姪孫姫は絵を描きたい

九原 みわ

プロローグ

目が覚めたとき、絵美えみはおびただしいほどの血の海に寝そべっていた。

あまりのことに喉の奥に声が引っかかり、引きつったような悲鳴を上げて、そのまま立ち上がることもできず、腰を抜かした。

手をついた拍子に、それはパチャリと音を上げる。

どれほどの量の血が抜けると、ここまでになるのか皆目見当もつかないが、この血を流した人物は生きてはいないのではないだろうか。

カタカタと震え出した身体は、知らず手のひらを口元に持っていって。


「ーー……ん?」


すんと、鼻で一度吸う。

手のひらについた鮮やかな紅は、その間にもポタリ、ポタリと滴り落ちた。


「あら、絵具」


絵美の慣れ親しんだその香りにそう呟くと、その紅は次の瞬間、今度は鮮やかな空の色へと変化した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る