第4話 女子に吊るし上げられる!

 ファンシーショップは週に三度午前中に回る様にしている、午後だと学校の人に会うかも知れないから。


 ところが今日はいつものファンシーショップで急遽アルバイトを頼まれた、アルバイトの一人が熱を出して来れなくなって三時まで店長しかいない、店長というのはこの店にマスクを置いてみないと言ってくれた何時もの若い女性、この年で店長なんだ。


 驚いていると、

「店長って言ってもうまく使われているだけよ、店長だからバイトのシフトは任せるとか、万引きされたらあなたの責任とか、当然売り上げが下がったりしたら給料カットとかほんと普通のバイトの方がよっぽどマシよ、今日だって誓君が手伝ってくれなかったら3時までお昼抜きよ、手伝う気になったでしょ」

 そこまで言われたら手伝うしかない、それにいつの間にか誓君になってるし。


 それで陳列の整理とか、時には見習いでレジをやってみたりしてそろそろ3時アルバイトは終わりだ、と思ったとき「バシッ」後ろから強烈に頭をはたかれた。


「お前学校サボって何やってる」

 ほんの一時彼女だった太知たいちさんに胸倉を握られつるし上げ状態。

「ああの手伝いを頼まれて」

「ちょっと止めてください、うちにアルバイトに何やっているんですか」

(やっぱり女性は強い)


「へえ学校も行かずにアルバイト、可愛いお姉さんにちやほやされて鼻の下伸ばしていい身分ね」

「えっこの人学生さん、暇そうにしてるから大学浪人かと思ってた、高校生なの」

「そうですよ、○○高校一年一組岬誓、好きなものは男の子、一週間も登校しないで不登校、そうだった男の子好きの岬君は女の子には興味ないんだった、残念でしたー」

「だ、男子なんてき嫌い」

「無理しなくて良いのよー、私より彼の方が好きなんでしょ」

「違う、あれはからかわれただけ、いつもホモとかオカマとか言われて、男子なんか大嫌い」


 お店の人は早坂さん、早坂さんが僕の前に立って、

「そうみたいよ、この子優しすぎるのよ、私でもかわいそうで放っておけなくてアルバイトでもしてみたらちょっとはマシになるかなって手伝ってもらったの」

「だったらどうしてあの時逃げたの、お前なんか嫌いって言ってやれば良かったのよ」

「ちょっと、ぽんぽん言いなさんな、あなた名前は」

太知たいち 太知美和みわ、岬君のクラスメイト」

「そうなの岬君のクラスメイト、見てられなかったって事ね、この子はそう言う事が言えない子なの、男子恐怖症というかまあ苦手なんでしょ」

「って言うか男子が来たら急にオカマ言葉になちゃって言いなり、そっちの方が良いのかと思った」

「ごめん、何もいえなくなってしまって、情けなくて、、、」

「ともかく喧嘩は止めて、どうする一緒に帰えってもいいけど」

「あっ、そんなんじゃないです、でも話が有るから」

「じゃあ岬君これ今日のアルバイト代と売り上げ分、オーダーはメールするから」




 同じビルの喫茶店。

「今日はおごりなさい、収入有ったでしょ」

「う、うん」

「何時からアルバイトしてるの」

「いや今日だけ、いつもはマスク置いてもらって、、、」

「置いてもらってるってどういう事?」


 ウエイトレスさんが来たので一時中断。


「お店にマスクを預けて売れた分の五割を貰うんだ」

「五割、いくらで売れるの」

「一枚五百円」

「じゃあ一枚売れたら250円、いい収入ね高校生やってられないわね」

「でも材料費200円くらい掛かる」

「はあじゃあ正味残り50円、やってられない、もっともらわなきゃお店は置いてるだけなんだから」

「素人なんだからそんなモノでいい、材料費半額にしてもらってるし」

「そお誓が良いというなら私は構わないけど、でもなんかやな感じ、うちのバイトです、フン私は彼女ですって言ってやれば良かった」

「えっ嫌われたんじゃ」


 間が開いて、

「確かに裏切られたと思った、でもね話を聞いてみたら思い当たったの」

「???」

「弟、ちょっと前まで情けない弟だった、いつもお姉ちゃんお姉ちゃん、嫌になるくらい、でもね弟が中学に入ったら急に生意気になって、くそ姉とか男姉≪おとこねえ≫とかひどい扱いよ、それが高校に入ったら昔のまんまの弟が居たの、私頼られるのが好きなのよ、だからかわいい弟ゲットしたって喜んでたら、オカマかよってショックだった、違うんでしょそこはっきりさせて」

「うん違う男子は苦手、だからデザイン科を選んだんだ、できれば男子がいない方が良かったけど」

「それはそれで問題だけど、まあいいでしょ、だったら宣言するけど私の彼に手を出すなって」


 うなずいてから、「助かる」

 そういうと太知さんはにっこりして、

「よし彼だけど弟扱いだから私はちかいって呼ぶ、誓は二人だけの時はお姉ちゃん、学校では『たいっちゃん』分かった」

「う、うんお姉ちゃん」

「なににやついてんの」

「こういうのが良いかなって」

「ま、まあそうね、それで学校どうするの」

「行くよお姉ちゃんが居てくれたら怖くない」


 たいちゃんは自分だけが頼んだホットケーキをフォークにさして僕の目の前に声には出さず「食べる?」って感じで差し出す。


 口を開けたらスッと自分の口へ運んだ。


 ニッコリ笑って、

「よっし、なんだけど知らないの?明日から二週間休校コロナが流行っているから」

「えっ休校、、、あー」

「どうしたの?」

「せっかく学校へ行こうって気合入れたのに」


 たいっちゃんは自分が齧ったホットケーキの小さな残りをまたまた僕の目の前に差し出した。(遊ばれている、よーし)


 僕の目の前でヒラヒラさせているホットケーキをパクッと口に入れた。


「わっやっちゃった、間接キッス、やだどうしよう、ず、ずるいわ私を油断させておいて、まっ、お、弟だから許してあげるけど」

(あれすごく動揺している、とっくの昔にあんなことこんな事やっちゃったなんて自慢そうにみんなの前で話していたのに)


「そ、そうだ勉強見てあげるからうちに来なさい、二週間分遅れているでしょ、そ、その後二人で良い事しよう」

(動揺引きずったまま)


 「えっ行ってもいいの、だけど、、、マスクのオーダーたくさん抱えてる、学校始ままる前に何とかしないと」

「そんなに、解決方法は?」

「ミシン、今は手縫いだから手間が掛かって」

「ミシンならうちで寝てるけどだれも使わないから」

「お姉さまミシンを貸して」

 思わず<たいっちゃん>の手を握っていた。

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