四年に一度の魔法

鳴子

四年に一度の魔法

今日は四年に一度のうるう年。だが特別何かあるわけでもないだろう。しかし俺はこの日がとても特別な日だ。なぜなら俺は、このうるう年の日に一回限りの魔法を使えるようになる。その能力を使う人がいるかを探しに家を出る。

 少し歩いて公園に立ち寄ると、一人の女の子が今にも泣きそうな顔でベンチに座り込んでいた。俺は気がつくとと、女の子に話しかけていた。

「大丈夫か?」

「だ、誰!」

 女の子が驚き、声を上げてこちらを向いた。

「いや君が悲しそうにしていたからつい気になって。悪い、いきなり知らない人に話しかけられるのは嫌だよな。どっか行くよ」

 俺は馬鹿だなと思いながらここを立ち去ろうと思ったら

「ちょっと待ってください!」

 と袖を掴まれた。

「知らない人にこんなことを言うのも申し訳ないのですが、少し話を聞いてくれませんか?」

 と言われた。俺はやることもないので承諾し近くのカフェで話を聞くことにした。

「まずは自己紹介からだな。俺は寺田健二、17歳だ」

「あ、はい。私は藤田愛梨です。同じく17歳です」

 年は近いと思っていたが同い年か。それに、改めて見ると可愛いな。……いやダメだな、話に集中しないと。

「で、どうしたんだ?」

「はい……」

愛梨は今日彼氏の浮気現場にばったり遭遇しそのままの勢いでふられたらしい。

「私、あの場面を見てからずっと頭が真っ白になっちゃって……でも、そこにあなたが現れたんです」

「なるほどな。でもそれなら友達とかに聞いて貰えばいいんじゃないかな」

 俺は思ったことを言った。しかし

「いえ、友達にこんな話はしたくないんです。友達には迷惑をかけたくないし、こんな事知り合いには知られたくないから」

 愛梨がそう返して来て続けざまにこんなことを聞いてきた。

「これからどうすればいいんでしょうか? 出会ったばかりのあなたに、こんなことを聞くのは申し訳ないと思っています。でもやっぱり一人じゃ抑えきれなくて……」

そう愛梨は聞いてきた。俺は彼女にふられるとかいう経験はないしな。まぁ落ち込んだ時にでもやることでいいかな。そう思い俺は提案をした。

「良くあるよな、そういう事。まぁ、そういう時は何も考えずに遊ぶのが、一番だと思うぞ。俺はこんなアドバイスしかできないけど。俺も付き合うし」

「遊ぶ……ですか……。まぁ、何もしないよりもマシだと思いますし、じゃあ今日1日よろしくお願いします」

 こんな提案に愛梨は乗ってきた。出会って少ししか経ってないのに、いいのかな。

 それからというもの俺たちは遊んで、遊んで、遊びまくった。ゲーセンに行ったり服を買いに行ったり、それはもうぶっ倒れるくらいに。

 それから公園に戻ってきた。

 「あー疲れたー」

「本当ですね。もうこんな時間ですよ」

「そろそろ帰らないとやばいかもな。少し暗いし家まで送るよ」

「いえそんな、悪いですよ。大丈夫ですから」

 そんな感じで恋人みたいな会話をしていると一人の男がこちらに歩いてきた。

「おい愛梨ー。なんか楽しそうじゃねえか」

「えっ、裕太ゆうたくん! なんでここにいるの!」

「なあ、誰だ。そいつ」

 俺は小声で聞いた。

「今日話した、私の元カレ」

 そういうことか。これは少し様子を見るしかないか……

「なんの用なの?」

「お前のことがやっぱり好きなんだ。だからもう一回始まらないか?」

「ふーん、で、あの女の人はどうしたの?」

「別れてきた。だからもう一度お願いだ」

 俺はこいつやばいなと思いながら聞いていた。今日振った女とよりを戻そうとするなんて。もちろん愛梨も

「あなたとよりを戻すのは無理です。ごめんなさい」

 そう思っていたらしい。当たり前だ。しかし男はその言葉にとてもびっくりしていた。

「嘘だろ、愛梨。お前は俺のことめちゃくちゃ好きじゃねぇか。それなら断る必要もねえだろう」

 本格的にやばいことを言い出したぞ。自分のクズさに気付いてないぞこいつ。愛梨も呆れた顔をしてる。

 少し間が空き愛梨は口を開いた。

「ごめんね。私もう、あなたのこと好きじゃないから。……それに私今この人の彼女だから」

 そう言って俺に飛びついてきた。いい匂いがする。なんて思ってる暇はないな。ここは話を合わせるべきだ。

「ああ、そうだ。俺は愛梨の彼氏だが何か用か?」

 俺がそう言うと男が鼻で笑ってこう言った。

「お前がありえねーお前が愛梨と釣り合うと思うのか」

 それは自分でも思うがお互い様だろ。

 だがどうするか。話じゃ説得できないぞ。……ああ、そういえばあれがあったな。

「ほらこれが証拠だ」

 そう言ってゲーセンで撮ったプリクラや今日撮っていた写真だ。だが、こうしてみると結構距離が近いな。

 だがそのおかげで、この男には効果があったみたいだ。

「有り得ねえ。信じねえぞ。もう俺のところに戻ってきても知らねえからな」

 そう言いながら男は去っていった。俺はそれは絶対にねぇよーと心の中で言いながら見送った。

「ご、ごめんなさい。こんな事になってしまって……」

 男が去った後、愛梨は謝った。

「いや愛梨は悪くないよ。それよりもう帰らないと」

 俺は否定して話を変えた。暗い話のままじゃ嫌だからな。

「そうですね。でも迷惑じゃなかったら、今日は家まで送ってくれると嬉しいです」

「それくらい良いよ。じゃあ行こうか」

 俺たちは帰路についた。

 俺も家に帰ってきてから忘れてはいけない魔法を使う時間だ。俺の魔法は、思い浮かべた人と運命の人をくっつけると言う魔法だ。もちろん使う相手は、愛梨だ。是非とも幸せになってほしい。俺は魔法を使い終わった後は、ベッドに倒れ込んだ。

「はぁー今日は疲れたなー……愛梨、幸せになると良いな‥‥」

 そんなことを思いながら俺はいつの間にか眠りについていた。

  四年後

今年のうるう年は特別だ。うるう年になると魔法を使えるようになるからだろう、だって?そうじゃないんだ。

「おーい健二くーん。早く来てよー」

「ああ、今いくよ。

 純白のドレスに身を包んだ愛梨に俺は返事をした。

 意味はないかもしれないが祈っておくよ。この世界の人全員が運命の人に出会えますようにってね。

 じゃあ行ってくるよ。俺の花嫁が待ってるからな。

 俺は愛梨……愛梨に向かって走り出した。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

四年に一度の魔法 鳴子 @byMOZUKU

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ