第26節 -二人のレナト-

 玲那斗が二階へ降りた時、廊下の中ほどに少女の姿が見えた。声を掛けようとしたが、玲那斗の姿を確認した少女はすぐに方向を変え歩き出し、通路の中央付近から外へと出ていった。その後を急いで追いかける。三階へ向かう際には急いで後を追いかけたために気付かなかったが、どうやら二階から外の裏庭へ向かう為の階段があるようだ。少女は最後の目的地へ自分を連れて行こうとしていると、そう思えた。


 扉を抜けた先の階段へ向かう。降り切った先では少女が尖塔の方向へ歩いている姿が見える。玲那斗が階段を降りて正面を向くと少女はこちらを振り返った。少女の瞳は片目が青色に煌めいているように見える。そして玲那斗の姿を確認するとまた光が溶けるように目の前から消え去った。

「この先で彼女は待っているのか。」上がった息を整え落ち着こうとするが、否応にも心拍数が上がる。自身の求めるものは彼女の中にあり、彼女の求めるものは自分の中にあるという。その答えを確かめなければならない。

 つまり、この島で起きている現象の全ての答えを彼女は知っており、彼女が求めているものは自分の中にある。その彼女が求めているものが何であるかは濁流のように流れ込んだ記憶で垣間見る事が出来た。彼女はこの時を待ち続けた。自分の愛した人間の記憶を持つ人が来る事を。生前に叶わなかった願いを叶える時を。そしてこの島に縛られた自分の魂を救い上げてくれる人が来ることを。


 玲那斗は走って尖塔へと向かう。穏やかな月の光が外の景色を青白く照らし出し、裏庭の整えられた草木を幻想的に映し出している。調査に来た時に見た尖塔とは違い、今自身の前に見える尖塔は星の塔と呼ぶにふさわしい威容を示しながらそこに聳え建っている。しかし今はこの美しい外観を楽しんでいる余裕などない。一刻も早く彼女に会わなければ。

 塔の入り口に辿り着き、重たい扉を開く。真っ暗な塔の中へ入った瞬間、階段横に備え付けられていた燭台の火が下から上へ向かって順に点火し始めた。さながらこちらへ来て欲しいと誘導するかのようだ。その意思に従って階段を上がる。塔の入口までは走って来たが今はゆっくり、ゆっくりと一段一段を踏みしめるように注意深く。


 頭の中では会った時にまず何を話すべきなのか、何を聞いて何を伝えるべきなのかを考える事でいっぱいだった。しかし、最終的には彼女の求めるところを為すべきだ。つまりまずは ”約束の場所で彼女の名前を呼ぶこと”。 その瞬間はもうすぐ訪れる。周囲に甘い香りが立ち込める。キャンディーのように甘い花の香り。玲那斗の中でそれは確信へと変わる。間違いなくこの先に彼女はいるはずだ。


 もう少し、もう少しで最上階へ辿り着く。もう三段、もう二段、そして最後の一段。最初に登った時よりずいぶん長く感じたがついに最上階まで辿り着いた。最後の階段を上り終え頂上に足を踏み入れた時、階段脇で灯っていた燭台が一番下から順に消え、ついには全ての燭台の炎が消え去った。玲那斗は月明かりが差し込む、開け放たれた扉の向こう側にあるバルコニーへと歩き、そこで彼女の姿を視界に捉えた。目の前には美しい白銀の髪の少女が月明かりに照らされて幻想的に佇んでいる。


「イベリス」


 少女の姿を目にして開口一番、玲那斗は彼女の名前を呼んだ。すると彼女を照らしていた月明かりが強く輝き夜空が一層輝き始めた。淡い光が二人を包み込んでいく。光に包まれた少女が振り返る。口元は僅かに緩み、微笑みを湛えた彼女は最初に出会った時と同じ透き通るような灰色の目で玲那斗を見つめている。

 その瞬間、玲那斗の頭の中にまた走馬灯のように記憶が映像として流れ込んできた。楽しそうな少女の顔。空に輝く星の記憶。ある時は共に笑い、ある時は共に泣き、幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた。差し出した手を握り返す少女の顔は少し恥ずかしそうで、それでいて笑顔を返してくれていた。この幻想が作り出す城へ足を踏み入れた時に見た石を受け渡される光景、共に食事を囲み談笑する温かな光景、それら全ての映像が濁流となって玲那斗の頭に流れ込んでくる…


 しかし、温かな記憶の映像は突然途切れ、景色は一瞬で赤く塗りつぶされた。あの燃え盛る森を覆っていた炎が記憶の中の景色を燃やし尽くしていく。美しかった景色も、この城も、この場所も。自分は島から離れていく船の中で泣きながら何かを叫んでいた。遠くに見える燃え盛る城の中で、愛した人が燃え尽きようとしているのが分かる。敵国の投石機から放たれる巨石が城へさながら雨のように降り注ぎ全てを圧し潰す。

 今自分が垣間見た記憶は彼女の記憶ではない。この夢の世界に囚われた時から見ていた景色は全て彼女の記憶ではなかった。あの燃え盛る森も、飛び交う怒号も、人々の呻き声も全て過去を生きた ”レナト” の記憶だ。


 ”自分は何も守ることが出来なかった” と心が叫んでいる。


 玲那斗の目から自然と涙が溢れ出す。自分自身の記憶ではないが、この体に駆け巡る血が覚えている。その思いを代弁するように言葉が溢れてきた。

「イベリス、私は君を守る事が出来なかった。何も出来ないただの役立たずだ。国を出る時の船の上で叫んだ。こんな事は間違っている。世界は間違っていると。愛する者一人守れずして何が次期国王だ。あの時、父上や母上、制止する兵を振り切ってでも君の所へ行くべきだったんだ。すまない。君だけを辛い目に遭わせてしまった。」

「いいえ、レナト。それは違います。私があの時死んだのは星の運命が定めた必然です。私はお父様やお母様から貴方と一緒に逃げるように言われました。しかし、それを拒みあの場に残ったのは私自身の意思です。それに、王の娘である私が逃げたところで、亡命先で政治利用されるか、見せしめとして殺されるかのどちらかだったでしょう。貴方はあの時点で諸外国に対して次の国王だとは知られていなかった。けれど私という存在が傍にいる事で、その事が公に知られる事になれば結果的に貴方を命の危険に巻き込んでしまう。そんな結末を私は望まなかった。」少女は堂々とした立ち居振る舞いで威厳をもって話を続けた。それは確かに王妃としての覚悟と責任を背負った人の言葉だった。


「あの地獄のような景色の中で、私は自身の運命を呪い、美しいと思っていた世界の汚さに絶望もした。けれどこの命が消える瞬間には、そんなことはもう頭には無かった。私はただ祈った。私の願いは貴方がこの苦しみを味わうことなく生き延びてくれる事。そして願わくば、百年、二百年、いえ、千年という長い月日が経とうとも、いつかこの場所で貴方に逢う約束が果たされる事を。そして今、その私の祈りは空に届いていたという事が証明されました。それに ”あの時私が死ななければ貴方はきっと助からなかった” これは疑いようのない事実だもの。だからそれで良いの。」最後は優しい口調でイベリスは語り掛ける。

「あれから長い歳月を越えて、今の時代に貴方は生まれた。再び生まれてきてくれた。その石を持ち、星の加護を受けてその記憶を受け継いだという事は、貴方がレナトの生まれ変わりという証。」イベリスの言葉に玲那斗が返事をする。


「俺の中の “彼” は、君が自分を許さないだろうと思っていたと言っている。彼が君に求めたのは贖罪だ。人生の全てを通して君への想いがあった。国が滅んだ後に彼は自分なりに考えて、生かしてもらったその命を自分だけでなく次代へ続けていく事が君への償いになると考えた。君にとって自らの死が、結果として彼への救いになったように、彼にとっては自らの生が君への救いになったという事か。」

「そうね。私にとっては彼が生きてくれる事が最後に祈った何よりの願いだった。けれど私はレナトを恨んだ事も憎んだ事も無いし、許さないなどと思ったこともありません。彼はとても優しいから、全てを自分の責任だと思って抱え込んでしまったのね。」玲那斗の言葉にイベリスが答え、さらに続けて言う。

「それと、貴方は自身と彼を分けて考えているのかもしれないけれど、私にとっては貴方は私が愛したレナトそのものよ。私の求め続けてきたものを、叶えてくれたのは貴方だもの。今は、あの手紙に書いた約束が、ここで果たされる事だけで充分よ。」彼女は外の方に向き直り静かに空を見上げた。そこには一つ一つを数えられるほど眩い、輝く星々が光並んでいた。千年前に輝いたかもしれない光。遠い過去の光が二人を照らす。


 玲那斗はゆっくりとイベリスの隣へ歩いて行きそっと彼女の手を握る。少し驚いた様子の彼女は頬を赤らめ一瞬玲那斗を見たが、すぐに星空へ視線を戻した。そして玲那斗が繋いだ手を優しく握り返す。そのまま二人はしばらく星空を見続けた。


 流れ星が空を駆ける。星々の煌めきの音を感じるほどの静寂の中、空は眩く輝きを放つ。千年前に叶わなかった約束が果たされた事を祝福するかのような輝きだ。


 二人でしばらく星を眺めた後、玲那斗は大事な事をイベリスに確認する。

「イベリス、君に聞かなければならない事がある。」

「分かっています。私の願いとは関係なく、元々その為に貴方達はこの島へ来たのですから、今を生きる貴方達にとっては、それを知らなければ帰る事は出来ないのでしょう。ただ、理解してもらえる話かどうかはわからないのだけれど。」イベリスは一度言葉を区切り深呼吸をする。そして繋いでいた手を離すと玲那斗の方に向き直り真っすぐに視線を向けた。

「まず、貴方達が怪奇現象と呼んでいる一連の出来事は間違いなく私が引き起こしている出来事です。私は自分の姿を消したり、遠く離れた場所に自身の姿を投影したりする事も出来るし、霧で何かを見えなくしたり、或いは在るものを無いはずの場所に投影する事も出来る。それと貴方達が “通信” と呼んでいるものを意図的に妨害したり割り込んだりすることも。光が関わる事なら色々な事が出来るわ。」


 そう言うと目の前のイベリスの姿が消えた。そして後ろから再び声が聞こえてくる。

「リナリア公国が崩壊し私という現実世界に紐づけられていた存在が消え去った後、気が付いたら私はこの力をもってこの場所に立っていた。」玲那斗は即座に後ろを振り返る。

「昔から星を見ることが好きだったからかしら。最初は私も戸惑ったのだけれど、死ぬ間際の願いを叶える為に神様が与えてくださった機会だと思う事にしたわ。」イベリスは話を続ける。

「私がそんな存在となった後も、相変わらず争いを続ける人間たちでこの地は溢れていた。襲撃してきた国の人間。ハイエナのように略奪を狙う海賊達。そんな輩がいつまでもここで醜い争いを続けていた。私はこの思い出の地をこれ以上穢されないようにと強く願い、そしてこの身に宿った力を使ってこの島を荒らす不届き者達を全て追い払ったわ。」玲那斗が明らかに不安そうな表情をするのをイベリスは見逃さなかった。


「けれど誰一人として殺したりはしていない。先も言った通りこれ以上この地を穢したくなかった。だから私達を殺した人々と同じ事をして血を流すわけにはいかない。それに、私達を追い詰めた人々にだって、国へ帰れば大切な人はいるはずだもの。傷付けてしまったら、その人達に悲しい顔をさせることになるわ。それは互いにとってとても悲しい事よ。そうして侵入者たちを追い払い続けて、ついにこの地から誰もいなくなった後は、私は次にこの島へ近付こうとするものを遠ざけながらただ待ち続けた。この塔の中でずっと。」信念を感じさせる真っすぐな目で彼女はそう言った。誰も殺していないという言葉に玲那斗は安堵した。

「つまり君は千年もの間ずっとこの塔から動かずに待っていたのか?」玲那斗は少し引っかかった事を質問した。

「えぇ、ここからはこの島の全てが見えるし、何より貴方との約束の場所よ。離れたくないもの。あと貴方達がこの島へ来る前もこの場所でそれを見ていた。この島に降り立つ前に少し声を掛けてみたのだけれど気付いてもらえたかしら?」

 リナリア島へ降り立つ前に声を掛けた?その時、玲那斗は隊長が上陸前にセントラル1と交信した音声通信を思い出した。いつもの調査での交信では聞き慣れない女性管制官だと思っていた声。

「あの時の通信の声はイベリス、君の声だったのか。」

「気付いてくれて嬉しいわ。玲那斗。貴方がここに近付いてきていると感じた時のあの情熱の高鳴りはとても抑えきれるものではなかった。」そう言って気持ちを鎮めるように一呼吸置く。


「この夢の中へ貴方を招いて、最初に森で逢った時も私はこの場所にいたわ。」

「だとすると、あの時の君は本当の君ではないと?」玲那斗が確認するように言う。

「そう、私は自分の目が届かない場所であっても一度訪れたことがある場所なら自分の姿と全く同じ、いわば分身を投影して “そこに存在するもの” として動かすことが出来る。物に触れる事も出来るし、一部を除いてはまず見分ける事は出来ないでしょう。投影体は本体である私自身からの距離が離れると左目の色が変わるの。森で貴方と逢った時は赤い目をしていたでしょう?あれは本体である私との距離が遠く離れていたからよ。遠くなるほど赤く、近付くほど青く、虹の色の移り変わりと同じように変化をしていくわ。」イベリスは自身の持つ力について説明をした。

「という事はこの島で一番最初にこの場所で出会った時の君は…」

「そう、紛れもなく “本体” である私自身よ。」


 玲那斗はあの時の彼女が消える前に悲しそうな目をした理由を悟った。彼女はここで千年もの間待ち続けた。愛する人の生まれ変わりだと信じる人と再会できる喜びは何物にも代えがたいほどの感情だったはずだ。しかしあの時の自分は動揺と不安の表情しか浮かべていなかったに違いない。さらに過去を生きた “レナト” の記憶がまだ呼び起こされていなかったとはいえ、彼女自身の事を全く考えずに誰だなどと言ってしまった。千年も想いを寄せてくれた少女を前にして酷い男がいたものだと今は思う。

「すまない。あの時は本当に記憶が無くて。」

「謝らないで。貴方の中で眠っていたレナトが贖罪を求めていたのなら、私を前にして貴方に記憶の全て呼び起こさせる事が出来なくても不思議ではありません。言ったでしょう?彼は優しい人だと。その記憶の奔流を垣間見た貴方なら、あの時に同じものを見せられていたらどうなっていたかは想像がつくと思います。」

「そうだな。きっと過去を生きたレナトはあの時、すぐにでも君に伝えたい事があっただろう。あの時の俺は不安も感じたし動揺もしていたけど、どこか懐かしさと温かさを感じる心はあったし、自分の感情に激しく波打つものを感じていたんだ。でも、あの状態で記憶を呼び起こせば、俺自身が二度と立ち直れなくなる可能性があった。彼はそこを心配してくれたんだね。」

「とても不器用だけれど、常に誰かの事を慮る心を持っている。彼のその在り方に私は惹かれたの。」玲那斗の言葉に何か感じ入る事があったのか、イベリスは表情を緩めた。


 続けて玲那斗は質問をする。

「去年、多数の船でこの島へ調査に訪れようとした人たちがいたはずだ。いや、正確にはこの島と同じ姿をした別の場所に浮かぶ島に。強力な閃光と濃い霧に阻まれて目的を果たす事無く引き上げたが、乗っていた人達は少女の幽霊を見たと話していた。それは…」玲那斗の質問にイベリスは言葉を被せて答えた。

「まぁ、幽霊だなんて!でもある意味では本当の事だから何も反論できないわね。私はこの島を守る為に、同じ形をしたものを遠くへ投影して本来のリナリア島は隠した。そうすれば、この地が誰かに穢されることはないはずだから。」そこでイベリスは言葉を意図的に切った。

「あの時の方々には申し訳ありませんでしたが、私はこの島を守ると誓った以上どんな者に対しても同様の事をしたに違いありません。そうして私はあらゆる手段を使ってこの島の本当の姿を隠し続けて、誰もこの地に寄せ付けることなくただ待ち続けた。ここは私の思い出が、私達リナリア公国の国民の思いが詰まった大事な場所だもの。誰かに傷つけさせることはしたくなかった。あの戦争のようなことがこの島でまた起きて、穢されるようなことはしたくなかった。」イベリスは話を続ける。

「いつかこの島で私の願いが叶う日が来ると信じて。だからこそ、貴方達がこの島に近付いてきたときはとても嬉しかった。貴方のもつその石が、私に教えてくれたわ。だから間違った場所に行ってしまわないように “意図的に” 貴方達をこの島へ迎え入れた。そしてここまでの事、それが全て。」

「話してくれてありがとう。イベリス。」玲那斗は彼女の目を見て感謝を伝える。

「いいえ、貴方には私の全てを知ってほしい。貴方にだけは私の全てを見て欲しい。それが良い事であっても、血に汚れた戦争の記憶であっても、全て。だから感謝を伝えるのは私の方ね。ありがとう玲那斗。ここに来てくれて。」そう言い終えると、イベリスは表情を変え玲那斗の目を真っすぐ見てさらにこう言った。


「この夢の最後に貴方にお願いをします。」

「リナリア公国第七代国王王妃として、君主の妃としてその王の生まれ変わりたる貴方へ嘆願をします。どうかこの地を、もう二度と悲しみに包まれないように全ての人々が笑顔で過ごせるようなそんな場所にしてください。それが私の最後の願いであり、祈りです。」

玲那斗は静かに、そして深く頷いた。

「約束です。私の愛する人よ。これから私は貴方と共に、貴方の行く末を一緒に見守っていきます。明日の陽が昇ったら、この島の中央広場の奥にある空地へ向かってください。広場の端にあるものを置いておきます。それを必ず貴方が手に取ってください。そうすれば、この島の周辺で起きていた現象は今後何も起こらなくなります。これは私からの約束です。」

 そう言うとイベリスは静かに消えていった。


 イベリスが消え去ると同時に星の輝きは暗くなり、月明かりに照らされていた周囲は真っ赤に染まった。この城が迎えた最後を追想するように景色は燃え上がり続ける。綺麗な夜空は赤黒い炎と煙に包まれてもう見る事は叶わず、玲那斗の周囲も炎に囲まれつつある。


“振り返らずに走って”


 彼女の声が聞こえた気がした。玲那斗は急いで階段を降り、裏庭を抜け星の城の裏口から廊下を抜け正面玄関へと走った。これは彼女の最後の記憶。彼女がこの世界で見た “最後の景色” だったのだろう。

 正面玄関を抜け森へと走り抜ける玲那斗は、もう二度とこの地に災禍が起こらないようにすると心に誓った。



 一方、少女は星の塔のバルコニーで燃え上がる景色の中を走る青年の姿を見つめていた。

「ねぇ?レナト。その手を伸ばして私の手を取って。今度こそ、私をここから連れ出してね。この冷たい夢から私を引き上げて。そしてもう二度と、さようならは言わないで。」

 そして少女は光が溶けるように炎の中に消えていった。

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