第28話 交換条件

「伊月はアナウンス部門、りんは朗読部門、か。じゃあ美香ちゃんと当たるのはりんだね」


 私は目の前にいる人に頭を下げる。


「あなたが味方になってくれるととても心強い」


「味方って。お前と俺は情報を交換するだけだ。味方になったわけじゃない」


「それでも。ありがとう。——加藤」


 私はあの後加藤に電話して伊月とりんについて知りたいと申し出た。


 伊月と仲良さそうだったから無理かなと思ったんだけど私の前いた学校の名前を出したら了承してくれた。


 ただし、交換条件付きで。


 ある人についての情報を得てくること。


「それよりも、ちゃんと葉菜はなについての情報集めて来いよ」


「わかってるって。——でも、その子って誰なの?」


「それは聞かない約束のはずだ。俺もお前の事情については詳しく聞かない」


「ごめん。そうだった。——とりあえずありがとう。また教えて。今日は美香ちゃんとこ行ってくるから」


 加藤は手を上げて去っていった。


 私も荷物を持ち上げると学校を飛び出した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る