大会

第27話 大会に向けて

「伊月と、りんも大会に出るんだ……」


 家に帰って壁を背にしゃがみこむ。


「確かにあの二人、きれいな声してるし滑舌もいい」


 でも、と首を振る。


「美香ちゃんに絶対に勝ってもらいたい。美香ちゃんだけじゃない、まだやめてないほかの部員にも」


 前の学校の親友の笑顔を思い浮かべて私は一人、ぎゅっと手を握る。


「美香ちゃんが楽しいと感じているものを壊したくない」


 美香ちゃんは全国いかないと消されそうって言ってたけど、全国いくだけじゃきっとだめ、だよね。

 全国でちゃんと結果を残さないと。

 いつ大人の都合で放送部が消されるかわからない。


「そのために……私ができることって、なに」


 私はこの学校の生徒としてでしか大会に出ることができない。


 じゃあ。

 やれることは自ずと見えてくる。


「美香ちゃんたちの練習に付き合うこと。そして——」


 私は立ち上がった。



「伊月とりんの弱点を見つけること」


 私はポケットからスマホを取り出し、ある人に電話をかけ始めた。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る