屋の窓から中を覗くと、そこはなんと、盗賊団のアジトでした。

 中では、むさ苦しい盗賊の男たちが、豪華な夕食を囲んでいます。

 娘ロバたちも、お腹がペコペコです。

 娘イヌが提案します。

「美味しそうだわ。どうせ相手は泥棒なんだし、あのご馳走は、私たちで食べちゃいましょう」

「「「そうしましょう」」」

 四つん這いとなった裸な娘ロバの背中に、裸の娘イヌが四つん這いで乗って、その上に裸の娘ネコが這い乗って、更に裸のティーンニワトリが乗りました。

 裸の動物娘たちは、小屋の盗賊たちへ向かって、一斉に声を上げます。

 ロバはヒィイ~ン!

 イヌはワンワン!

 ネコはニャ~!

 ニワトリはコケコッコー!

 混ざり合った鳴き声に、盗賊たちは驚きました。

「ぎゃーっ! 化け物だーっ!」

 リーダーを先頭に、盗賊たちは我先にと、逃げ出します。

 誰もいなくなった小屋で、裸の娘たちはご馳走をお腹いっぱい食べて、更に蓄えられた食料も、ずっと食べるに困らない程、タップリと見つけました。

 裸の動物娘たちがベッドでスヤスヤ眠っていると、盗賊の手下たちが、小屋の様子を伺いに戻ってきました。

 裸の娘たちは、手下たちに襲い掛かります。

 ニワトリは脚の爪で盗賊たちの頭を掻きむしり、ネコは盗賊たちの顔を引っ掻いて、イヌは盗賊たちの足に噛み付いて、ロバは盗賊たちのお尻を蹴っ飛ばします。

「ぎゃーっ! やっぱり化け物だーっ!」

 盗賊の手下たちは、一目散に逃げて行きました。

 リーダーの待つ隠れ家に戻った手下たちは、怯えながら報告します。

「あの小屋には、どうやら恐ろしい魔女が居ついてしまいました。しかも、掻きむしるわ引っ掻くわ噛みつくわ蹴とばすわで、どう考えても、一人や二人ではありません」

 盗賊たちは、小屋へ帰るのを諦めて、遠くへと逃げ去って行きました。

 こうして、裸の動物娘たちは、演奏家になるとか置いといて、小屋でいつまでも楽しく暮らしましたとさ。


                        ~終わり~

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