春休み対抗戦 その2

 僕達『狼達の午後』 はリョウさんに先陣を切ってもらう。 対する『ノースノルド』

の方は麻彩さんが出るようだ。


「よろしくね~」 麻彩さんは笑顔で挨拶すると「こちらこそ」 リョウさんも挨拶を返して筐体に座り、協会の使者アデルライトを選択、

麻彩さんは美しき獣のアリアを選んだ。


「へぇ、アリアを使うのか」


 美しき獣のアリアは、人の状態と獣化した時の操作が全然違う難しいキャラなので、どんな風に使うんだろう楽しみだな。


いよいよ始まる第1試合


 リョウさんのアデルライトが《銀の散弾銃》で牽制すると、麻彩さんはその攻撃をガード

 リョウさんは、すかさず距離を詰めて多段技の《ブランエクレール》を織り交ぜた接近戦を仕掛ける。


 画面端に追い詰めて、上段下段と流れるような動きで攻めて、多少の反撃はあったものの、まずは1本目を難なく先取


 さすがだな。 でもリョウさんの攻撃ってパターンが単調だから、読まれないように気を付けないと。



2ラウンド


 リョウさんは、1ラウンドと同じように攻めに行くが、僕が思った通りで麻彩さんに動きを読まれて《クリムゾンリバース》で的確に攻撃を返されてしまう。


「リョウさん、戦い方変えて」 とアドバイスしたものの、反撃がプレッシャーとなって攻めあぐねている。


 恐る恐ると隙のない攻撃を出しても、上手く連続攻撃に繋がらなく、結局タイムアップで逃げられてしまい、2ラウンド目は麻彩さんが

勝利した。

 

 なるほど消極的な戦い方だけど、これはこれで目を見張るものがあるな。


最終ラウンド


 麻彩さんの反撃技を警戒しながら距離を取り、拳銃でHPゲージを削る戦法を取るリョウさん


 それにしても麻彩さん、ゲージが貯まっているのに何で変身しないのかな?

 

 そんな感じで、リョウさんは一定の距離で

射撃、麻彩さんはガードしたりジャンプしながら徐々に近いてくる。


 距離を離す為に、ノックバックを狙っての《銀の散弾銃》を射った瞬間、麻彩さんはそのタイミングを見計らい《獣の咆哮》でダメージを与えて変身した。


「そうか! これを狙っていたのか」


 変身する瞬間、無敵になるので麻彩さんの

アリアは《銀の散弾銃》のダメージを受けず、アデルライトをのけ反らせた。

 

「オラァ! チンタラやってんじゃねぇ」 


 大声で叫び、怒涛のラッシュを仕掛ける。

先程の動きとはあまりにも違うもんだから、

リョウさんは対応できなく防戦一方


「オラオラオラ!!どうしたどうした!!」


 ゲームのキャラが変身したからって、本人も変身しちゃうわけ?


 リョウさんが反撃しても絶妙に避けてから、荒々しく攻撃を重ねてくる。


 先程のおっとりとした麻彩さんとは思えないくらい人が変わり、荒々しい言葉使いと激しい攻撃に押しきられてしまい、逆転敗けを喫してしまった。


「ハッ! どうだ見たか」 


 麻彩さんは筐体から立ち上がるとリョウさんを見下ろして、親指を下に向けて煽る。


「麻彩さん、止めて下さい。

また性格が変わってますよ」


「えへへ、ごめんね。 ゲームすると少し性格変わっちゃうんだ」


 IZUMIさんに注意されて、元の麻彩さんに戻ったけど…………あれは少しってレベルじゃないよ。


「ゴメン、負けちゃったよ」 


「いや、あの人メチャクチャでしたね。

でも大丈夫ですよ。 次、雨竜君が勝ってくれますって」



中堅戦


 IZUMIさんは黒い協会の主 ノワールを選び、雨竜君は異端狩りのフランツを選択


 試合開始早々に果敢に攻める雨竜君、IZUMIさんはその動きに対し一定の距離を取り遠距離攻撃の《邪教の裁き》を的確に当ててくる。


「これに勝てば、私達の勝利が決まる。

KAZUYAが喜んでくれる」


 IZUMIさんのKAZUYAに対する重い想いは、置いといて、彼女もなかなかのやり手だな。 

もしかしたら、雨竜君でも負けてしまうかもしれない。


 でもこの動き、どこかで見たことがあるな?


 雨竜君が闇雲に追っ掛けるが、IZUMIさんはそれをヒラヒラかわして、丁寧に攻撃を当てて翻弄する。


 そうだ! 絵里だ。 絵里の動き似てるんだ。


 絵里は追い詰められないよう常に、後ろを

空けて戦うのが特徴で、下手にラッシュを仕掛けても上手く避ける。


 それなら地道に距離を詰め、後ろにスペースが空かないようにすればいい。

 

「雨竜君! IZUMIさんを闇雲に追っかけないで」 


「えっ?」

 

「じっくり前に進んで、後ろに逃げられなくなるまで攻撃しないで」


 分かったと言って、雨竜君はIZUMIさんに

近くと彼女はその分、後ろに下がる。


「そう、いいよ。

あとは左右入れ替わらないよう、隙の無い攻撃を当てて」


 IZUMIさんは僕のアドバイスに反応して、

雨竜君を飛び越えて逃げようとしたが、雨竜君はそれを見逃さないで、垂直ジャンプ攻撃で叩き落とした。


 IZUMIさんの動きが僕の想定内なのと、雨竜君が指示を聞いてくれたので、1ラウンド目は取られたものの勝利することができた。


「雨竜君、さすがだね」


「いや、間宮君がアドバイスしてくれたから、勝てただけだよ」




「KAZUYA……ごめんなさい」


 IZUMIさんはKAZUYAに謝ると、KAZUYAは

彼女を無言で抱き締めてからマントで包み、

2人は見つめている。


 そんな2人の熱く甘い世界を見せつけられて、リョウさんは口に両手を当てて驚き、雨竜君は呆れて「よくやるよ」って呟いた。


 うーん。 それにしても、この2人って付き合ってるのかな?


「なかなかやるではないか。

いよいよ次は、私と天狗の魂をかけた命の削り合いだが……」


 KAZUYAは天狗さんを探すけど、肝心の天狗さんの姿が見当たらない。

あの人、まだトイレにいるのか?


「少し待ってて下さい。 

様子見てきます」 


 僕は急いでトイレに向かった。

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