島の怪物

「なんも思いつかねぇ」

師匠と約束をしてから早1週間。これと言った

変化がなかった。修行内容は以前と変わらず

素振りを何度繰り返し、壱から伍までの武器をあたかも身体の一部のようにする事と、

悪夢で助けてくれた女が使っていた、

と言う技の反復練習をしていた。

この技は悪夢で助けてくれた女の技を完璧に

再現した技だが威力はかなり落ちている。

その原因はあのが鍵を握っているのだろう。

このままでは師匠の約束に間に合わない。

俺はまだ壱から伍の武器を同時に使う方法も思いついていないし陸ノ武器についても

考えれていない。

どうすればと考えていた時、俺はあることに

気がついた。

「そういえば、この島について調べた事が

無かったな」

俺は4歳でこの島に流れ着いたが、飯や家のことは全部師匠がやってくれていて、俺は修行にしか取り組んで来なかった。

俺が今住んでいる場所は海の近くであり、

島の中心部とは程遠い場所である。

師匠もこの島を知る事が課題を乗り越える

近道だと言っていたし、俺の飯も底を尽きて

きた所だ。島で何か思いつく事もあるかもしれない。よし、島の探索をしよう。

という事でアベルは考えるのを一度やめて、

島の探索をする事にした。


俺は一度決めたら行動は早いタイプだ。

直ぐに準備をして島の中心部に向かった。

島の中心部には、熊や猪、狼など凶暴な動物が住んでいて俺を襲ってくるが、俺にとっては赤子をひねる潰すような物なので苦戦はしなかった。


島を探索する事、約1時間。開けた場所を発見した。そこには家が何軒か連なっており村になっていた。しかし村には人はおらず、

廃墟となっていた。俺は1番近くの家に入ろうと扉を開けるとそこには数カ所に分かれて血の跡が残っており、腐り切った人の死体も

あった。これは誰かに襲われたに違いない。

しかし、俺はこの島の中で師匠意外の人を

見た事がない。でもこれは動物がやったとは

思えない。何故なら死体には剣で斬った痕があったり、槍で刺した痕もあった。


「きゃぁぁーー‼︎」

「っっ!」

女の子の悲鳴。かなり近い。

俺は迷わず家を飛び出し、悲鳴が起きた場所へ走り出した。


「見えた!」

女の子の背中が見える。女の子の前には剣を

振りかぶっている男がいた。

くそ、間に合わない。このままでは斬られて

しまう。いやダメだ。俺が絶対助ける。

「当たれぇぇ!」

一か八かの勝負。俺は持っていた弐ノ武器・短剣を取り出して男に向かって投げる。

その短剣は男の目に向かって一直線に進み、

ピンポイントで男の目に刺さった。

男は痛みを感じていないのか、声も出さずに

目から短剣を引き抜いた。

痛みを感じていないのは想定外だが、時間を

稼ぐ事に俺は成功し、女の子の所まで

辿り着く事ができた。

「君、動けるか?動けるなら出来るだけ遠くへ逃げろ。この男は俺がどうにかする」

女の子は頷き、走って俺が走ってきた方法へ

向かった。これでひとまず安心だ。

俺は男の全身を見つめる。それはまるで

人というより怪物に近い存在だった。

剣を持った腕は禍々しい姿に変貌していた。

そして剣や身体には返り血が付いていた。

「お前か村の人を殺したのは!」

怪物は何も言わずこちらに向かって剣を振り下ろしてくる。それを俺は剣で受け止めた。

「くぅっ!」

鍔迫り合いの状態が続く。この怪物は俺が修行で鍛えた力と同等の力を持っている。

しかしそれは力だけであり、移動は遅い。

俺は距離を取り、背後から剣で斬りつけた。

しかしあり得ない速さで傷が再生し、斬りつけた事を無かったようにしてくる。

よく見ると怪物の目に俺は短剣を投げて、

刺さった筈だが傷は一切なかった。

この怪物の再生速度は凄まじく、このままでは俺の体力が無くなってしまう。

だから俺は最後の切り札を使う事にした。

「食いやがれぇ!水ノ神鳥壱ノ技・神水斬」

俺が放った水のやいばは怪物を貫き、そのまま 真っ二つに切断した。

怪物の再生速度は速かったが何故か技で与えた傷は再生しなかった。そしてそのまま怪物は灰になり俺の前から姿を消した。













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反逆者ノ旅人 黒猫」 @58900036

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