第8話 2048年 3月某日

「この子か?」

「えぇ…42番目のVAMPです」

 カプセルの中で眠っている少女を防護服を着た2人が眺めている。

「華奢だな…大丈夫なのか?」

「問題ないさ、見た目はコレでも、すでに化け物なんだ現段階で食物連鎖の頂点にいるのはコイツ達VAMPなんだ」

「そう思うと、恐ろしくもあるがな」

「せめてもの救いは、人肉を漁らず、短命だという点さ、まったく上手くできてるよ」

「Covid-19…これすら計算の内だったのかな?」

「さぁな…中国がNOAから供与されたらしいが…元々、NOAは古代遺跡からオーバーテクノロジーを入手しては人体実験していたっていうからな、あながち偶然とも思えない」

「それならARKだって…同じだろ?」

「都市伝説レベルの話じゃぁな~、我々、研究者がこんな話をしているようじゃ…世も末だな」

「都市伝説レベルの情報でよければ、NOAは化学を、ARKはオカルトを主軸に置いている点で似て非なる組織なんだそうだ」

「じゃあ…VAMPは…NOA寄りってことか?」

「だから中国でNOAが…なんて話が出てくるだろうな」

「つまり、コイツは化学が産んだ究極の免疫…いや抗体ってことなのかな?」

「Covid-19は単純に老人と病人を無作為に間引くだけかと思ってたんだがね…その続きがあるとは」

「いや…Covid-19は、それだけさ…むしろ感染者に投与された『タナトス』コレが変異体を産むんだ、Covid-19と共存を選んで変異した状態がVAMP…ってことだろ?」

「いやいや…VAMPは、『SMP』を駆逐するために変異するんだ、先に出現したのはStarve Mutant Phenomenon、飢える変異体現象…まったく、急速に身体を変化させていくのがSMPで、それを食うのがVAMP…」

「Covid-19の特徴でもある変異し続けるってのが、人体を変化させちまうんだから驚きだよな」

「考えようによっては…Covid-19に打ち勝ったってことでもあるんだがな」

「死の向こう側…ってことか?」

「さぁな、俺なら辞退したいね」

「始めようぜ、この娘をアッチ側へ送らねぇとな」

「ミラーワールド…『ラプラス』か…それこそ、この世の向こう側だな」

「向こうで、一人前の戦士になれば内閣府に納品…使用期限は5年ほど…」

「交換、返品不可ってな」

「哀れだよな…この歳で、もう…SMPを食うためだけに生かされる…用事が無ければ、アッチ側か」

「アッチ側…案外、楽しいのかも知れねぇじゃねぇか」

「なわけねぇだろ…持ち込める物すらないんだ」

「ラプラスの描いた世界…どんな世界なんだろうな?」

「さぁな…回避するためシステムってくらいだ、ロクな世界じゃねぇんだろな」


 少女の入ったカプセルに『ARK』のロゴが刻まれていた。



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