「地獄」「幻」「伝説の大学」

 こんな幻を見た。


 私がウェルギリウスと地獄巡りをしていると、唐突に彼が言った。


「ダンテよ、君はボローニャ大学に在籍していたそうだが、遥か東洋に『伝説の大学』なるものがあることを知ってるかね?」

「おおウェルギリウス、その噂は私も聞いたことがあります。何でもランダムに選び出した三つの単語を元に、ごく短めの掌編を創作するのが日課だとか」


 ウェルギリウスは鷹揚おうように頷いた。


「その大学に出資をしてる黒幕が、ラテン語の『vulpes(ウルペース)』を名前に冠した人物だという。複数の人物が集まる組織の通称だとも言うが、詳細は不明だ」

「vulpes・・・。長編詩の『イセングリムス』を思い出します。あの狼を完膚なきまでに退治する動物ですね」

「その通りだ・・・コンコン」


 ウェルギリウスの話す言葉に違和感を感じて彼の顔を眺めると、彼の頭に獣のような耳が生えていることに、私は気づいた。

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