ゲーム天狗への挑戦状 その3

 一週間後の対抗戦に向けて、ゲームセンター『狼達の午後』 で練習を始めた。


 今回、僕の出番は無いから参加者3人の練習相手になり、特徴を分析しながらアドバイスをしてみると、これはこれでなかなか面白い。


 色々と分析しているうちに、敵の情報も知りたくなってネットで調べると、ゲームセンター『ノースノルド』 の特集動画でKAZUYAが『バウンティハント』 で対戦している動画を見つけた。


「へぇ、蒼の処刑人を使うんだ」


 使用キャラと同じコスプレをしてゲームをしていて、動画を観た印象だと、かなり手強そうだ。


 でも、この人も天狗さんも何で仮面を着けてゲームをやるんだろ? 


 そんな疑問はさて置いて、みんなの参考になればと思い、蒼の処刑人を使用して出来るだけKAZUYAの動きを真似てみた。

 

「ほう、あやつの動きに似ているな」


「ええ、KAZUYAの動画配信を観て、似せてみました」


「なるほど、これなら誰がKAZUYAと当たっても対応出来るね」


 そんな会話をしていると、雨竜君だけが腑に落ちない顔をしている。


「間宮君。

コイツ知っているよ」


「そうなんだ、だったら彼の事教えてよ。 

少しでも情報があれば有利になるからさ」


「いや、そうもいかないと思うよ。 

 コイツ荒谷って奴で、俺や三笠と同じ大学に通っている奴なんだけど、コスプレしてゲームするのが趣味なんだ」


「動画でもコスプレしてるもんね」


「それでコイツの特技がさ、着ている衣装によってゲームのプレイスタイルを変えるんだよ」


「えっ、なにそれ?」


「今まで観た動画だと、同じ衣装でしか対戦してないから罠かもしれないよ」


 それが本当なら随分器用で、なかなかの策士だな。


「だから、動画の荒谷の動きを想定して練習しても、あまり意味が無いかも」


「そっかぁ、他2人の情報も無いしなぁ」


 うーん、そうなったら僕が出来る事って、

なんだろう? 

色々考えてみて、1つのアイデアが閃いた。


「雨竜君は『狼達の午後』 の常連で、苦手な相手は誰?」


「雷神かな? アイツのラッシュはどうも苦手でね」


 なるほど、あの激しい攻は目を見張るものがあるよね。 でも動きは単調だよな。


「雷堂の動きを真似てみるから、試してみてもいいかい?」


「えっ、そんなこと出来るの?」


「試しにやってみるよ」


 筐体の椅子に座ると目を閉じて、雷堂の動きを思い出してみる。


 そして、1ラウンド開始


 ダッシュで近くと手数の多い攻撃で端に追い詰めて、上下に攻撃を振ってHPゲージを削っていく。

 

 そして、相手が逃げようとするタイミングを計り、垂直ジャンプをして打点の高い攻撃を当ててから追い込む。


 パターンでいえば、このくらいだけど雨竜君に再現してみると、よっぽど苦手なのか簡単に勝てた。


「間宮君、凄いよ!

荒谷の動きもそうだけど、何でそんなこと出来るの?」

 

「天狗さんや雪野さんに全然勝てないから、

どうやったら、この人達に勝てるのかなって、考えて人の真似を試してみたら、いつの間にかね」


「へぇ、凄いね」


「前に雷堂から、天狗さんのコピーみたいだって言われたんだ。

 その時はムカついたけど、人に影響を受けるのって別に悪いことじゃないよね。

 それから、人の真似を取り入れるようにしたんだ」


「いや、それは凄い取り柄だよ」


 リョウさんも感心してくれている。


「間宮クン、ボクは雪乃さんが苦手なんだけど、真似できるかい?」


 僕自身、雪乃さんには勝てないから真似をしても、再現が難しく当然の事ながら当人より劣ってしまう。


 それでも「参考になるよ」 と言ってくれたので、僕としてもお役に立てたのなら良かったと思う。

 

 僕達は試行錯誤をして、試合の日に備えた。

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