黒の少年が日向に出会って輝き始める魔法世界の物語に、きっと夢中になる

しっかり練られた世界観でも、難しすぎず入りやすい。そのうえで世界観の描写に不自然さをほとんど感じないのがGOOD。そのおかげで1話ごとが濃くても、スムーズに読み進めることができる読者にも優しい作品になっている。

物語は学園ものらしい楽しい一面がある一方で、少年少女の身の上に合った思いや葛藤、世界観が生み出す悪意の数々も余すことなく書かれていて、作中のシリアス部分へとのバランス上手くとれている。

……ここまではレビューを残す誰かが語っていることだろう。私がさらに推したいのはもっと細かいところだ。

作品より抜粋
『談話室の壁はすべてガラス張りになっている。(中略)
 床には毛足の長い赤いカーペットが部屋の端まで敷き詰められていて、座り心地のいい革飾りのソファーがローテーブルを挟むように、いくつも置いてある。
 フロアにはちらほらと人がおり、カードゲームに興じたり、他愛の無い話で花を咲かせたりとーー』

本筋とはあまり関係の無さそうなただの学園(作品の舞台)の一幕だが、そこで、描写を省くのではなく、主人公の目に映るものをしっかり描写することで、読み手側が受ける印象が彩られるのだ。そのような場所が上の例だけでなく、さまざまな場所で見ることができるため、見ていておもしろい。

章の構成も工夫されていた。1章ずつまとめ読みするのに、長すぎず短すぎずという感じだ。毎週1章ずつ読んでいこうと思えるくらいで、綺麗にまとめられていた。

そんな細やかな作者の作品に対する工夫も楽しみの1つとして見てみて欲しい。

日向の道がどこへと続くのか、ぜひ追っていきたいと思える作品だった。



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