転生したら村を任されたので、発展させていきます。外伝

白藤 秀

四年に一度の大品評会

 俺が前世と呼ばれる記憶がある事を明確に意識したのは、リオンとして生きて五歳の頃、俺は流行り病にかかり生死の境をさまよった。

その結果として、俺は日本と呼ばれる法治国家で農業を生業として生きていたことを思い出す。趣味と呼べるほどの物はないが、好きな事はあった。歴史書を読んだり、アニメや漫画を鑑賞したり、うまい料理を作ったり食べること。

まあ、不幸にも熊に襲われその生涯を閉じ、第二の人生をリオンとして歩み始めた感じだ。

 そんな俺は今、帝都に来ている。何をしにって? それはな。四年に一度開催される大会に出るためだ。

『これより、大品評大会の開催を宣言する!! 各々日々の成果をここで発揮し、余の目を楽しませよ!!』

 頭の白い老人が声高らかにそう宣言した。

 彼こそ、この大陸全土にその名を轟かせる雷帝グズタフその人であるらしい。そもそも俺は田舎育ちだからな。よくは知らん。

「いよいよ四年に一度の大祭が始まりました! アービラス帝国主催、大品評会!! みなさん、楽しんでいらっしゃいますか!?」

 おおおおおおおおぉぉぉ!!!

 怒号のような歓声が響き渡る。

 誰もがこの大会が開催されるのを心待ちにしていたようだ。この大会は武闘大会、品評大会の二つの大会が同時で開催される。

 開催地は同じだが、武闘大会はこのままコロッセオで行われ、品評大会は帝都全体を使って行われる。

 種目の説明からしよう。

 まずは武闘大会。読んで字のごとく、武を競う大会だ。この大会の為に大陸全土から強者が集い力を競い合う。優勝者には五百ゴルドーの賞金と帝都でも高名な武器職人に・武器・武具を作ってもらう権利を与えられる。それも無償ときたものだ。

 その他にも皇帝にお願いを聞いてもらえる権利を与えられる。それを使って貴族になった者いるとかいないとか。定かではないが、夢がある話である。

 んで、俺が出るのが、品評大会の方だ。

 こっちは主に育てた家畜や魔獣を競わせる。

 足の速い魔獣や家畜には障害物レース。魔獣の佇まいや品格、筋肉のつき方や造形の美しさを自慢したいなら品評会、戦うことに重きを置き、魔獣や家畜を育てたなら魔獣武闘会。

 俺はこの日の為に育てた魔獣で武闘会にでる。

 俺の相棒は真っ白な体毛で覆われた牛、名はブルだ。とても賢い子で、俺が言ったことが分かるのかその通りに動いてくれる。ゴブリンやオークなどが襲ってきても返り討ちにしているので、ただの牛ってことはないかもしれないが・・・まあいいか。

 さて、そろそろ受付だな。

「次の方どうぞ」

 眼鏡をかけていかにも真面目そうな女性が担当してくれた。

「はい」

「エントリーは済ませておいでですか?」

「ええ、こちらに」

 俺は昨日受け取っていた木札を彼女へと手渡した。

「確認いたします。はい。確かにリオン・ブルペアで登録されております。こちら番号札です」

 木札の代わりに渡されたのは、番号が書かれた丸いバッチだった。しかし、その数字が縁起でもない。

 946番だ。苦しむってどうよ。

「・・・これって変えてもらえませんか?」

「次の方ー」

 彼女は俺の言葉を無視して次を呼び始めた。

「ちょっとお姉さん!!」

 食い下がろうとしていると、通路の奥から男性が俺に声をかける。

「君、番号札をもらったのなら急いだ方がいい。もうすぐ抽選の締め切りだ」

「っ!!」

 俺は急いで抽選の行われる会場へと急いだ。


 数が多いからか、4ブロックに分けられ最初の一回戦で大乱闘して勝ち残った者が他のブロックを勝ち抜いた人と準決勝、残った者たちで決勝という流れになる。

 俺とブルは3ブロック。リングに上がったのは三十体の魔獣たち。

 ワイバーン、リザードマン、サラマンダー、ゴーレム、スライム、・・・

 最後の方は絶対くるとこ間違えただろ。俺のブルもかなり笑い者になっているが、まあ、見た目だけで侮っていると後悔するぞ。なんと言ったってそいつはただの牛じゃない。俺が丹精込めて育てたブルだ。

「ブル! このリング上にいる全ての魔獣をリングの外へ叩き出してやれ!!」

 ブルはブモーと短くないて返事をした。

「それでは、試合開始!!」

 ブルを餌だと思ったワイバーンは速攻でブルに襲い掛かってきた。ブルは逃げる事もなくドッシリと屈むとワイバーン目掛けて飛び上がる。石の床が砕け、亀裂が走った。とんでもない速度で頭からワイバーンに突撃し、吹き飛んでいくワイバーン。捕食者が捕食対象に逆襲される絵がここに完成した。

 重量感のある頭突きをまともにくらい城外へと吹き飛ばされ、白目をむいてだらしなく下を垂らして気を失っていた。ブルは轟音と共にリングへ着地し、俺の命令どおりにリングにいる全ての魔獣達をリング外へと叩き出していき、この試合は開始三分で決着となった。


 次の準決勝では、アークデーモンと呼ばれる山ヤギの頭に上半身は人間でその背中にはコウモリの様な翼があり、下半身はヤギの様な姿の魔獣だった。

 木の棒を武器として持っている。

「さて、相手は武器を持っているが・・・ブルさんや調子はどうだい?」

 ブモーと大きく鳴いて前足で床を踏みしめた。やる気は十分ある様だ。

「じゃあ、この試合も速攻で終わらせよう」

 ブゴー! 気合いだめしすぎだって。

「準決勝試合、開始!!」

 最初に動いたのはブルだった。俺の命令どおりに速攻でこの試合を終わらせる気の様だ。アークデーモン目掛けてブルは突っ込んで行くが、アークデーモンはそれをヒラリとかわし、背中の翼で宙を舞う。そして、アークデーモンは持っている木の棒でブルを攻撃し始めた。

「うーん。やっぱり宙を舞うのはずるいよな。ブル! その蝿をたたきおとせ!」

 ブモっとなくとアークデーモンの棒に噛みつき、アークデーモンをリングに叩きつけ、間伐入れずにアークデーモンにのしかかった。こん身ののしかかりによりアークデーモンは目を回していた。これ以上の戦闘を続行出来ないと審判が判断し試合は終了。俺たちは決勝へと俺たちは駒を進めた。


「会場にお集まりの皆様! これより決勝戦を開催します!! 今回の大会、4ブロック共に激戦でした。その激戦を制し、この決勝の舞台に見事到達した二組の魔獣使い。皆様! 大きな拍手と歓声でお迎えください! それでは1ブロックを見事制したハルマ・レッドドラゴンペア!!」

 三十代くらいの男と大きな赤い龍がリングへ上がり、ハルマは手を振って声援に応えレッドドラゴンは火炎を空へと吹き上げて声援に応えた。

「そして、3ブロックを見事制したうら若き少女と相棒の牛。リオン・ブルペア!!」

 俺はブルの背に乗ってリングへと上がる。歓声に応えるために、手をフリフリ。ブルはブモーブモーって鳴いてた。

「まさか家畜と女の子が決勝の相手だなんて、複雑だな」

 明らかに格下を見る目で俺達を見ている。ドラゴン相手だからってウチの子は一歩も引かねえから。

「俺もおじさんとデカくて赤いトカゲが相手だなんて嫌だけどね」

 おじさんは少しムスッとした顔する。

「もう少し女の子らしい会話の仕方を学んだほうが男性受けはするぞ」

「そうですね。オレに勝てたら考えます」

「ふっ、ぬかせ」

 小馬鹿にした顔で俺を見るな! ぜってぇ勝つ。

「ブル! 全力であのトカゲを倒すぞ!」

 ブモー!! 今までの試合よりもかけ声にやる気がにじみ出ているな。よし、やろう!

「それでは! 決勝戦、開始!!!」

 開始の合図と共にレッドドラゴンのブレスがブルを襲う。

 ブルは素早くブレスを避けると大回りではあるが、レッドドラゴンに接近するためにリングを駆ける。

「レッドドラゴン! 火炎を続けろ。そのままあの牛を丸焼けにしてしまえ!」

「ブル! 避け続けろ! そのまま接近して渾身のス○タッ○ルだ!」

 そうした攻防が二十分は続いたが、体力の消耗はあきらかにブルが大きかった。

 次第にブレスを避けきれなくなっていく。

「トドメだ、レッドドラゴン!」

 レッドドラゴンは今まで以上に大きな火球を連続で吐き出していく。

 満身創痍のブルはリングの窪みに足を取られ倒れてしまった!! そのスキを見逃してくれる程レッドドラゴンは優しくは無く、追い討ちを掛けるようにその口から火球を連続で吐きだした!

 その火球全てがブルに直撃し、ブルは炎に包まれた。

「っ! ブルーーー!!」

 炎にまかれてもがくブルの姿を見ていられず、思わず目をそらし−-

 ブモ! 炎に巻かれながらも起きあがり、リングを踏みしめる。ブルのやる気が炎を吹き飛ばしたのか炎は消え、代わりにブルの体毛が金色に輝いていた。

 それはもう神々しい光だ。後光が差したかのように。

「な、なんだその牛は! なぜ、レッドドラゴンの火炎を食らって死なない!」

 慌てるハルマに俺は冷静に応えてやる。

「そりゃあ、俺の相棒だからだよ」

 ブルは金色に発光した状態でゆっくりとレッドドラゴンへと歩み寄っていく。レッドドラゴンは恐怖状態なのかブレスをブルに向けて吐き出し続けるがそのブレスはブルへ当たる前に左右に分かれてしまい、肝心のブルへは届かない。

 そして、ブルは駆け出した。レッドドラゴン目掛けて迷いなく一直線に。黄金の閃光となったブルはレッドドラゴンの腹部へと全体重が乗った頭突きを叩き込む!

 グラリと巨体が揺めき、レッドドラゴンがリングへと沈む音が会場に響き渡った。

「し、勝者。リオン・ブルペア!!」

 けたたましいほどの大歓声に会場は包まれた。

 この日、家畜と侮られた牛が魔獣武闘会にて優勝した。その事は帝都中に広まり、そして、尾ひれをつけて大陸中へと広まっていくのであった。


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