return

あゆう

memory ~return to New DAYS~

 私が彼と再び一緒にいれるようになってから、どのくらいたったかな?

 この世界では時間の概念が曖昧みたいで、自身が望まない限りは、姿形が変わらない。

 なのに、食べ物は時間が経つと冷める。けど腐ったりすることがない。

 ここにいる人達にとって、とても都合の良い贅沢すぎる優しい世界。

 けど、私達は元の世界での暮らしのせいか、その優しさに甘えるのが苦手で街の外れに住んでいた。

 かと言って、他の人達と交流がないわけじゃない。私達を引き合わせてくれた派手男。

 以前、名前を聞いたけど「名前なんて意味ないからさぁ!」といって教えてくれなかった。他の人達からはペラ男とかチャラ男って呼ばれてるのを聞いたことがある。


 その時コンコンと扉を叩く音がした。


「はい、どちら様?」


「僕だよ」


「僕?」


「ひどいなぁ。もう忘れちゃったのかな?せっかく君の願いを叶えてあげたのに」


 ……!?あの時の死神!?


「思い出したみたいだね?入らせて貰うよ」


 すると何もしていないのに扉が開いていく。


「どうしたんだい?お客さん?」


 リビングの奥から彼がでてきた。


「やぁ、君も久しぶりだね。二人とも会えたようで良かったよ」


「あなたは……。お久しぶりです」


「おや?君は礼儀正しいね」


「あのときはお世話になりましたから」


 あぁ、そういえば彼も会っていたんだったわ。


「そっかそっか」


「それで今日はなんの用で?」


「今日は君達にいい話を持ってきたんだ」


「「いい話?」」


「あぁ。いわゆる異世界転生ってやつだね。君達二人はこの世界の優しすぎる優しさに染まらなかった。資格は十分だからね」


 資格?なんの事?


「ちなみに資格とかそういうのこっちの事情だから教えられないんだ。ごめんね」


 っ!心を!?


「ちなみに転生ってのは、今までとは違う別の世界に生まれ変わる事だよ。強い能力付与とか、生まれる環境優遇とかのボーナス付きでね」


 あ、心が読めるとかじゃないのね。


「それは、二人一緒にですか?」


 と、彼が聞く。そうなのだ。そこが一番重要なのよ。


「さあ?そこは完全にランダムだからね。けど、もしかしたら同じ世界にはいけるかもね。だから運が良ければ会えるかもね?記憶はそのままだしね。どうする?ちなみにこの世界に居続けてもいいけど、あのチャラチャラした男みたいになるかもよ?」


「どういうことですか?」


「君達は以前彼に名前を聞いても教えてくれなかっただろう?あれは教えなかったんじゃない。教えれなかったんだ。ここに長くいると名前を失うからね。まずは名前を、感情、記憶。最後には存在だ。まぁ、ゆっくり考えてよ。次の花火が上がる日に聞きにくるから」


 そういって死神は部屋から出ていった。ちゃんとドアから。


「さて、どうしようか?」


 彼が腕を組んで上を見上げながら言った。悩んで考え込んでいるときのポーズだ。


「私は消えるのならこのままあなたと消えてしまいたい……」


「そっか。でも僕は僕たちの絆を信じてみたい」


「ならどうするの?」


「そうだね。なら、どうせ消えてしまうのなら、そのリボンを半分もらっていいかな?それを持っていたいんだ」


「えぇ、それはいいけど」


「これさえあれば僕達はきっとまた会えるような気がするんだ」



 そして約束の日。死神が我が家にやって来た。


「やぁ、答えを聞きにきたよ。それでどうするのかな?」


 私達は答えた。


「「お願いします」」


「おや、まさかの答えだね」


「ええ、きっと彼女とならまた会えるはずですから」


「私も同じ気持ちです」


「そうか。なら何も言わないよ」


 そう言って死神が手をかざすと、うちの玄関が黒い扉に変わった。


「さぁ、これをくぐれば転生完了さ」


 なんか雑……


「さぁ行こうか。転生しても愛しているよ」


「私も愛してるわ!」


 そうして黒い扉をくぐって私が転生した先は──


(嘘でしょ!?)


 どうやら時代は違うけど前と同じ世界に来ていた。


(まさかUターンするなんてね。まぁ、いいわ。必ず彼を見つけて見せるんだから!……ってそれにはまずは歩けるようにならなきゃね)


 転生した私はまだ一歳だった。

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