最高最大のわんにゃん風船祭り!!?

アほリ

最高最大のわんにゃん風船祭り!!?

 鬱蒼とした山奥の、かつてリゾート開発で切り崩してまっ平らに整地され、長年手付かずになった荒野。



 ぱぁーーーーーーーん!!


 ぱぁーーーーーーーん!!


 ぱぁーーーーーーーん!!


 ぱぁーーーーーーーん!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷしゅーーーーーーーーーっ!!ぶおーーーーっ!!しゅるしゅるしゅるしゅる!!


 わんわんわんわんわん!!


 ばうっばうっばうっばうっばうっ!!


 にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!


 きゃんきゃんきゃんきゃんきゃん!!


 うにゃーーーーっ!!


 ふーーーっ!!


 ぼうっ!!ぼうっ!!ぼうっ!!ぼうっ!!


 きゃいーーん!!


 にゃーん!にゃーん!



 ゴム風船が膨らむ音やパンクする音に混じって、犬と猫の鳴き声がこのひと気の無い荒野じゅうに轟いていた。




 ぱぁーーーーーーーん!!


 ぱぁーーーーーーーん!!


 ぱぁーーーーーーーん!!


 ぱぁーーーーーーーん!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷしゅーーーーーーーーーっ!!ぶおーーーーっ!!しゅるしゅるしゅるしゅる!!



 犬達が、猫達が、其々持ち寄った夥しい数の大きなゴム風船や小さなゴム風船。


 荒野はカラフルな風船の色に敷き詰められ、まるで1面の風船の花畑の中の風情を魅せていた。


 各々が口で膨らませ、


 割れるまで膨らませたり、


 吹き口を縛って、


 鼻や尻尾や身体で突いたり、


 牙や爪で割ったり、乗っかって割ったり、


 吹き口を離して飛ばしたり、


 ある者は担いできたヘリウムガスボンベで、風船にヘリウムガスで満たして紐で身体中に結んではしゃいだり、


 跳んだりはねたり、犬と猫仲睦まじく風船で思いっきり楽しんで遊んでいた。




 ・・・これが・・・


 ・・・最期の・・・


 ・・・晩餐ね・・・



 風船で遊ぶ犬も猫も、同じ思いでこの貴重な『バルーンパーティー』のひとときを過ごしていた。


 苦笑いしながら。

 最期の晩餐を。

 

 「もうすぐこの国でオリンピック。」


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 「オリンピックだから・・・」


 ぷしゅーーーーーーーーーっ!!


 「この国の浄化の為に」


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 「僕らは・・・」


 ぱんぱんぱぁーーーん!!


 「私達は・・・」


 ぱぁーーーーーーーん!!


 「人間達に・・・」


 ぷぅーっ!!ぷぷぷ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・


 「殺処分されるんだ・・・!!」


 ぷしゅーーーーーーーーーっ!!ぶおーーーーっ!!しゅるしゅるしゅる!!



 「んな訳ねーだろ!!!!」


 ばぁーーーーーーーーーーん!!


 自分の身体より大きなゴム風船を噛み割った、図体の大きな雑種の野犬のペスが半ば落胆した赴きで話していた野犬と野猫達に怒鳴った。


 「じゃあ、俺達は何で集まったんだよ?!」


 「もうすぐ、保健所の人間が一斉にやって来て、俺らを殺しにやって来るんでしょ?!」


 「綺麗な環境で、オリンピックを開催する為に私達が犠牲になるんでしょ?!」


 「だから、皆で今宵は風船で思いっきり遊んで喜んで楽しんで、最期の晩餐をしようと・・・」


 

 わんわんわんわんわん!!


 ばうっばうっばうっばうっばうっ!!


 にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!


 きゃんきゃんきゃんきゃんきゃん!!


 うにゃーーーーっ!!


 ふーーーっ!!


 ぼうっ!!ぼうっ!!ぼうっ!!ぼうっ!!


 きゃいーーん!!


 にゃーん!にゃーん!



 犬や猫達は、突拍子の無い事を言い出した雑種犬のペスに対して一斉にブーイングが起きた。


 「何さ何さ何さ何さ!!俺は信じないぞー!!」


 すっかりブーイングのターゲットになってしまった雑種犬のペスはそう言い話すと、徐に取り出した気象観測用の巨大風船を担ぐと、息を思いっきり吸い込んで頬をめいいっぱい孕ませて『犬』とは思えない形相で浮腫んだ顔を真っ赤にして、一生懸命に息を吹き込んで膨らませ始めた。



 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!

 

 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!




 「きゃいーーーーーん!!怖いわん!!」


 「うにゃーーーっ!!割れるとドデカイ音が!!割れちゃう割れちゃうにゃーん!!」


 雑種の野犬のペスが、どんどんどんどん大きく膨らます巨大風船に怯えて周囲の犬と猫達は、耳を塞いでブルブル震えた。

 

 

 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!

 

 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!



 「よぉーーし!!あたしは負けないにゃーー!!」


 突然、1匹の図体の逞しい三毛猫が飛び出してきて、2メートル位膨らむ位の黄色い巨大風船を口にくわえると、これも頬っぺたをめいいっぱい孕ませて顔を真っ赤にして息を吹き込んで大きく大きく膨らませ始めた。



 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!

 

 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!



 「何にも1等賞にならないと気が済まない、勝負根性の持ち主で全国的に有名な三毛猫のミッケが図体巨体犬のペスに挑んできたーー!!」


 「あの三毛猫・・・肺活量凄すぎ!!」


 「だって!何でも1等賞の三毛猫ミッケちゃんだよーっ!!」


 野猫や野良猫達は耳を必死に塞いで、三毛猫のミッケの吐息で満たされてどんどんどんどん大きくなる黄色い巨大風船の脅威に身震いしていた。



 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!

 

 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!



 「きゃいーーーん!!風船2つとも!!やばくね?!」


 「犬と猫の風船のどちらも、根本のネックのとこまで膨らんでるにゃん!!」


 「割れる割れる割れる割れる割れる割れるわん!!」


 「割れるどころじゃねぇー!!大爆発だにゃーー!!」



 

 わんわんわんわんわん!!


 ばうっばうっばうっばうっばうっ!!


 にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!


 きゃんきゃんきゃんきゃんきゃん!!


 うにゃーーーーっ!!


 ふーーーっ!!


 ぼうっ!!ぼうっ!!ぼうっ!!ぼうっ!!


 きゃいーーん!!


 にゃーん!にゃーん!



 野良の犬猫達は、何時爆発しないか解らない2つの巨大風船に仰天して右往左往に大慌てになって大騒動になった。



 ふぅわり・・・ふわふわ・・・




 「あれ?上空から誰かがやって来るにゃ?!」


 「い、犬神様だわん!!」



 突如、遥かな空から身体に100個もの風船を紐に付けた犬神様が神々しい光を放って飛んできた。



 「わんちゃん達!にゃんちゃん達!コンナとこで何してんねん!?」



 「あっ!!」


 「わんこの神様?!」



 野犬のペスと三毛野猫のミッケは、思わず膨らませていた巨大風船を口から離してしまった。




 ぷしゅーーーーーーーーーっ!!


 しゅーーーーーーーーーーーっ!!



 「くぅん?」


 「うにゃっ?!」



 ぷしゅーーーーーーーーーっ!!ぶおーーーーっ!!しゅる!!しゅる!!しゅる!!しゅる!!


 ぷしゅーーーーーーーーーっ!!ぶおーーーーっ!!しゅる!!しゅる!!しゅる!!しゅる!!



 「きゃいーーーん!!」


 「うにゃーーーっ!!」



 2匹は、吹き口から空気を吹き出して飛んでいく膨らませていた巨大風船の吹き口を必死に掴んで、右往左往に吹っ飛んでいた。


 「おいおいおい大丈夫かいな・・・?おふたりさん?!よっこらしょ!!ダブルでナイスキャッチ!!」 


 とっさに両前肢で捕まえたペスとミッケを抱えて地上に降り立った犬神様は、キョトンとする野良犬猫達にこう言い放った。


 「今度のオリンピックで、あんた達の殺処分なんかやらないからぁー!!人間達はーー!!

 むしろ、あんた達を保護するっからーーー!!」


 「えっ・・・?!」


 すっかり萎んだ巨大風船の上で腹這いになっている、雑種犬のペスは、大勢の犬猫達の凝視する視線に冷や汗をかいた。


 「まあまあ、みんな!落ち着いてにゃ!!」


 そこに、萎んだ巨大風船をマントにして割り込んだ三毛猫ミッケが大慌てでやって来た。


 「でもさあ、結果こうやってみーーんな同じ野犬野良犬野猫野良猫同士が集って仲良く風船で遊べた楽しい機会を分かち合えたんだし・・・!!」



 ぎゅっ!ぎゅっ!


 「うわっ!!わしは『神様』だじょ?!何羽交い締めするんじゃ!」


 ペスとミッケは笑いながら、ジタバタする犬神様にこう言い聞かせた。


 「かみさまーー!!かみさまも一緒に無礼講しよ!!

 さあ!!最高の僕達の風船祭りだぁーーーーーーー!!

 そーーーーれっ!!」




 わんわんわんわんわん!!


 ばうっばうっばうっばうっばうっ!!


 にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!にゃーーーぉ!!


 きゃんきゃんきゃんきゃんきゃん!!


 うにゃーーーーっ!!


 ふーーーっ!!


 ぼうっ!!ぼうっ!!ぼうっ!!ぼうっ!!


 きゃいーーん!!


 にゃーん!にゃーん!



 「うわーー!!背中の風船割らないでーーー!!それが無いと空間移動出来ないんじゃーー!!」



 野犬も、野良犬も、


 野猫も、野良猫も、


 異種や身分を越えて、


 皆で仲良く。


 最高最大のわんにゃん風船祭り!!


 


 「あ!そうそう、オリンピックは延期だってね!例のウイルスのせいで・・・」


 「知ってる!!」


 「皆、密になって大丈夫?例のウイルス・・・クラスターに」


 「ぎくっ。」




 その後、世の中の人間達のイベント自粛に合わせるように、この祭りを最後に皆集まる事は暫く無かったとさ。




 ~fin~

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