第8話 伊月の想い(3)

「ちょっと、な、何を言っているの?」


「何って。そのままの意味だ」


 いやいやいや。


「瑠香がそんなこと……」


「瑠香は飽きっぽい奴だし、帰ってきて幼馴染のことを気にするとは思えない」


「でも……」


 伊月くんは「まだ否定するのか」とつぶやく。


 そして次の瞬間私はふわっと抱きしめられた。


「ちょ、伊月くん!?」


「俺は面倒ごとにはかかわりたくない」


 私は伊月の大きな肩に顔をうずめる。


「ただずっとりんのそばにいたい」


「私も」


 伊月が私の頭をやさしくなでる。


「りんには俺のことだけ見ててほしい」


「うん」


 ほかのことは何も考えられなくなった。


 伊月のぬくもりにただ体を預けていたかった。

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