忍び足

@Zeble

第1話

「ほらな?」


忠告を無視して、さとるが大声で叫ぶ。その瞬間、未來みらいの心臓が高鳴る。しかし、何も起きない。

当然といえば当然だ。

[音を立てたら死ぬ]なんて、まったく信じられた話ではない。先ほどまでシャワーを浴びていたはずだが、風呂場で寝てしまったのだろう。


未來はホッと息を吐き、4階社会科室を出る悟たちの背中を追う。


『パンッ』


凄まじい音が、教室に響く。

その瞬間、未來の目の前が真っ赤に染まった。鼻を突く鉄の酸っぱい匂い。血の香りだ。


教室を一歩出た悟の身体が止まる。

頭を無くしたその身体は、膝から崩れ落ち、廊下にヌメり気のある鮮血を広げた。


「キャー!!」


その真後ろに立つ美少女、鈴音が悲鳴をあげる。

そして、未來は見た。悟の亡骸の前に佇む、顔の見えない少女の姿を……


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