第3話 追いつかない!

 お母さんはスーパーで惣菜を作っている、今は朝の8時に出かけているけどお店としてはもっと早く来てほしいそうだ、ただ学校へ行く子がいる(行ってません、ごめんなさい)ので今は無理と断っているらしい。


 それでそのお店でもマスク不足が続いているらしい、ガーゼマスクはお店用。

 その日の注文は暫定20枚、全部同じ白のガーゼハンカチ、とりあえずマスクのない人のオーダーらしい。

 そのうち10枚程は明日持っていきたいと特急の注文。

 これから作らねば。


 それとは別にミッフィーのマスクが大受けしたそうだそれで完全オーダーメイドの個別注文も受けてきた。

 それが中々厄介なオーダー、シャムネコ、黒猫、三毛猫、猫が多いのはきっと猫の話題で盛り上がったのだろう。



 今日は材料集めで朝からお母さんの勤めるスーパーへ電車で向かう学校と同じ市なので定期券が有る、何でもそろう大きなスーパーだし。


 そんな柄うまく揃わないだろうと思っていたらファンシーショップ(当然女子向け)にあるある沢山の猫さんハンカチ、ここだけで揃うかも。


 しかしお母さんちゃんと言ってるのかな見掛けだけのマスクだと、効果は疑問、まあとにかく着けておかないと非難されるのでそこは考えないことにする。


 そしていろんな柄のハンカチを手にレジに並ぶと、(冴えないTシャツに怪しげな自家製マスクで)

「そのマスクいいですねどこで買ったんですか」

「え、えっと自家製です」

「もしかしてこのハンカチもマスク用ですか」

「えっとそうみたいです」

(ああもっとしっかりしろ自分)


「家の人が縫ってるの」

「そう、そうです使いぱしりです」

「今度そのマスク一つか二つ持ってきて貰えない、売りものに成りそうか検討したいの」

「えっ売りもの?素人ですけど」

「それが良いの、ぜひお願いします」

「はあ、はあ」


 なんかおかしなことに成ってきた、まあこの時期だけの小遣い稼ぎって事で、家計の足しになればいいけど。


 そして翌日もさらにガーゼマスクと特注マスクの注文が増えている。

(こなせる?)


 お母さんは原価も考えず特注マスクを300円で請け負っていたらしいけど相手の人が、これ300円じゃ手間賃でないでしょ、500円にしなさいと言われたらしい。

 それで僕に「柄物のマスクっていくら掛かってるの」って聞いて来た。


「ハンカチが200円から300円もうちょっと高いのもたまにあるけど、ゴムとかインナー(フイルター入れる様にした)を入れたら400円くらいかな」

「えっ赤字じゃないくたびれもうけだわ」

「あーでもお金残ってる大した額じゃないけど」

「ゴメンお小遣いくらい出る様にするわ」


 それでファンシーショップでも置いてもらう事に成った、ただこっちはお店が買い取るのではなくお店で売れた分だけが売り上げ、それでも一日に10枚ほどは売れている、一枚500円で。


 半月が経った、お母さんの方はもう行き渡ったらしく注文が無くなった、お店にも従業員の分は確保される様になったらしい。


 だけどファンシーショップの方はまだ好調が続いているし、お店のつてで他の店にも置いてもらえる様になった、そして「もっと他にも欲しいのよ、テーブルクロスとか枕カバーとか、それからこのお店のキャラクターも考えて欲しいの」


 あれ僕は何をやっているんだ、一時だけのアルバイトみたいなものじゃなかった?

 当然の事このひと月程勉強も手に着いてない。

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