~幕間~【ニア編】

 私の名前はニア。

 ラクシス帝国のギルドに所属するAランク冒険者。

 かつてはパーティーを組んだ事もあったが、孤立し今に至る。


 Aランクとは言え試験官もこなしている。

 はっきり言って自信がある。


 そこら辺の冒険者になんて負けない自信が。


 Sランク昇格の話もあったが断った。

 日が沈まなければ本来の力は出せない。


 そんな体たらくでは私自身が許せなかったからだ。


 普段からSランクの実力を所持しない限りは上がるつもりは無い。


 試験官を引き受けたのは先代のギルドマスターに恩があるからだ。

 現ギルドマスターのグラリエスの祖父グランドの代に私は死にかけた。


 元々純血のヴァンパイアは寿命が短く魔力はあれど、力も弱く短命だ。


 私は死にたく無かった。

 体に魔族の血を取り入れた。


 直ぐに体は変化し、力が湧いてきた。

 しかし次第に体が魔族の血を異物として拒絶反応が出始めた。


 体の色素が抜け、髪も黒髪から白くなり始めた。


 そんな時にグランドが私に力を与えた。

 グランドの家系は代々"血界守(けっかいもり)"の力を引き継いでいるらしい。


 血界守は血の浄化が出来る。

 体外に流れ出て空気に晒され侵食された血液も浄化し体内に戻せるらしい。


 その力を使い私の中の魔族の血を浄化して私に適合する様にしてくれたのだ。


 魔族の血が馴染んだ私はフードを被り直接日に当たり続けなければ大丈夫なようになった。


 体も丈夫になり、人間の寿命よりも遥かに永く生きられている。


 グランドを看取り、仲間を看取り。

 長い時間独りで生きてきた。


 これからも独りで生きていくつもりでいた。



 だがある日試験官として同行する相手に気圧された。

 初めてだった。

 今までAランクの昇格試験を受ける者の中には私を超える者は居なかった。


 しかし彼は違った。

 最初から私を超えていた。


 底知れぬ力を持つ彼に惹かれた。


 同行し試験官として振舞おうとしても意識してしまう。


 試験中も私を助ける。

 私が足を引っ張ってしまう。




 そして死にかけた私を助けてくれた。



 その時に何かが私の中で弾けた。



「この人なら…」と。



 私の中で服従した。

 今までのプライドをへし折られた。


 しかし嫌では無かった。

 むしろ嬉しかった。



 この人に着いていきたいと。

 何をされても、私は喜んでしまう。



 彼は私の御主人様になった。

 御主人様は冷たく突き放しながらも温かい。


 御主人様の仲間に向ける表情は温かく優しい。



 私は利用されるだけでもいい。

 御主人様の駒として動けるならば。



 私は永く生きすぎた。

 もし我儘を言えるならば…。




(最後は私を殺して下さいませ神威様…。)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る