呪いのサイト

鳴子

呪いのサイト

「はぁ、あいつうざいなー」


 俺はふと呟いた。

 あいつとは部活の顧問のことだ。あいつは現代ではあり得ないほど体罰をする。俺も何回も喰らった。体罰だけじゃない。言うことも理不尽だ。


「おい、蒼太そうた、休まず3キロ10分を3セットだ」

「はい。わかりました」

「できなかったら、分かるよな」

「はい……」


 こんなことを言ってくる。それに俺は陸上部でもない。もちろん俺は出来ずに何発も殴られた。

 そんな生活を送ってきた時だった。スマホで一つのサイトを見つけた。


【誰でも簡単にできる! 呪いのやり方。ちょっとした嫌がらせから、人を殺すまでなんでもできるよ!】


「何だこれ?」


 見つけた時は信じるはずもなくスルーしてそのまま終わった。

 しかしまたある時だった。俺は相変わらずの理不尽に振り回されていた。


「今日は朝の4時集合だと言っただろうが!! お前遅れたよな」

「はい……」

「はいじゃねぇんだよ」


そんなことを言われ、今までにないくらい殴られた。


「理不尽だ。あいつなんて俺より遅かったくせに」


 俺は家で呟いていた。


「そうだ! 前に呪いのサイトを見たな。あれを使ってみよう」


 そう思い俺はあのサイトを開いた。

 次の日からあいつにした呪いは効果があった。【病気になって学校を休め】と言う呪いを俺はかけたのだ。するとあいつは一週間学校を休んだ。


(すごい! これは本物だ。なら次はこれだな)


 そう思い俺は早くも【呪いをかけた相手は死ぬ】と言う呪いに手を出したのだ。すると次の日


「佐藤先生が亡くなりました」


 と言うことを朝に言われた。佐藤とは俺の部活の顧問だ。俺はこの時最強の武器を手に入れたと思った。

 それからというもの狂ったように【人を殺す】呪いをかけていた。

 いじられた時

 怒られた時

 などちょっとしたことで人を殺すようになっていた。

 遂には自分の親友や親まで殺していた。流石にやりすぎたと思っていた。しかし自分では止めることが出来ないところまで来ていた。もういっそ自分が死ぬことも考えていた。しかしそんな時に声をかけてくれた人がいた。


「大丈夫? 元気だしてよね」


 クラスの白石香奈という女子だった。

 俺の周りで人が死んでいると噂になり俺に近づく人などいなかった時にだ。俺は救われた。

 それから数年後、あの話しかけられた時以来俺は呪いを使っていない。それどころか白石香奈と付き合うこともできた。こんな俺でも普通に生活することができるようになっていた。


「蒼太くん、早く行こー」

「ああ」


 こんな風にデートもしている。順風満帆の生活を送っていた。

 そんな時にもうすぐ香奈の誕生日という日が迫っていた。俺はプレゼントを探しにショッピングモールに来た。

 その時に俺は見てしまった。香奈がイケメンの男と楽しそうに買い物しているところを。

 俺は家に帰ってを開いた。俺は迷わず【人を殺す】呪いをかけた。

 次の日香奈は死んだ。その日が香奈の誕生日だった。

 俺は今までで一番衰えていた。今まで信じていた人に裏切られ、挙げ句の果てには自分で殺してしまったからだ。

 そんな時家に1人の男性が現れた。


「すいませーん。蒼太さんでいいですか」


あの時に香奈と歩いていた男だった。


「俺はお姉ちゃん……いや白石香奈の弟です。あなたに姉のお葬式に来て欲しくて来ました」


と言われた。


「おとう……と」

「はいそうです」


俺に今までにあり得ないほどの罪悪感が迫ってきた。香奈を、今まで助けてくれたあの香奈を俺は勘違いで殺してしまっていたのだ。

 そこから放心状態になりながら弟の話を聞いた。その時にあるものを渡された。


「これをどうぞ。姉は誕生日にあなたにプロポーズをするつもりでいたんです。高校の頃から少しずつ貯めていたお金で買った指輪です」

「そうなん……ですね」


 俺はここまで愛されていたのだ。それをほんの少しの勘違いで殺すなんて。

 そこから話が終わりお葬式には出ると言ったら弟は帰っていった。最後に


「あなたと家族になりたかったです」


 そう呟いて。

 俺は泣いた。あり得ないほどのの涙を流した。


「香奈、香奈、香奈。ごめん、ごめん、ごめん。俺はなんてことを」


 一日中泣いていた。その時だった。俺の体が悲鳴を上げた


「痛い、身体中が痛い。だ、誰か助けてくれ」


 一つ一つの臓器が本気で握りしめられるような感覚だった。

 そんな最中今まで殺した人の幻覚が見えた。

 顧問、親、親友、そして香奈全員が俺を恨んでいるように見えた。当たり前だよな。俺はそれくらいのことをした。

 全員に殺されているような幻覚を見ている時今までの思い出が走馬灯のように蘇ってきた。しかし香奈との思い出ばかりだった。


「蒼太くん楽しいね」

「ふふ、蒼太くんって面白いね」


 最後に香奈に心臓を握りしめられながらこんな声が聞こえた。


「蒼太くん。私はあなたのことを愛していたのに何で、何で、何でなの。絶対に許さないから」


 ごめんよ。香奈。俺はその言葉を出すことが出来ずに静かに目を閉じた。


あのサイトにはこんなことが書いてあった。


【自分のことを異性としての感情を持っている人に呪いをかけると自分に今までかけた呪いが返ってくるよ!】


と。

 

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