第38話 誘拐して家の押し入れに隠しておきたい位

翌朝7時。

眠りから目覚める。ボーっとしていた頭が徐々に覚醒していく。

両腕両足は、彩奈と恵がホールドしている。動けない。そして柔らかい。

俺が体を動かすと2人とも動き出した。目が覚めたか?

ぼんやりと周りを見る2人がプレゼントを見つけたようだ。

「メリークリスマス!一日遅れたけど」

2人は大きく驚いてくれた。よしよし、真夜中の変質者サンタになってよかった。

2人は箱を開けた。

彩奈と恵はそれぞれ俺と同じ指輪。これ実は結婚指輪のコーナーにあったやつ。シンプルでかっこよかった。

「ありがとう。嬉しい」

彩奈にキスをされた。

そして恵は、

「私も同じ指輪。あとネックレスもある」

「そのネックレスな。俺と彩奈がしてるの見ただろ。ならば恵にも必要だよな」

「千秋につけてほしい」

恵の後ろからネックレスをつけてあげる。恵にキスされたので、お返しに、お胸の先にキスしてあげた。

普段は指輪をしない俺は、

「指輪はネックレスに通して胸の中にしまってもいい。俺はそうする予定」

そう言って、俺はネックレスに指輪を装着し、2人は右手の薬指に指輪をした。左手じゃないのかと聞いたら、俺が双方の親に挨拶して、籍を入れた後にするって。

早く挨拶に行きたいものである。


ホテルで朝食を食べた。昨晩の激しい運動のせいでかなり空腹だ。

朝食はバイキングだある。バイキングって食べすぎるよね。とりあえず和食セットと洋食セットを用意した。

彩奈は果物とヨーグルト。恵は和食。それだけで足りるのか?特に彩奈。

食後はロビー横の喫茶店で、新聞を読みながらコーヒータイム。彩奈と恵はお土産を見ている。

足を組んで、新聞を読みながらコーヒーを啜る。ちょっとできるサラリーマンみたい。

2人が戻ってきた。そのお土産ってどこのお土産買ったんだ?ずっとホテルにいて何処にも行ってないけど。

なんだかんだでチェックアウト。ちょっとお金はかかったが大満足でした。

事務所の社長に臨時ボーナス貰ってたんだよね。頑張って事務所に貢献してるって。30万ほど。毎月の給料も上がってるし最高だぜ。浪費家にならんように注意しないとな。

よし、あとは買い物か。2人の足取りが軽い。結構楽しみにしてたんだね。


アウトレットまではホテルから送迎バスが出ている。ホテルから5分の距離なので、すぐに到着した。

今日の俺は、2人からクリスマスプレゼントで貰った、彩奈愛用の某有名メーカーのサングラスをかけている。そして首には恵の手編みマフラー。これなんか複雑な模様だけど、どうやって編んだんだ?

身バレ防止と寒さ対策バッチリ。身バレはまずないけどな。だってそこまで有名じゃなしし。彩奈のほうがはるかに認知度が上だ。

まずは荷物をコインロッカーに預ける。買い物に邪魔だからね。

彩奈と恵はそれぞれ行きたい店をピックアップしている。ほとんどの店をピックアップしてないか?

10時になってお店が開くと、周りにいた人たちもそれぞれの店に入っていく。

彩奈と恵は、ほぼすべての店に行くみたいだから、端から順に回った。

俺は2人の後をついて回るだけ。買った荷物は俺が持つことに。さすがに高校生が、持ちきれない量の買い物をするとは思わないが、最悪持ちきれなくなったらコインロッカーに行けばいいか。

「恵、こっちの服はどうかしら」

彩奈はモデルだけあって、服のセンスがいいと思う。それに、恵も美少女だから、どんな服でも似合っちゃうしね。

午前中はそんな感じでお店をまわって行った。

途中、休憩の為に俺はドリンクを買いに行った。ベンチで待つ2人の元に戻ると、彼女たちはナンパされてる真っ最中である。まぁ、あれだけの2人だ、そりゃナンパされるよな。

「俺たちと一緒に回ろうよ。絶対楽しいって。何か欲しいものあるの?ちょっと位ならプレゼントしちゃうよ」

「そうそう、みんなで回るほうがいいよ。俺たちがエスコートするから」

彩奈は無視をし、恵は苦笑いで男たちに答えていた。

「あー、そういうのは間に合ってます。連れもいるんで?」

「えー、君たちしかいないよね。遠慮しなくていいからさ。もし、買い物がつまらなかったらドライブでも行かない?」

「連れは飲み物買いに行ってるんですよ」

「その子が戻ってきたら一緒に行けばいいんじゃね?」

「連れは男の子ですし。ほら、他にも女性はいっぱいいますよ。そっちで頑張ったらどうです?」

恵は優しいな。遠回しに断ってるけど、相手には通じてないぞ。コッソリと建物の陰から見ていた俺です。男たちもチャラい恰好だけど、強引に連れて行こうとか、体に触れようとかはなさそう。

「男の子って彼氏たちってこと?」

「一人ですよ。私たちのお気にの子なんですよー。かっこいいし、優しくてマジ惚れますよ。人気高いんで逃したくないんですよ」

恵が調子にのって余計な事言い出した。

「そんな男いるんだ。マジか。じゃ、俺たちが一緒に遊ぶ可能性は0%なの?」

「そうですね。残念ながら。私たち2人ともノックアウトされてるんで。むしろその子を誘拐して家の押し入れに隠しておきたい位なんですよ。お兄さん、なんかいい手ありませんかね?あ、犯罪はダメです。合法なら多少の無理は通します」

恵の無茶ぶりが始まった。

「ちょっとその男見てみたいんだけど。マジすげーな。お姉さんたちに愛されすぎて幸せ者じゃん。かぁー、羨ましすぎて涙出てくるわ」

なんか盛り上がってきてる!?もう行くか。

俺は2人の元に歩いて行った。ナンパ男は近づく俺に気づき、まじまじと俺を見る。

「あ、彼氏君ですか。お疲れっす。彼女さんたちってマジきれーですよね。お幸せに!」

なぜかイイ笑顔で帰っていった。

「千秋、そこの建物の陰で見てたでしょ。私は気づいていたんだからね」

彩奈は無表情で俺に答えを求める。

「ごめんごめん、ナンパされてるの気づいたけど、危なくなさそうだったし、どんな風にナンパされるのか興味があった。それに2人でいたら、ナンパされるのは既定事項だからね。可愛すぎるから」

「ダメ、私は怒っている。恵がうまく受け流していたけど、私はイライラしてた。

彩奈の隣に立ち、頭をイイコイイコしてあげる。

「悪かった機嫌なおして。ほら、2人にご飯ごちそうするから」

彩奈は、プイッっと明後日の方向に顔を背けながら、

「次はすぐに戻ってきて。それが彼氏の役目なんだから」

と言った。了解、すぐに戻るよ。うん、怒ってはいないようだ。良かった。

「わるかったよ。恵もナンパの受け流しありがとうな。お詫びにお昼おごるぞ」

「わーい、やったぜぃ!」

こっちは最初から怒ってない。

買ったドリンクを渡して、10分ほど休憩を入れて買い物を再開した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る