第4話 再会 その2
紗季が窓ガラスを壊したあの日、俺たちが祐介さんから告げられたのはこんな言葉だった。
「それじゃあ窓ガラス割った罰として──長谷川、お前コイツの手伝いしてやってくれ。期間は学園祭が終わるまで。依存はないよな?」
たったその一言で俺の日常はたちどころに変化した。
一日の授業が終わって、天文部の部室(通称、物置小屋)に行くと、
「遅かったねハカセ。さ、今日も一日頑張ろー!」
なんて笑顔と一緒に紗季が出迎えてくれていた。
臨時とはいえ紗季が加わったことで、一人だけの天文部も賑やかというか、騒がしくなった。俺と紗季は別々のクラスだったから、お互い顔を見たことはあっても直接話すことはこれが初めてだった。なのに、紗季は元来そういう性格なのか、出会って早々に俺のことを『ハカセ』なんてみょうちくりんなあだ名で呼び始めた。理由は星に詳しいからハカセにしたということだった。
ずいぶんと馴れ馴れしい奴だと思っていたけど、それも最初のうちだけ。気が付けばお互い『ハカセ』『紗季』と呼び合う仲になっていた。
「んもー、ハカセがちゃんとしてないからじゃない。そういうことならそうと前もって言っておいてよね」
「んなこと言ったって俺だって他にもやることあったんだ。無理言うな」
とはいえ、顔を突き合わせればこんな調子で言い争ってばかりいた。その度に周囲は夫婦漫才だとか、相変わらず仲いいなお前らとか、好き勝手言ってくれていた。さすがに、これで仲がいいと言えるのかどうか怪しかったが、割とこんな毎日が楽しくもあった。
夏が過ぎて、次第に学園祭が近づいてくると、学校内の雰囲気も学園祭のそれへと変化していった。どのクラスや部も泊まり込みで出し物の準備に追われていて、学園祭に向けてプラネタリウムを作っていた俺たちも同様だった。
クラスの出し物とはいえ、ある程度形にしないとクラスで制作できなかったこともあってか、プラネタリウム制作のほとんどは、俺と紗季の作業によるところが大きかった。だから自然と二人っきりで過ごす時間も多く、そのお陰なのか出会ってからひと月ぐらいしか経っていなかったはずなのに、その頃にはすっかり長年一緒にいた友人みたいな気持ちになっていた。その頃からか。俺が紗季をただの同級生から一人の女の子として意識し始めたのは──。
そんな中、俺は紗季が同じ学校の先輩に告白されているのを偶然見かけたことがあった。相手の方は学校の女子から結構な人気があった先輩で、いろんな女子から告白されているというのを噂で聞いたことがあった。けれど、その先輩がまさか紗季に告白するなんて誰が思うだろうか。
とっさに物陰に隠れて様子を伺っていると、わずかだが話し声が聞こえた。
「どうしてなんだ!? 俺はずっと君のことが……」
「先輩の気持ちは嬉しいです。でも、わたしには他に好きな人がいるんです」
「好きな人? 誰だそいつ」
「秘密です。でも、その人はいつも一つのことに夢中になってて、きっとわたしのことなんてこれっぽっちも気にしてないんですよ」
「じゃあなんで」
「それでもわたしはその人の側にいたいって思うからです。だからわたしは先輩とお付き合いすることは出来ません」
そしてもう一度「ごめんなさい」とだけ告げると紗季は先輩の前から去っていった。一人残された先輩は断られたことがショックだったのか、うなだれてしばらく動かなかった。もちろん、それは俺も同じだった。
紗季に好きな人がいる。その事実が俺の心を強く締め付けた。
紗季と二人きりで作業するたびに、あの時見たことを問いただしたい、そんな気持ちでいっぱいになった。けれど、それを聞くことは一度も出来なかった。
それからあっという間に学園祭。クラスの出し物のプラネタリウムもいろいろあったが無事に成功し、晴れて紗季の罰も終りを迎えたその日、俺たちは初めて普段立ち入ることの出来ない学校の屋上で夜空の星を眺めていた。
「とりあえずお勤めご苦労様でした」
「なんだかそう言われると、刑務所から出所してきたみたいな言い方じゃない」
「実際そうだろ。お前が窓ガラスを割らなきゃこんなことにはならなかった」
「それもそっか」
「ま、なんにせよお疲れ様」
ビールの代わりにジュースが入った紙コップで乾杯すると、紗季が照れくさそうに微笑んだ。
「学園祭終わっちゃったね」
「あっという間だったな」
長いように見えたこの一ヶ月も、過ぎてしまえばあっという間だった。
時に笑い、時にぶつかりあい、時に励ましあいながら駆け抜けた時間。その全てが今日で終わった。明日になればまたもと通りの日常が帰ってくる。そうなれば紗季は俺の横にいない。
わかってる。
わかっていた。
もともと学園祭が終わるまでの話だった。
なのに、俺はそれがたまらなく嫌だった。
「見て見て、キャンプファイヤーやってるよ! いいよね~、なんだか青春って感じでさ」
グラウンドに焚かれた炎を見て紗季がはしゃいでいた。紗季のいつでもキラキラと眩しく輝く瞳には今、なにが映ってるのだろう。その瞳に映る未来にはいったい誰が──。
「あ、あのさ」
そう思うと、考えるより先に言葉が出ていた。
「んー、なにー?」
「あ、えと……」
お前このまま天文部に入らないか?
そう言えたならどんなに気が楽だったろう。でも俺にそれを言う勇気はなかった。紗季には紗季の時間がある。
そして俺には俺の──。
「どうしたの? なにかあった?」
「いや……なんでもない。それより、ジュースのおかわりいるか?」
「うん、もらおうかな」
俺はこの時ほど自分が情けないと思ったことはなかった。
結局、そのあともなにも言えずに、俺たちの学園祭は幕を閉じた。
──それから一週間。
ようやく学園祭の余韻も薄れてくると、学校内に流れる空気もいつもどおりに戻っていた。ただ違っていたのは、前までなら『宮野』と呼んでいたクラスの連中が俺のことを『ハカセ』と呼ぶようになり、今まであんまり話したことのない連中ともずいぶんと仲良くなった。
嬉しい変化だったと思う。
だけど、それとは対照的に、俺は抜け殻のような毎日を過ごしていた。
学園祭が終わってからというもの、俺は一度もあの物置小屋に立ち寄っていない。
原因はわかっている。ただそれを認めるには俺はまだ大人になりきれていなかった。
今日もまっすぐ家に帰ろうとすると、不意に呼び止められた。
「おい、そこのサボリ魔」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには祐介さんの姿があった。
「祐介さん」
「翔吾、学校では椎名先生と呼べって言ってるだろ」
「そうだった。ごめん祐介さん」
「お前、わざとやってるだろ?」
「次からは気をつけるよ。それで俺になにか用?」
「お前、ここ最近部室に顔出してないだろ? たまには学生らしく部活動しろよ」
「活動って、たった一人しか部員がいないのに部活動もなにもないと思うけど。それに天文部だし」
そう言うとなぜか祐介さんは不思議そうな顔をしていた。今の言葉にどこかおかしい点なんてあっただろうか。
「なんだお前知らないのか? てっきり俺はもう知ってるもんだと思ってた」
「なにを?」
「まぁ口止めされてたから黙ってたんだけど、部室にはな──」
祐介さんからもたらされた事実を聞くなり、俺は走り出していた。背後から「おい翔吾! 廊下走んな!!」と祐介さんの怒鳴り声が聞こえてきたけど、それすらどうでもよかった。
廊下を駆けると開かれた窓から吹奏楽部が奏でる音色や、野球部の掛け声が聞こえてきた。それらがまるで俺を後押しするように聞こえた。
階段をひとっ飛びで駆け上ると、体中が酸素を求めて息を荒くした。
早鐘を打つ心臓が痛かった。もしかしたらそれは全力で駆けているせいだけじゃないだろう。
なぜ。
なぜ?
なぜ!?
俺の心はたくさんのなぜ? で埋め尽くされていた。
もちろん答えなんか出ない。だったらその答えは“あいつ”に聞けばいい!!
バダン! と物置小屋の扉を開け放つ。
「おい紗季!!」
「お、やっと来た。ずいぶん遅かったね。一週間も部活サボるから今日も来てくれないかと思ってた。あ、オレンジジュースあるけど飲む?」
「助かる。全力で走ってきたから喉渇いて……じゃなくて、紗季、なぜだ!?」
「な、なに!? そんなに息荒げて……とりあえず落ち着いたら。はいオレンジジュース」
「ああ、ありがとう……って、これが落ち着いてられるか! な、なんで、なんでお前がここにいるんだよ!?」
「なんでって、わたし天文部部員だから」
「は!? 天文部部員って、お前ソフトボール部員だろ!」
「あー、それね。辞めちゃった」
「辞めたって……はぁ!?」
もう頭がこんがらがって、なにがなんだかわけがわからなくなっていた。
「と、とりあえず落ち着け」
「わたしは落ち着いてるよ。落ち着いてないのはハカセの方じゃない」
「そ、そうだな、うん。とりあえずだ、とりあえず聞きたいことがいくつかある。お前、なんでここにいるんだ?」
「なんでって、天文部部員だから」
「いや、だからなんで」
「ソフトボール部辞めてここに来たから」
「だからなんで」
「なんでって、そうしたかったから」
「だから」
「あーもう、面倒くさいなー。とりあえず順を追って話してあげるから、まずは座ったら?」
「……」
……もう本当になにがなんだかわからなかった。
紗季は学園祭のあと、所属していたソフトボール部を辞めて、この誰もいないはずのこの場所で、ずっと俺が来るのを待っていた。紗季になんでソフトボール部を辞めたのかと理由を尋ねると「ま、それはいいじゃない」とはぐらかされてしまった。なにか彼女なりに言いたくない事情があったのだろう。
「というわけでわたしも晴れて天文部部員だから。よろしくね部長」
「よろしくって、俺はまだ入部を許可した覚えはないぞ」
「あれ? 椎名先生に言ったら二つ返事でオッケーもらったよ」
「あんの野郎……」
出来るだけ口汚く罵ってやると、してやったりと笑う祐介さんが脳裏に浮かんだ。とりあえず言いたいことは山ほどあったけど、それはまた今度言おう。
それよりも、だ。
「なんだってこんな部に入ろうと思ったんだ?」
いろいろありすぎて一番気になっていたことを聞くのを忘れていた。そもそも、なんでこんな部に……。
「なんで、か。なんでだろうね」
「わかんないのかよ……」
「理由がわかんないわけじゃないんだけど、なんて言えばいいのかな」
そう言って紗季が言葉を区切る。
窓際に立つと、じっとグラウンドのほうを眺めていた。窓から差し込む夕日に照らされたその瞳は、どこか切なく、どこか憂いに満ちているようにも見えた。
思わず俺が「紗季」と呼びかけようとして、紗季が振り向いた。
──満面の笑みを浮かべて。
「もう少しだけ……もう少しだけさ、ハカセといたかったからじゃ……ダメかな?」
その時の俺はどんな顔をしていたのだろう。
笑っていた?
それとも呆れていた?
そのどちらでもないかもしれない。ただ一つ思ったのは──、
「……なんだよそれ」
「あはは。ま、そういうことだから。これからもよろしくね」
「……ったく、学園祭も終わってやっと落ち着けると思ったんだけどな」
「そうはさせないよ。わたしが来たからには退屈な日々はないと思いたまえ」
「退屈じゃなくて災難の間違いじゃないのか?」
「ふふ、そうかもね」
そう言って紗季がいたずらっぽく笑った。
こうして、たった一人しかいなかった天文部に新しい部員が加わった。
名前は長谷川紗季。
俺に『ハカセ』なんて変なあだ名をつけた張本人。
そして──。
「よし、部員も増えたことだしさっそくなにしよっか?」
「そうだな……とりあえず、片付けからするか」
「うげー……わたし片付け苦手なんだよね」
「部長命令だ。文句言うな」
「はーい」
一人では広すぎた部室も、二人になると随分にぎやかになった。
本当……退屈しなさそうだ。この時の俺は紗季と再び一緒にいられることを、ただ純粋に喜んでいた。
店を出ると、暑くもない、寒くもない、初夏特有の生ぬるい風が頬を撫でた。人で賑わっていた町もすっかり静けさを取り戻して、夜の中にポツポツとだけ明かりが灯っていた。
そんな中、俺たちはすっかり暗くなった町をさまよい歩いていた。というより、紗季が調子にのって飲めもしないビールを飲みすぎたせいで、身動きがとれなくなったというのが正直なところだ。
「ういー……。飲みすぎた……」
「おい、しっかりしろよ。大丈夫か?」
「あー、大丈夫大丈夫……」
「ちっとも大丈夫じゃないだろ。ほら、そこ座れ」
千鳥足で、あちこちふらふらと動こうとする紗季をおさえる。近くにあったベンチに寝かせるとようやく大人しくなった。
「ありがとー……。ハカセは昔から気が利くね……。よ、色男……」
「思ってもないお世辞はいいから。さっきそこで水買ってきたからこれでも飲め」
「面目ない……」
紗季に水を渡すと、ゆっくりだけど飲んでくれた。それからしばらくすると、落ち着いてきたのか、わずかだけど声に元気が戻っていた。
「どうだ調子は?」
「さっきよりマシかな……。ごめんね、久しぶりに会ったのに迷惑ばかりかけて……」
「気にするな。お前が俺に迷惑をかけることなんて今に始まったことじゃないし、それにそんな状態の奴をほうってなんかおけないだろ」
「あはは……優しいねハカセは」
まだ辛いはずなのに、紗季が笑ってみせる。昔っからこういうところだけは変わらない。
こうやっていると、まるであの頃に戻ったみたいだ。あの楽しかったひと時のように。
「なぁ、紗季」
「……なにー?」
「お前……いや、なんでもない」
俺は口を突いて出ようとした言葉を無理やり飲み込んだ。
「……どうしたのハカセ?」
「なんでもない」
「……なんでもないって、なにかわたしに聞きたいことがあったから聞いたんでしょ?」
「なんでもない」
「……もう、ハカセって昔っからそうだよね。なにか聞こうとしてすぐに言わなくなっちゃう。変わってないねそういうところ」
「……」
変わってないのはお前もだろ。そう言いたかったけど、あえて言わないことにした。
「んー……んしょ……ふぅー……」
紗季が起き上がると大きく伸びをした。
「まだ休んでたほうがいい」
「大丈夫だよ。もう、平気だから。それよりも、ハカセがわたしになにを聞きたいか当ててみせよっか?」
紗季の目がキラリと輝く。案外、いい加減なようで鋭いところがある。もしかしたら俺がなにを聞こうとしていたのか気づいてるかもしれない。
「ズバリ、わたしに彼氏がいるとかいないとかでしょ?」
「……一番どうでもいい話題だな」
……見当はずれだった。
「あれ? これじゃなかったか。それじゃあなんだろ。もしかしてスリーサイズとか? さすがにこればかりは親友のよしみでも教えることは出来ないかな。あ、代わりと言っちゃなんだけど、わたし彼氏とかいないからね」
「……誰も聞いてねーよ」
紗季は俺が聞いてもいないことをベラベラと勝手に喋っていた。相変わらずおしゃべりで、こっちの気持ちなんてまるで無視だ。そもそもスリーサイズなんて誰が聞くか。
でも……そうか彼氏はいないのか。なぜか紗季のその言葉に少しだけ安心していた自分がいた。
「さて、と。冗談はここまでにして、そろそろ本題に入ろっか。ハカセがわたしになにを聞きたかったことって、どうしてわたしがなにも言わずにいなくなったかでしょ?」
俺は思わず言葉に詰まってしまった。……これじゃあそれが正解だと言ってるようなものだ。はぐらかそうと言葉を探してみるが、そんなことをしたってきっと紗季はすぐに見抜いてしまうだろう。
仕方ない……。
俺は腹をくくると、大きく「そうだ」と頷いた。
「やっぱりそれか。きっと聞かれるだろうなって思ってた」
紗季がボトルに少しだけ残っていた水を飲みながら、浮かべていた笑みをひそめる。
「なんでなんだ」
「なんで……か。一言で言うのは難しいかな。ただ、何も言わずにいなくなったことにはごめんって謝っておくよ」
よっぽど聞かれたくないことなのか、紗季はわざと言葉を濁した。
「俺には言えないことか?」
「言えないわけじゃないけど、今はまだ言いたくないっていうのが本音かな。ごめん」
俺の追求を避けるでもなく、けれど受け止めるでもなく、紗季は困ったように眉根を下げていた。
こうなってしまったら俺が紗季に言えることなんて一つしかないじゃないか。
「気にするな。こうやって久しぶりに再会できたんだ。理由ぐらい、いつだって聞ける」
「でも」
「じゃあ話してくれるのか?」
「……ごめん」
「別にいい。お前が話したくないって言うんだったら、俺は聞かない」
「……うん、ありがとうハカセ」
「気にするな」
俺はポケットの中から水と一緒に買った、すっかり温くなってしまった缶コーヒーを取り出した。
そうだ。俺の前からどうしていなくなったのか、その理由が知りたくないわけじゃない。だけど紗季が嫌がることをしてまで聞きたいわけじゃない。ならば聞かないでおくのが正解だろう。それに、理由なんていつだって聞ける。だから、今はそれでいい。俺はそう思うことで自分を無理やり納得させたかったのかもしれない。
「ハカセはやっぱり変わってないね」
「そうか? ……いや、そうかもな」
「そうだよ」
ふふっ、と紗季が嬉しそうに笑った。
「そういえばさ、わたしたちまだ乾杯してないよね?」
「乾杯ならさっきしただろ」
「そうじゃなくって、二人だけでってことだよ」
「でも、乾杯するっていってもお酒なんてないぞ?」
「これがあるじゃない」
そう言って紗季が手に持っていたボトルを掲げた。なるほど。確かに乾杯には違いない。
「それじゃあ、なにに乾杯する?」
「そうだね……二人の再会に、なんてどうかな?」
「ずいぶんと格好つけた乾杯だな」
「いいじゃない。せっかく二年ぶりに会えたんだし、きっとこういう機会なんてそうそうないよ?」
俺は「そうだな」とだけ返した。
「それじゃあ、乾杯の音頭よろしく」
「俺がやるのか!? ったく、そういう人任せなところも変わってないな」
「まぁまぁ、こういうのってやっぱり男の役目でしょ?」
「そういえばなんでも通ると思ったら大間違いだぞ。ま、別にいいけどな。それじゃ二人の再会を祝して──」
「「乾杯」」
お互い手に持っていたものをぶつけ合うとベコっとなんとも情けない音がした。
「あはは、やっぱり缶コーヒーとペットボトルじゃ格好つかないね」
「別にいいだろ。こんなのは気持ちだ気持ち。それに乾杯をやろうって言いだしたのはお前だろ」
「それもそっか。とりあえずまたよろしくねハカセ」
「またお前に振り回されるのかと思うと気が滅入るな」
「とか言って本当は嬉しいくせに」
「んなわけねーだろ」
そう言って俺は手に持っていた缶コーヒーを飲んだ。
久しぶりに飲んだコーヒーはどこかほろ苦く感じた。
「やっぱりビールのほうがよかったかな」
その一言に思わず呆れ返ってしまった。
まったく……こういうところも変わってない。
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