【短編】スマフォを忘れただけなのに

天照てんてる

何もできなくて・・・朝

 僕は今日、家を出るときにスマフォを忘れた。モバイルSuicaがなく、電車に乗れない。駅そばも食べられない。松屋のクーポンもない。


 仕方ない、取りに帰ろう……そう考えた僕は妻に電話をかけようとした。だが、スマフォがないのだ。公衆電話を見付けても番号はわからないし、10円玉だって持っていない。


 そして家に着いてマンションのエントランスをくぐり、自室の鍵を開けようとすると……スマートロックだ。しまった、開けられない。


 何度も何度もチャイムを鳴らすが、妻は出かけているのか寝ているのか、ドアが開くことはなく、会社に連絡しようにもスマフォがないのだ。


 絶望だけが僕の心を支配するのに、そう長い時間はかからなかった――

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