第17話 世界の大富豪『プロゲーマー世界1位登場』


 ウィリアム・スーパーゲーマー、ゲームアカウント『ビルド』としてプロゲーマー界に君臨してきた男は今、興奮していた。


 この目の前にいるシヴァルツとラスマーキンという男たち・・・間違いなくゲーム強者、だが今までウィリアムはこの者らを知らない―。

ウィリアムは今まで感じたことがない興奮をしていたのだ。これまでのゲームの対戦が子供の児戯に等しかったのだと思い知らされたのだ。


 どんな対戦でも緊張することはなかった。緊張とは自身の精神の緩みでしかないと思っていた。


 だが、初めてのギリギリの戦いができると、身体が武者震いし、興奮し、緊張していた・・・。






 これは感謝しなくてはな・・・そう、初めて勝敗の見えない戦いに挑むことに感謝の念を覚えたのだ。


 しかも、幸いなことに、その実力を見た上で対戦できるのだ。


 家族がそれぞれの得意ジャンルで勝負を挑み、間近でその対戦っぷりを見たからこそ、自身は全力で油断なく戦える。




 彼の妻、クイーン・スーパーゲーマーも、彼の息子、キッズ・スーパーゲーマーも、愛娘、ガール・スーパーゲーマーもみんながお膳立てだったのだ。


 満を持して自分の番が来たということだ。


 「ちっきしょー。てめぇら、ゲームで負けるなんて恥知らずじゃねえか。おい。ウィリアム、てめえがなんとかできるんだろうな?」


 クチの悪いメイドロボ、メイド・メイド・イン・ジャポンがそう言った。




 「ハッハッハッハッ。私の家族では相手にならなかったようだな。では、私がお相手するとしよう。

世界一の私のテクニック・・・目をつぶってんじゃあねぇぞ!?」


 そして、ウィリアムはゲームの準備をした。


 「テーマは『対戦格闘ゲーム』だ!」


 「ふむ、では相手は、この大魔王ラスマーキンがするとしよう。」


 「吾輩がやろうではないか。大将戦なら吾輩であろう?」


 「いやいや、シヴァルツ様。我の後ろで対象はどーんと構えていてくださいませ。」


 「いやいや!ずるいぞー! ラスマーキンよ。貴様はすでに2回も遊んでいるではないか? 次の番は吾輩だろーーーっ!!」






 「ええ・・・。最強破壊神様ともあろうお方が、そんな駄々っ子みたいなこと言って・・。」


 「ええーい! 貴様! 吾輩がやるのだー!」


 「はいはい。わっかりましたよ。シヴァルツ様。じゃあ、おまかせしますよ? ・・・・・・負ければ良いんだがな(ボソリ)」


 「んんっ!? なんか言ったか?」


 「いえいえ。どうぞ。シヴァルツ様、ささ、こちらへどうぞ。」




 「使用ゲームは、対戦格闘ゲーム『士道不覚悟』ジャポン国のサムライスピリッツ極まれりのゲームだ。

キャラの特質はサムライ。だが、心技体すべてが必要なアクションゲームだ。決勝にふさわしいだろ?」


 「決勝・・・って、そっちは3敗してるんだがの・・・。どあつかましいヤツめ。まあよいわ。」








 「では、キャラクターを選ぶがいい。オレは、このキャラだ!」


 そう言ってウィリアムが選んだのは、ゲーム中でも正統派キャラ、『ムサシ』二天一流の使い手だ。


 シヴァルツはどの剣豪キャラが強いのかは、さっぱり情報がない。






 『コジロウ』巌流


 『ムサシ』二天一流


 『クランドノスケ』タイ捨流兵法


 『ボクデン』新当流


 『インエイ』宝蔵院流槍術


 『シゲカタ』示現流


 『ジュウベエ』柳生新陰流


 『イットウサイ』一刀流


 『ノブツナ』新陰流


 『ソウジ』天然理心流


 『トシゾウ』天然理心流


 『リョウマ』北辰一刀流




 シヴァルツはどれを選ぶか―。


 「では、吾輩はこのキャラにするか。『コジロウ』とやらにするわ。この長い刃物使いが良さそうじゃの。」


 この時、シヴァルツは佐々木小次郎が宮本武蔵に敗れた巌流島の戦いのことなど知るはずもなかったのだ。



 


 『コジロウ』はモデルが佐々木小次郎、『ムサシ』はモデルが宮本武蔵、『ムサシ』に対する『コジロウ』は縁起が悪いというまでもないキャラ選択だ。


 『コジロウ』は、刃長3尺余(約1メートル)の野太刀「備前長光(びぜんながみつ)」を使用し、その剣術・巖流の技の『燕返し』を代表とする最速の剣術使いだ。


 他のキャラを圧倒するその剣閃の速度、並みのキャラなら対処に苦労するだろう。その意味ではこの『コジロウ』を選んだのはなかなか良いと言えよう。




 だが、対する『ムサシ』はその『コジロウ』に対して相性が悪い。


 『ムサシ』の二天一流は二刀流、「三つの先」を主に戦うキャラだ。


 懸(けん)の先


 待(たい)の先


 躰々(たいたい)の先




 懸(けん)の先は、相手より先に「先」をとることで、


 待(たい)の先は相手が攻めてきた後「先」をとること。


 躰々(たいたい)の先は、相手と同時に出て、自分が「先」をとることだ。


 その極意はつまり、先を取ることにあるのだ。『コジロウ』の先をさらに上を行くキャラで相性が悪いのだ。




 シヴァルツはそのことにまだ気がついていない。


 ウィリアムの妻、クイーンは勝ったと確信した。『ムサイ』に『コジロウ』で対戦するゲーマーは本当にいない。


 不利すぎるのだ。シヴァルツが勝負の前に負けているのだ。情報を知るということは、勝負の前に大いに優先する。




 「では、始めますよ? 用意は良いかしら?」


 クイーンがそう二人に告げ、手を上げる。


 「吾輩は構わんぞ? いつでも良い。」


 「ああ、私も大丈夫だ。お相手しよう。」





 「ラウンドワン・・・スタート!!」


 対戦開始の合図が宣言された。


 画面に向かって、左に『ムサシ』、右に『コジロウ』が構える。




 そのスタート開始の合図が切って落とされるや否や、その刹那の瞬間、『コジロウ』の必殺技、『燕返し』が放たれた。


 先の先の先、開始直後、人間の反応速度の限界の時間は、いつ来るかわからない1つの刺激に対して待ち構えている場合、普通の人で0.2秒くらい、人類の限界点で0.1秒強である。


 ウィリアムはその極限の反応速度、0.1秒で『コジロウ』の繰り出す技に反応し『防御カウンター』の技、『後の先』を繰り出していた。






 だがしかし、最強破壊神の反応速度は、人間の限界値を遥かに凌駕していたのだ。


 時をも止めるその力は、刹那の反応を可能にしていたのだ。


 スタート開始のまさにその瞬間に打ち込まれた正確無比なボタン操作から繰り出されるその技『燕返し』は、ウィリアムが反応開始したその瞬間にはすでに行動は終わっていた。




 しかも、『燕返し』は返す刀で2回斬る技、一度目の攻撃が決まり、相手の無効時間が解除された瞬間、ウィリアムの『防御カウンター』技の入力が行われ、ガードが外れる。


 そこへ、まさに返す刀でズバッと斬りつける・・・。


 一気にウィリアムの『ムサシ』の体力ゲージが半分以下にまで減ってしまった。




 「な・・・なんだと? 馬鹿な・・・。この私より速いだと・・・。ありえ・・・ない。」


 「ふはは。吾輩は最強破壊神、シヴァルツ・シヴァイス様であるぞ?」


 「くっ・・・。だが、まだ勝負はこれからだ!!」


 ウィリアム・スーパーゲーマー、彼は世界一のプロゲーマーなのだ。


 その精神はゲームが終了するまで折られることはない!




 シヴァルツの世界の不条理との戦いはまだ始まったばかりだ。


 まだまだ、彼らの戦いはこれからだ―。





~この話をもってしばらく休載いたします~

ご愛読ありがとうございました。

あっちゅまん先生の次回作にご期待ください!!



いや、打ち切りかよっ!!





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現代の地球に転生してきた最強破壊神と大魔王の世界革命記 あっちゅまん @acchuman

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