対決《前編》

今日は、新作の格闘ゲーム

『バウンティハント 闇狩人』を遊びに

天狗さんとゲームセンター『狼達の午後』に

やって来たんだ。


「今日こそ、勝ちますよ。」

「我も、簡単には勝ちは譲らんぞ」

そんな会話をしながら

『バウンティハント 闇狩人』の筐体に着くと

「あら、ナイトじゃない」

絵里が、僕に声をかけてきたので

「やあ、絵里も来てたんだ。」と答えると


「何?ナイトだと」

阿久津が、筐体の影からヒョッコリ顔を出す。

僕らに背中を向けている対戦相手は雷堂で、

彼は振り向き、何故か僕らを睨み付けている。


げっ!阿久津に雷堂もいるのか

正直、この2人苦手なんだよな。


「アグニ、彼がゲーム天狗よ。」

絵里が、ゲームを終えた阿久津に天狗さんを

紹介すると

「俺は、アグニだ。」

「我は、ゲーム天狗だ。

ほう、お主インドの炎の神を名乗るか」

「貴様が、ナイトの師匠のゲーム天狗か」

「ウム」


なんて勝手な事言ってるけど

僕は、天狗さんの弟子じゃないよ。


阿久津は、自己紹介を済ませると

「今日は、雷神とナイトを倒してから

天狗、貴様に挑ませてもらう!」

初対面にも関わらず、天狗さんに対戦を申し込む。


「ほう、我に挑むと言うか

だが、その前に貴様にナイトを倒せるかな?」

阿久津に流されて天狗さん僕の事、ナイトって言っちゃうし…。


「ところでナイト!

貴様は、天狗を倒すつもりはないのか?

雷神は、どうだ?」


 なんでだよ。 阿久津は、ヒートアップして訳の分からない事を言い出す。


「ああ、面白ぇな!

俺らの中で1番強いやつを決めて天狗に挑む、面白いじゃねぇか!」


 雷堂も乗り気で打倒天狗を打ち出したので、

こうなっては収集つかない。

 この事態を収める為にも天狗さんに、一言

言ってもらおうとしたら


「若者達よ!

己の力で勝ち上がり、このゲーム天狗に挑んでみせよ!」 と話に乗ってきた。


「貴方達の勝者が天狗に挑むのね。

素敵だわ」 なんて言うけど。 

絵里、無責任に煽らないでよ。


あ~あ、面倒な事になったぞ。

結局、彼らのペースに巻き込まれて試合をする羽目になった。


「天狗、

この試合、動画配信するけど宜しくって?」

絵里の提案に天狗さんは、

「うむ、我が『ゲーム天狗放送室!』でも

この試合を取り上げたいので、後で動画を

送ってくれい」

「分かったわ」と天狗さんに許可をもらって

スマホで試合を撮影


第一試合 雷堂と阿久津

第二試合 僕と阿久津

第三試合 僕と雷堂


対戦順も決まり、勝ちが一番多い人が天狗さんと試合をする事になったけど…。


僕は、普段から天狗さんと対戦してるから、

わざわざ人前で試合しなくても、ねぇ。


「天狗、3人のうち誰が勝ち上がるかしら?」

「アグニの実力が、どれ程かは分からんが、

一騎と雷神は、ほぼ互角であろう。」

「アグニと雷神も、いい勝負よ。」


絵里も天狗さんも、いい気なもんで解説者

気取りだよ。


一回戦

雷神と阿久津の『夜の貴族』同士の対決

雷の雷神(雷堂)

炎のアグニ(阿久津)


「雷と炎の対決か!」

「そうね、雷神には、雷のように衝撃が走る

試合を期待しているわ。

アグニには、そうね

私の心を焦がし燃えさせて欲しいわ。」


使用キャラの選択

雷堂は闇狩人に追われる狼男 ヴォルフ

阿久津は炎の力を使う狩人 ヴィンセント

どちらも攻撃的なキャラだ。


そして試合開始

駆け引き無しでぶつかり合う2人


「オラァーーー!」

先にダメージを与えたのは、手数の多さと

スピードで勝るキャラを使う雷堂

 しゃがみ弱攻撃から《スラッシュクロー》で

繋ぎ優位に立つが、阿久津も負けじと反撃に

転じ、雷堂のヴォルフを《ライジングヒート》で打ち上げると、荒々しい追撃でダメージを

与える。


今のところは互角かな。


地上に叩きつけて、ダウン中の雷堂に阿久津が飛び込むと

「これで終わりだ!」

連続攻撃と投げで画面端に追いやって、雷堂を押している。


雷堂は、ダメージを受けているものの冷静に

ガード

「調子に乗るんじゃねぇ!」

お互いの攻撃が同時に当たって弾くと、雷堂はその隙に割り込んで反撃を開始


攻撃のタイミングをずらしながら、ガードの

テンポを狂わし、一気に畳み掛けテクニックで勝る雷堂が、一枚上手で勝利した。


さすがに強い

彼の試合はいつも名勝負だ。

そして阿久津は「また、勝てなかったか!」

と悔しがる。


次は僕と阿久津の試合


「ナイト、この前の借りを返させてもらう」

 阿久津はすでに、雷堂の負けから立ち直り、

僕の試合に向き合っている。


これが彼の強さなのだろう。


 違うゲームだけど前回の苦戦があるので、

油断せず、気を引き締めて戦おう。


僕は、闇の少女ミレイユを選択

このキャラはゴスロリ服を着て、どことなく

絵里に似ている。


「あらナイト

私に似てるから、このキャラを使うのかしら」

なんて言うけど…

違うよ、僕が使いやすいからだよ。


第二試合開始


「行くぞ!」

気合いを入れて攻めてくる阿久津

僕のキャラのミレイユは、ジャンプが高いので、空中戦を積極的に仕掛ける。


3回ほど、ジャンプからの攻撃を当てると彼は、飛ばなくなった。


よし、空中戦の不利を植え付けた。


「ウォーーー!」

阿久津はダッシュからの連続攻撃で追いかけて来るので、バックステップで避けてから

タイミングを合わせて投げ技の

《アルターオブデス》のコマンドを入力

相手を吸い込み大ダメージを与えた。


阿久津の動きに迷いが生じているので、

その隙を逃さず《シャドウサクリファイス》で、攻めて体力ゲージを削り、前回より苦戦しないで勝利することができた。


「さすがだナイト

俺が認めたライバルなだけはある!」


いや、そもそもライバルじゃないし

そのナイトってのも止めて

ま、言っても聞かないんだろうけど。



いよいよ3回戦

雷堂との初対決

「ナイト、テメェとは以前から戦ってみたいと

思ってたんだ!」


僕も彼には興味を持っていた。

 あの激しく攻めるプレイスタイルには憧れがあり、僕と彼が戦ったら、どんな試合が展開されて、どっちが勝つのかな?と考えていた。


「ナイト!

雷神に勝ったら私の手にキッスしても、

よろしくってよ。」


 それを聞いた雷堂が

「お前、勘違いするなよ。」


「僕が言ったんじゃないし、そんなことしないよ。」


試合開始

「オラァーーー!」

開幕早々にラッシュを仕掛ける雷堂

案の定と言うか想定通りだな。


彼の試合の流れは、連続攻撃で相手を追い詰めてから、固めて動けなくして倒すのが特徴

 ただ、攻め一辺倒しか無いのが彼の欠点で、相手に合わせた駆け引きがないから彼の動きは

読みやすい。


これじゃあ、天狗さんや風祭君、雪乃さんの

ような上位プレイヤーには勝てないよな。


少し間を開けながら後ろに下がって反撃

 常に距離を保って戦う。

画面端に追い詰められそうになる前に、空中戦でダメージを与えてから左右入れ替わる。


足が速いキャラなので、追い付かれる場面が

あってダメージを受けてしまう。


反撃に《アルターオブデス》を入力するけど、

バックステップで上手く避けられてしまう。


 投げ技に対しての鋭い警戒

空中戦と《アルターオブデス》に用心して

迂闊に近づかなくなった。

「やるな」


ただ、持ち味のラッシュが来なくなったのは、展開としてはやり易い。


体力ゲージは僕の方が残っている。

ここは慎重にと、様子を見ていると

「勝ったと思うんじゃねぇぞ!」


彼は意を決してラッシュで突っ込むと、

それと同時に後方にジャンプして、着地と同時に攻撃を当て動きを止める。


それでも果敢に攻めて体力ゲージを削りにくるが、残りに余裕があるので反撃はしないで、

守りに徹してタイムアップで勝利


「さすがねナイト

あの雷神とアグニに勝つなんて」

絵里は僕に感心している。


ふう、強い強かった。

 以前の僕なら負けてたかもしれない。

だが、僕が勝って雷堂と阿久津より強いと証明できた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る