最終話

 どうしよう。涙が止まらない。こんなにも私は、ユウスケに会いたかった。


「…ユウスケが…猫みたい…。…突然現れて、勝手にいなくなって…。」

「俺も猫じゃねーよ。俺は俺だ。」


 もう離れない。もう二度と、離れないからね。


「もう勝手なこともしねーよ。」


 砂のついたユウスケの長い指。私のツバメに触れ、そして包んだ。


「…痛かっただろ。」


 私は首を横に振る。声を張る。


「痛くなかった!全然痛くなかった!それがすごく…痛かった…。」


 まただ。またユウスケの、切ない目。


「…痛かったんじゃねーかよ…。」


 切ない。切なくて仕方ない。私もユウスケも。また吹いてよ、柔らかい風。じゃないとこの時間が、ちぎれてほどけてしまいそう。


「全部終わらせてきた。だからやっと来ることができた。ここに。ユートピアに。」

「…ユートピア?」

「お前がいればどこだって、俺にとってはユートピアだ。」




 いつか憧れた理想郷。私もユウスケも探してた。あるはずのない、ユートピア。


 私達は見付けた。見付けられた。


 私達は私達が、ユートピアだったんだ。




THEME SONG

THE YELLOW MONKEY / 楽園

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラストユートピア 凪 景子 @keiko012504

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ