15

私は姉の白くて綺麗な手を思いだした。

そしてその手を辿って、一緒に遊んでいた幼い日々を思い出した。


姉だって、とても綺麗な絵が描ける人だったのだ。

優等生でもそうでなくても、彼女は存在して良かったのだ。

そんなこと、私はちゃんと分かっていたのに。


『どうしてちゃんと伝えてあげるこができなかったんだろう。』


通帳の上に、瞳から雫がこぼれて落ちた。





『お姉ちゃんの、あのやさしい笑い声や、私の名前を呼ぶ声を、私はもう二度と、絶対に聞くことができないんだ。』





急にそのことを実感して、唇が、手が、わなわなと震えだした。





               「お姉ちゃん」






    私は両手でぎゅっと手紙を抱きしめて、声を上げて泣き崩れた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モモ @haruka1007

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ