雑魚スキルと言われるスキル、実は最強(カクヨム版)

紫月やゆ(活動停止中)

第一章

❏ プロローグ

 気が付いたら奈落に落ちていき、どんどんと遠ざかっていく。手を伸ばしても届くわけがない。


 現実ではありえない非日常な世界で起きた出来事に三島博樹みしまひろきは呆然とする。


 博樹は勇者召喚に巻き込まれたとしか言えない、低いステータスからのスタート。何故、圧倒不利な状況で始まりこうなったのか――


 ◇


 一学期終業式。それは誰もが喜ぶであろう夏休みの始まりの日。きっと多くの人々はこの長期休暇を楽しみにしていたであろう。


 そして、三島博樹もその一人である。ただし、学校の奴らからの解放といった面だが。


 博樹は基本的に夜遅くまで起き、アニメやゲーム、漫画、ラノベを見たり読んだりしている夜行型の人間だ。いつも睡眠時間が短く、学校に行く前はエナジードリンクを飲んで何とか持ちこたえる悪循環。世間では廃人という人間だ。


 博樹はいつものようにギリギリに学校に登校し、憂鬱な気分で教室の戸を開け、そのまま机にうつぶせになり寝る。


 そんな、博樹に友好的にかかわる奴は片手で数え切れてしまうほどのごく少数。


 もともと友人関係がめんどくさかった博樹は必要最低限の友達しか作ってない。


「博樹。また、ゲームしてたのか?」


 前の席の椅子に座りながら一人の男子生徒が博樹に話しかける。男子の中では珍しく唯一の博樹と仲の良い例外の生徒である。


 その名は長江優生ながえゆうせい。昔からの博樹の親友だ。黒髪黒目という一般的な奴で、明るい性格だ。


 百六十センチという男子の中では小柄だが、剣の腕は凄まじく剣術では達人レベルいう大物。だが、勉強面では授業を聞いていない博樹より壊滅的という一点特化型だ。


「博樹、もうちょと早く来たらいいのに」


 この学校内では三大美少女と言われる瀬角菜央実せすみなおみが何故か親しげに話しかけてくる。


 肩まで届くくらいの艶やかな黒髪にクリクリした大きな瞳を持ち、身長百五十センチというかわいい系の女子である。


 成績優秀・容姿端麗ときて生徒会長までする非の打ち所がないため絶大な人気を誇り、女子からも頼られる校内の有名人である。


 何故、この学校のマドンナ的存在が博樹に話しかけてくるのか。それは幼馴染だからだ。


 だが、博樹は無視をする。親しげに会話しているとほかの男子生徒から反感を買い、トラブルに巻き込まれるからだ。体育館裏とかに呼び出され、殴られることを考えると恐ろしい。美少女を見つけると男は戦争になるのだ。


 それを分かっているのか長江も瀬角と会話せず、博樹と話をしていく。


「ちょっとぉぉ。ねえぇ!」


 会話に入れてほしいのか頬を膨らまし、博樹の体をゆする。こんなかわいらしい姿を見せるのは幼馴染の長江と博樹だけであり、他人からとても羨ましいがれ憎まれる。


 正直、迷惑だと博樹は思っている。何故なら他の生徒からの視線が怖く、背筋に悪寒が走るほどだ。


「三島と長江は瀬角さんと関わりすぎだ。瀬角さんが困ってるだろ」


 真打登場と言わんばかりにクラスのイケメン松平修也まつだいらしゅうやが顔を挟んでくる。多分、正義感のつもりでやったのだろう。うぜぇ。


 その時、きっと博樹と長江は心の中で関わってねえわぁぁぁぁぁ! と叫んでいただろう。


「じゃあ、場所変えて話そっ!」


 今度は瀬角の友達の真野由香まのゆかがナイスな発言をする。


 というか、真野はマジでどっか行けと博樹は毎度のことながら思う。


 真野もかなりの人気を誇るかわいい系の女子のため関わりたくない。それも一つの理由だ。だが、俺は知っている。こいつが超腹黒いということを。それを知っていると、関わりたくないのだ。


 ◇


 ようやくみんなが離れ一息つけるようになったが、他のクラスメイト達は騒いでおり寝れない。すると、


「博樹。床にこんなのあったか?」


 長江が急に口を開く。


 博樹は何だろうと思い、床を見たら魔法陣が描かれていた。魔法陣は教室全体に描かれており、ヤバいと思っても疲労で逃げようにも体が動かない。


 魔法陣は複雑な模様を光らしだす。流石に全員、気が付いたようで誰かが「逃げろっ!」と叫んだがすでに発動していた。魔法陣の光が教室で埋めつくし、体が宙に浮く感覚に包まれた。

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