4年に一度のニンニクの日!!

なんよ~

にん(2)に(2)く(9)の日に異世界へ

 「創造主の命令は絶対だ!! 君、異世界行って、料理作って来て!! 」




威圧的な幼女は、俺にそう言って、弓と棒をグイグイと渡そうとしてくる。




「弓はまぁ、わかる。だが、なぜに棒なんだ!! 普通そこは剣とかじゃないのか!? 」




幼女は、めんどくさそう顔をして




「いや、だって君の行く異世界は冶金技術がまだない時代だから。」




「あぁ・・・、それじゃあ仕方ないね。」




そう言われたら、納得するしかないよね・・・。忘れでもしたら、オーパーツになっていろいろと問題あるもんな。




「じゃあ、そういうことで、この創造主にニンニク料理を食べさせろ!! いいな! ヨシ! 行け! 」




そう言われて、原始時代の異世界に飛ばされるのであった!!




 目が覚めると、そこ森の中であり、鳥の甲高い声がどこから聞こえてくる。一先ず、ニンニク料理でも作ってみるかと重い腰をあげて、辺りを散策し始める。




トラックに跳ねられて、空を舞っている所に、あの幼女は現れた。そして、時間を戻してやる代わりに、ニンニク料理を作れと命令してきたのだ。




現にこうして、意味がわからない世界に来てる辺り、あの幼女は本当に時間を戻せそうだと思うので、こうして野草などを集め始めようと決心したのだ。




「おおっ! バッケ(フキノトウ)じゃん!! やったぁ!! 幸先いいじゃん。」




幸いなことに、この世界の気候は雪が解け始めたぐらいだったので、山菜が至る所に目を出していた。




そうして、山の中を採取しながら歩いていると、今回のメイン食材のニンニクを発見する。もちろん、スーパーで売ってるあのニンニクではなく、行者にんにく君である。




その葉からは、仄かに独特のニンニク臭さが香ってくる。




「う~~~ん、インスピレーションが湧くぜぇ~~~!! 」




行者にんにくを使った料理が、いくつか思いつく。それから、ある程度とったところで、




 『カサッ・・・カサカサカサッ・・・。』




と何かが茂みの中から出てくる。




ぴょん!! ぴょん!! ぴょん!! と生き良いよく跳ねる野ウサギ君が現れる!! 




その愛らしい仕草に思わず、心を矢で射ぬかれそうになるが、それ以上に食欲君がうまそうじゃねぇ? という答えを提示してくる。




おいしさの前に可愛さなど塵に等しいな。




そうと決まれば、ウサギに悟られぬよう、木陰に隠れながら近づいていき、棒を矢代わりに、弓を構える。狙いを定めて、棒を解き放つ!!




棒は弧を描きながら、獲物に喰らいつく!! 




「ブッス!! 」




辺りに鈍い音が響く。




さっそく、辺りを確認してから兎の遺体に近づく。そこらへんにある木を石で尖らせて、ウサギの動脈部分を突き刺す。




温かな血が吹き出てくる。俺はそれを逆さにしてすべて出てくるのを待つのであった。




兎の血抜きが終われば、解体していく。ナイフはないので、石を砕いて石器を作り、ゆっくりと丁寧に毛皮を剥がす。ある程度のところまで、行けば後はぺろりと剥がれる。




そうして、腹部を裂いて、内臓を傷つけないように取り出せば!! はい、うさぎさん一丁上がり!!




 それでは、さっそく行者にんにくと山菜、ウサギを使った原始的クッキングを開始していく!!




焚火の準備をしたら、まずは、火を起こす。木の棒と木の皮を用意して、きりもみ式で起こしていく。




「オオオオオオオオオオオオオオリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! 」




『スリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリ』




手から火が出るんじゃないかというほど格闘すること、10分ほどで、煙が立ち込め、その種火に息を吹きかける。




「フゥーー! フゥーーー!! 」




そうすると、種火は勢いよく燃え始めて、火と化す。すぐにその火を焚火に点火する。そして、フゥーーー!! フゥーーー!! と空気を送り続けて、焚火が完成する。




燃え盛る焚火の上に大きな石を乗せる。即席のフライパンである。




そこに、石器で根っこを切りとった行者にんにくや山菜を、分厚くきったウサギの肉で巻いたものを乗せていく。




『ジューーー!! ジューーー!! 』




肉と山菜が焼ける良い匂いが辺り立ち込める。




いい焦げ目がつけば、 「ウサギ肉の山菜マキ IN 異世界」の完成である!!




その匂いに釣られたのか、威圧的な幼女が




「ほぉおお~~~。完成したか!!」




と近くによってくる。あまりにも突然のことで俺は思わず、びっくりした。




「どれどれ、ほぉ~~~うまそうな匂いじゃないか!! どれ、君ひとつ毒見してみろ!! 」




創造主(?)の幼女に言われるがままに、料理した肉巻きを一口、食べる!!




「・・・。」




「なんじゃ、うまくなかったのか? 」




そう幼女が問う。うまいとかうまくないとかのレベルじゃない。




「美味・・・。」




ただ、その一言しか表現できないほどに美味であった。それを聞いた幼女神は、すぐに肉巻きを食べ始める!!




「おおおお、なんじゃこれは美味!! 美味ではないか!! 」




そう言って、ペロリと料理を平らげる。あぁん、俺も食べたかったのに・・・。




「う~~~ん。実にうまかった。それでは、約束通り君の時間を一時間、巻き戻そう。」




幼女がそう言うと、木が生い茂る世界が一変、よくわからない景色へと変貌をとげる!!




気が付けば、俺は元いた世界に戻っていた。だが、決定的に違うことはトラックに跳ねられて、宙を舞ってはいないということだ。




「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!! 」




とひとり歓声をあげる!! そうして、俺はタイムスリップで死を回避するのであった。




死を回避した俺は、その直後スーパーに出向き、行者にんにくと豚肉を買うのであった。

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