紅美ちゃんと絵里の関係

 本日の『ゲーム天狗放送室!』の配信が

終わり、天狗さん、紅美ちゃんと他愛もない話で盛り上がっていた。


「天狗さんの物真似って、基本似てないですよね」


「そうか?我は自信があるのだが、紅美はどう思う?」


「天狗ちゃん物真似はねーー。 おもしろい」


 ハハハハハ!


 そんな会話で笑っていると、僕のスマホから

メール着信音が鳴った。


「すいません、メールチェックしますね」


 誰からだろう? とスマホを覗いてみると絵里からのメールだ。


 なになに?


 この度 私こと、エリザベートは自身の

写真集を販売することになりましたの


 ナイトには私の魅力を知って頂きたいので、

是非お買い求め下さい。 といった内容



 自分自身で私の魅力って、言っちゃうんだ。

……自信家だなぁ。


特に欲しいわけではないけど、一応付き合いもあるから買ってあげるか。


 だけど、自分で写真集を作って販売するって、よくやるよ。 

その行動力には感心するけどさ


 でも、絵里が自分の写真を製本している姿を想像すると、なんか笑っちゃう。


 天狗さんは、そんな僕が気になったようで

「一騎、どうして笑ってる」と聞くので


「絵里が写真集を作ったから、買って欲しいって話でした」


 そう答えると、それを聞いた紅美ちゃんが

横目で僕をジロッと睨み 

「間宮くん、それ買うの?」と訪ねる。


「まあ、付き合いで買おうと思うよ」


 正直に答えると紅美ちゃんは、スクッ と立ち上がると不機嫌を露にして

「紅美、もう寝るね」と部屋から出て行った。


「あー、しまった!」

 紅美ちゃんと絵里が仲が良くないの、すっかり忘れていたよ。

 自分の迂闊さに我ながら呆れてしまい、頭を抱えてしまう。


 けど紅美ちゃん、何で絵里を嫌っているのかな?

 天狗さんなら、何か知ってるかもしれない、

駄目もとで2人の間に何があったのか、聞いてみるか。


「天狗さん、前から気になっていたんですけど、紅美ちゃんと絵里って仲が悪いんですか?」


「まあ、見ての通りだ。

紅美が一方的に嫌っておるな」


 やっぱり、嫌悪してるの隠そうとすらしないもんね。


「2人の間に何があったんですか?」


「人の事情なので話づらいのだが………

まあ、お主は知ってもいいかもしれんな」


「お願いします。是非、聞かせてください」


「分かった では話そう」


 天狗さんは一息つくと、紅美ちゃんが絵里を嫌悪する経緯を語ってくれた。


「エリザベートは10年以上前、このアパートを住んでいたのだ。

 紅美とは同い年なのと、互いに母子家庭と

いうのもあり、2人は仲良が良かった。」


 2人は何処へ行くのも一緒、お互いにとって掛け替えのない存在であったようだ。


「今から遡ること2年前、紅美は初恋をする。

 相手は同じクラスの人気者の男子で、紅美はエリザベートに好きな人がいると相談すると、彼女も好きな人がいると言う」


 話し合ってみると、お互いに同じ男子生徒が

好きになっていたとか

 でも意外だな、紅美ちゃんの初恋は天狗さんだと思ってたよ。


「紅美もエリザベートも、同じ男子が好きなので2人は悩んだ。 悩んで話し合った。

 そして2人が出した答えは、お互いの友情を守る為に、彼に告白するのは止めよう。 

この恋は諦めようと約束した」


 紅美ちゃんと絵里の初恋の相手か………

どんな人か気になるよ。


「ところが、その男子は紅美に気があったようで、付き合って欲しいと告白してきたのだ」


 初恋の人からの告白……

紅美ちゃん、嬉しかったろうね。


「紅美は恋と友情の狭間で悩んだ!

 悩んだ末に出した答えは、エリザベートとの

友情を守り恋を諦め、申し出を断ったのだ」


「約束を守り筋を通す。

さすが紅美ちゃんですね」


「だがその男子、紅美が駄目ならエリザベートへ鞍替えして、交際を申し出るとエリザベートはその告白を受けたのだ」


 振られて、すぐに別の女の子に移り変える

なんて、いい加減なヤツだ!

絵里は絵里で、約束破っちゃうし


「それでも、紅美は自分が我慢をすればいいと、エリザベートを許したのだ」


 紅美ちゃんにとって絵里との友情は、何より大切だったのだろう。


「だが、それだけでは終わらん。

 その男子、紅美に振られてプライドが傷ついたようで、逆恨みをして紅美がエリザベートの事を陰で悪く言っていると、彼女に吹き込んだのだ」


「なんて卑劣なヤツなんだ!」


 ある日を境に、絵里が紅美ちゃんから距離を

置くようになった。


 最初は絵里が約束を破った事が気まずくて、避けてるのかと思って、気にしないでいいよ。と声を掛けると、絵里は紅美ちゃんを嫌がっている。


 理由を尋ねると、紅美ちゃんが陰で有ること無いことを言うから傷ついたと、返ってきた。

 

 紅美ちゃんは、そんな事言った覚えが無いので、自分は言ってないと伝えても、絵里は

聞く耳を持ってくれない。


「しかも、エリザベートは彼氏のいいなりで

クラスメイトに、紅美は陰口で人を貶めるから、関わらない方がいいよ。 と言いふらしたのだ。」


 その男子は、クラスの女子達から人気が

あったから彼女達は彼の言うがままに、その事を信じた。


 それから紅美は、クラスの女子達から無視

されたり嫌がらせを受けるようになり、学校に行かなくなり、中学3年の時は一回も登校しなかった。


 その時の紅美ちゃんは、人間不信になっていたという。


 話を聞いて、紅美ちゃんが絵里を嫌うのも

無理はない。


「その男子は、今も絵里と付き合っているんですか?」


「紅美が登校しなくなると話が大きくなり、

後に嘘だという事が分かってから、別れたようだ」


 そうか、2人の間にはそんなことがあったのか、でもどうやって今の紅美ちゃんに立ち戻れたんだろう?


 やっぱり、天狗さんが慰めたのかな?

気になるよ。

 

「紅美ちゃん、人間不信だったんですよね。

どうやって今の明るい紅美ちゃんに戻ったんですか?」


「パグぞうだ」


えっ?


「我がこのアパートに引っ越しをしてきた時、紅美が登校拒否になって半年たった頃で、その時の紅美は誰とも話をしない。

1日の大半を公園でパグぞうと過ごしていた」


「今の紅美ちゃんからは、考えられないですね」


「初めて紅美と会った時、我を見るなり逃げるように部屋へ入ろうとしたら、パグぞうが尻尾を振りながら我の元に来たのだ」


「パグぞうって、天狗さんになついてますよね」


「その後も、我が部屋にいれば部屋に入れろと扉の前で吠え、出掛けようとすれば後を付いてくる。

 その度に紅美は連れ戻しに来るが、それでもパグぞうは我の所へ来るの繰り返し、そうして紅美も我の部屋で過ごすようになったのだ」


 うーん、本当にそれだけ?

そんなんで心を開いて、あんなに天狗さんを

好きになるのかなぁ?


 天狗さんの歳は分からないけど、中学生の頃の紅美ちゃんと話が合うとは思えない。


 それが不思議で、僕には話せない何かがあるのだろうか?


「絵里は紅美ちゃんの事どう思っているんですか?」


「我に漏らしていたのは、紅美には酷いことをした。 

出来るなら、一度話し合って仲直りしたい。 と言っていた」


「紅美ちゃん、ああ見えて頑固ですからね」


「そうだな、『ホーリーブラッド』件にしても

紅美は呆れている。

 もう許してやればと思うが、エリザベートは人の心をかき乱すところがあるからな」


「でも天狗さんって、絵里と会ったらよく話をしますよね。

恋愛対象として見たことはないんですか?」


「無い、我とは歳が違う」


「そうですよね。

天狗さんの好きな女性のタイプは、リョウさんですもんね」


 いたずら心で天狗さんをからかってみると、天狗面の奥から僕を睨んでいるのが分かる。


「……紅美が言っていたのか?」


「見てたら分かりますよ。

では、そろそろ帰りますね」


「一騎よ、今の話でエリザベートを嫌わないでやってくれ、感心できんとこはあるが……」


「分かりました」


「あと、エリザベートの色香に惑わされるな」


「心配いりませんよ。

僕は紅美ちゃん一筋なんで」


「そうか『狼達の午後』でエリザベートと見つめ合って接吻しそうになっていただろ」


「紅美ちゃんが言ってたんですか?」


 余計なことを言う天狗さんを凝視する。

なんか仕返しされちゃったな。


 フフフと僕が笑うと、天狗さんハハハハハ!と豪快に笑った。



後日、絵里の写真集が届いた。


『月と星の踊り子 エリザベート写真集』


「ほー」自費出版にしては、なかなか豪華な

作りでページを開いてみると、色々あざといが見入ってしまう。


 いつものゴスロリ服に水着やバレリーナ等と様々で、これは絵里のファンなら満足するね。


 そして一番気になったページは、鏡台の前に黒の下着姿でゴスロリ服を抱えながら振り向いている写真、コレはたまらない!


 綺麗な背中のラインに、小ぶりなお尻を包む

黒い下着がなんとも妖艶でHだね。


 着替え中に男の人が入ってきて、驚いている

ようなシチュエーションもいい。


 一通り目を通して最後のページを開くと

スタジオとカメラマンの名前が書いてあるので、流して見ていると



カメラマン  三笠隆幸(ミカエル)


 カメラマンって…………三笠君

絵里に言いように使われてるな。

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