四年に一度僕ゴリラ

桃もちみいか(天音葵葉)

4年に1度、僕ゴリラ(絵本風)

 聞いてください!

 4年に1度、僕はゴリラになります。


 なぜか分かりませんが、僕は4年に1度ゴリラになってしまうのです。


 僕はバナナが大嫌いです。

 ジャングルだって大嫌い。僕はお家が大好きです。


 僕が初めてゴリラになったのは4歳の時でした。その日は何となく過ぎたので夢だと思っていました。


 次に僕がゴリラになったのは8歳です。

 その日僕はジャングルの滝に遊びに行きました。

 滝には人間がいて、僕を見てゴリラだと笑っていました。僕は威嚇をして人間を襲いかかって、捕まりそうになったので一生懸命逃げました。


 ゴリラになったまま。

 僕は人間に戻れず、とうとう捕まりました。

 日本の動物園に送られました。

 そこではメスゴリラに大変モテましたが、僕は人間なので狭い檻のなかをメスゴリラから逃げ回りました。

  やっと変身ゴリラが解けて人間に戻った時は僕は泣いていました。


 そして今年12歳、再び僕はゴリラになってしまうのかと恐怖に怯えて、お母さんに「助けてー!!」と言いました。

 そうしたら今度はお母さんがゴリラになりました。

 帰って来たお父さんがびっくりして、僕が事情を説明すると、お父さんがひとこと不敵に笑って言いました。


「フッフッフ。本当はみんなゴリラなんだ」

「えっ?」と僕は思いました。

 お父さんはびっくりした振りをしていたのか?

 僕が外に出てみると、人間は皆ゴリラになっていました。


 黄色の極上のバナナは高値で売られてバナナ城が建てられ、世の中はそこに住むゴリラ王が支配していました。


 気づけば僕もゴリラ、お父さんもゴリラでした。お母さんはすでにゴリラ。

 学校に行ったらみんなゴリラ。可愛いあの子もみんなゴリラ。トラックを運転してるのもゴリラ、自転車を運転してるのもゴリラ。犬を散歩してるのもゴリラです。


 どうすんだこれ!

 これじゃゴリラばっかりじゃないか!

  早く時間よ、過ぎ去れー。

 僕は頭を抱えて部屋に逃げて行きました。

 お母さんがりんごで菓子を焼いてくれました。


「あなたはゴリラのくせにバナナが嫌いなの? 好き嫌いしちゃダメよ」


 だって僕はバナナは嫌いなんだ。

 ハンバーグが食べたい。

 早く人間に戻りたい!


 僕はお風呂に入って、ベッドに潜り込み時が過ぎるのを待ちました。


 次の日、お父さんとお母さんに「おはよう」と言ったら、お父さんとお母さんはまだゴリラでした。


 またなぜか2月29日の始まりです。

 タイムループです。

 僕はゴリラでした。まだゴリラのままなんだなと思ってがっかりした。


 そうだ! 悪い魔法使いがゴリラになる魔法をかけたんだな。


 僕たちは人間であることを止めて、ゴリラになったんだ。


 でも僕は思った。

 人間になってもゴリラになってもやることは同じ。


 朝起きたら、顔を洗う。お母さんの作ったご飯を食べて歯を磨いて、トイレに入ってから僕はランドセルを背負って学校に行く。


 ゴリラになったって勉強はしなくちゃいけないし、お父さんもお母さんも仕事をしている。

 人間はゴリラになっても何も変わりゃしない。

 ただ、ちょっとだけ、僕らは毛むくじゃらになっただけだ。

 ただ、ちょっとだけ、僕らは力が強くなっただけだ。


 僕は学校から帰って来て手を洗い、おやつにクッキーを食べてテレビを見てバカ笑いをした。

 そのあとは、宿題をやってご飯を食べて風呂に入ってまた出る。


 何も変わらないよ。

 人間だろうが、見た目がゴリラだろうが、もう野生を取り戻すことなんかありゃしない。


 ゴリラ革命ゴリラ社会の始まりだ。

 ゴリラ世紀一年。

 でもゴリラ社会は今までの人間社会と変わらない。

 ゴリラになった政治家も、ゴリラになった先生も。ゴリラになった可愛いあの子も何も変わらないんだ。


 でもどうか4年後で良い! 僕たちを人間に戻らせて下さい。


 人間に戻れば僕はバナナ嫌いで珍しいゴリラだと言われるはずはない。

 いつか僕は人間に戻れているだろうか?

 ほんとに僕は、バナナ嫌いをツッコまれる以外は特にゴリラになっても不便はなかった。

 そのうちゴリラでも脱毛とか始まったら人間と何が変わらないんだろう。

 誰だ?

 人間だゴリラだって、名前をつけたのは?

 そもそも僕は人間なのか、ゴリラなのか?

 僕はホントはどちらなんだろう?

 まあ、ゴリラでもいいか。

 時々人間になったゴリラ?

 ゴリラになった時々人間?


 まあ、ゴリラでも人間でも、悪くないかもね。


 だけど僕は今度は主食化推奨バナナから逃げている。

 勘弁してよ〜!


 ――ボンッ!!


 あっ、人間に戻った。



          おしまい♪


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

四年に一度僕ゴリラ 桃もちみいか(天音葵葉) @MOMOMOCHIHARE

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ