第二十二章  林檎とたんていごっこ

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 ある朝のこと。




 『おねえちゃんへのちょうせんじょう


 このなぞをといてりんごを見つけてみよう』




「何これ」


 シャワーを浴びて身支度をしていると、このような書置きがテーブルの上に残されていることに気づいた。

 明らかに林檎の字だ。

 濡れた髪をタオルで拭きながら読んでみる。



『したはおお火じ うえはこう水 どこでしょう』



 さすがは小学一年生というところか。全く、このような太古の昔から使われてきたなぞなぞでこのわたしに挑戦してくるとは。

 しかし挑戦状と聞いたら無性にわくわくしてしまうのが推理小説マニアの性だ。




「あれ?」


 しかしながら、大浴場には誰もいなかった。


「林檎、ここじゃないの?」



 下は大火事、上は大洪水といえば、お風呂を指すのではないのか?


「ん?」



 奥の壁に紙が貼り付けてあるのに気づいた。




『土ようびのよるにいったばしょ』


「土曜日の夜……」




『お日さまとお月さまのみえるばしょ』


『金ぴかのなかにかくしてあるよ』

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