夏休みだよ!店舗大会 二回戦 その1

準決勝 第一試合が始まる。


絵里ことエリザベートが率いる 『夜の貴族』と先程の僕と話をしていた三笠君達の

『ホーリーブラッド』の試合だ。

 

お互いの先鋒が呼び出されると


「テメーらが、負けたら俺達の前に二度と現れるんじゃねえぞ!」


「お前にそんな事言われる覚えはねぇ!」


雷堂と三笠君が激しく言い争っている。


絵里達と『ホーリーブラッド』の3人に

一体、何があるのだろう?


「2人ともケンカは止めて下さい。」


と司会に注意を受けると険悪な雰囲気の中、

試合が開始された。


『夜の貴族』は先程と同じ雷堂のアサシン

『ホーリーブラッド』は雨竜君のアマゾネス

お互い軽量級の素早いユニットを選択


開幕早々

「オラァーー!」と叫んで雷堂のアサシンは、

ダッシュで距離を詰めて接近戦を仕掛けるが

それに対して雨竜君のアマゾネスはジャンプで飛び込み、めくり攻撃を狙ってフレイルを打ち下ろすが、お互いの攻撃が外れる。


アマゾネスは弓を構えるが矢を放たず

アサシンは再びダッシュで近付きフェイントと見せかけ急に止まってからジャンプ攻撃を仕掛ける。


「バカめ、お見通しだよ!」


アサシンの動きを予測していたアマゾネスは

斜め上方に矢を放つと見事命中。

落下するアサシンにフレイルで追撃して

叩き込むが


「当たるかよ!」


着地後にローリングで後方に逃れて一定の距離を保つとスローイングダガーを投擲

それをフレイルで振り回し叩き落とす

アマゾネス


お互い攻め合う激しい闘いだ。

アサシンの二刀流のダガーよりアマゾネスの

フレイルの方がリーチも長く威力も高いので

優位に試合を運ぶ。


雷堂はそんなの関係無いと言わんばかりに

距離を詰めての打ち合いを挑む。

手数の多いアサシンのダガーの連撃で徐々に

追い上げHPゲージの残量が逆転した。


「後がねぇなーー、ウリエル!」


「クソッ」


なんだ?ウリエルって?


画面端に追い詰められたアマゾネスはラッシュ攻撃から逃れる為にジャンプで飛び越えようとするが


「へっ、逃がすかよ!」


動きを読んでいたアサシンも後方にジャンプ

すると空中で叩き落として連続攻撃を入れて

辛くも勝利

雷堂は負けた雨竜君に


「負け犬め!

二度と俺や姫の前に現れるなよ!」


中指を突き立て舌を出す。

あまりの態度の悪さを見かねた司会が


「雷堂さん、いい加減にしないと出禁にしますよ」


と 厳重な注意を受けると面白くなさそうに

舌打ちして2ラウンド目を迎える。


『ホーリーブラッド』の2人目は三笠君で

ソーサラーを使うようだ。

開幕早々にソーサラーは炎攻撃を振り撒くと

多少ダメージは受けたものの雷堂に勝利


次に『夜の貴族』の2人目は絵里が出てきた。

参加者や観客の皆にスカートを摘まんで一礼をすると会場中から歓声が響く

それに手を振って笑顔で答えている。


僕はそれを見て


「人気あるなぁ」


絵里の人気に感心していると


「そうだね。

絵里ちゃんって、男の人に好かれたいだけだからね。」


と呆れたように呟く

紅美ちゃんの横顔は、絵里に嫌悪の目を向けている。

女同士の嫉妬心なのかな?

それも違うような気がするけど…

僕は、紅美ちゃんには笑顔でいてほしいから

そんな顔をする彼女を見るのが切ない。


絵里と三笠君の試合が始まる。


三笠君のソーサラーは牽制で

《ファイアーボール》を撃つと

絵里のソーサレスは低空ジャンプでかわして、

「えい」と《雷の矢》を斜め下に放つ

それに対してソーサラーは

《ファイアーウォール》で相殺する。


「流石だよエリシアー!」


「もう、その名前で呼ばないで

ミカエル!」


何だそれ?

なんつう会話してるんだ。

それにエリシアって…

いくつ、違う名前あるんだよ。


魔法攻撃を打ち合いの遠距離戦が続く中

絵里も上手いが三笠君もテクニカルで

なかなか強い。


そんな繰り返しの攻防で削り合い

互いのHPゲージが、あと1回ダメージを

受ければ倒れるまでになると

ソーサレスが《サンダークラック》を詠唱して

雷を落とすと同時にソーサラーの

《ファイアーボール》も当たり相討ちと

なった。


「また…駄目だったのか。」


ガクッと、うなだれる三笠君

その彼の元に来て、絵里は彼の手を取ると


「強くなったねミカエル」


優しく微笑むと三笠君も絵里の手を握り返して


「次は、必ず君を取り戻すよ…エリシア」

とか言っちゃってるよ。


会場は盛り上がるけど

何だろう…この茶番劇


『夜の貴族』と『ホーリーブラッド』の3人目が呼び出されると天狗さんが僕に


「一騎よ、風神の動きをよく見ておくのだ」


風祭君を観察するように言ってきた。


彼はブラックナイトを選択

スタートスキルに絵里のソーサレスから雷を

エンチャントしてもらっている。

ブラックナイトは人気のあるユニットだけど

扱いが難しくて使いこなせる人が少ない。


ホーリーブラッドの山田君はナイトを使うようで、こちらは三笠君のソーサラーから炎の

エンチャントを付与してもらっている。


開始早々ナイトが攻めるとブラックナイトは

ギリギリで攻撃を避けながら後ろに下がり

相手の動きに合わせて3連撃を返す。


「上手い!」


深追いはせずに相手が飛び込むのを待つと

着地してから牽制

相手の反撃を誘いそれを反撃で返す。

天狗さんのように姑息では無いけど冷静で

雷堂ほど激しくはないが圧倒的に強い。


画面端に追い詰めてから《ダークネスゲート》

のような難しいコマンド技も的確に入力して

ミスが無く動きが綺麗で速い。


結局相手に何もさせないでノーダメージで勝利した。

凄い!

彼の強さに会場がシーンと静かになる中で

紅美ちゃんが僕に


「ねえねえ間宮くん、あの人も天狗ちゃん

みたいに相手の人のこと何日も観察してたのかなぁ?」


って、気まずくなるような事を聞いてくるので


「い、いや、そんな事ないと思うよ。」


そんな人、天狗さんしかいないよって言おうと思ったら、僕と紅美ちゃんの会話が聞こえていたようで風祭君は複雑そうな表情でこっちを見ている。


一応気を使って

「そんな人、天狗さんしかいないよ」と

なんだか取って付けたように言ってしまった。


天狗さんが僕に


「どうだ風神の動きは?」


と感想を聞いてきたので風祭君の動きは完璧で

僕の理想とするものであった。

彼の強さは僕の何歩も先に行ってると思うし、彼より自分が秀でたものを探せない。


「僕が見てきた中で一番上手ですね」


「勝てるか?」


「正直、僕では難しいと思います」


「そうか

風神に勝てなければ我には勝てんぞ」


そう言い残して立ち去って行った。


格好つけてるけど、トイレだろう多分

次、僕らの試合なんで早く帰ってきて下さいよ。


ただ、その時言った天狗さんの言葉にどんな

意味があるのか、今の僕には理解出来なかった。

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