第24話 月がきれい

風呂に入ったにもかかわらず、汗びっしょりの2人がベッドで抱き合っている。

「好き」

「俺も好き」

「たくさん好き」

「知ってる」

「いっぱいいっぱい好き」

おい、何だこの生き物は。可愛すぎるだろ。

夕食前にもう一度風呂に入ろう。

「彩奈、動けるか?汗を流しに行こう」

ぎこちない動きの彼女を支えて風呂に入る。さっきと同じで抱きかかえながら湯につかる。

「体は大丈夫?女の子の負担が大きそうだから」

「平気。ちょっと痛かったけど、それも幸せの一つだから」

「2人そろって初体験だよ。一生に一度の体験だ。彩奈と一緒でよかった」

啄むようにキスをしながら彩奈と語る。

「私も千秋君で……よ、かった」

彩奈はポロポロと涙を流しだした。何故だ?

「嬉しかった。千秋と付き合えてよかって。出会えてよかった」

俺の手をギュッギュッと何度も強く握り、振り返りながらキスをせがんでくる。

「それは俺も同じ。4月に初めて会った時はこんな関係になるとは思わなかった。最初は互いに友人の友人だったしね」

「うん、恵が幼馴染を紹介するって」

「それが今ではこんなに愛し合う仲になった。俺はすごく幸せ者だよ。こんなに可愛い彩奈に、こんなに沢山愛してもらえて」

話しているだけで気持ちが止まらなくなる。いや、止める気すらない。

両手で彩奈の頭を包み込みながらありがとうと言った。


運動後の夕食

仲居さんが夕食を運んできた。

大きいテーブルに沢山の美味しそうな料理。昼に続き、これ食べきれる?って感じ。料理一つ一つも繊細でキラキラしている。

「すごいね。俺、こんなの食べたことないや。なんか料理がキラキラしてる」

「仕事で人気がでれば、いくらでも食べられるよ」

彩奈は何回も食べてるようだ。俺もこんな料理を出されるようになりたい。

お酒は飲めないのでジュースで乾杯。自撮りで乾杯や食事風景も撮影。2人の記念日を記録するのだ。

肉・魚・野菜のどれも繊細な仕上がりで飾り付けられている。

「彩奈、あーん」

バカップルの定番のあーんを行う。

「はい、お返し。あーん」

本当にありがとうございました。

デザートを食べた後は、また2人のまったりタイム。

広い部屋なのに2人はくっついている。聞こえるのは、森の音と虫の声、肌に吸い付くキスの音だけ。

「ねぇ、千秋。彩奈はおかしくなっちゃったかも。だって千秋と一緒にいると体がキュンってなっちゃう」

「いいんだよ、俺と2人の時だけは本能のままの彩奈でいいから」

彩奈は俺にしなだれかかってくる。

「他の男がいるときはいつもの彩奈でいてほしい。甘える姿を見るのは俺だけでいい」

「うん」

「時間はタップリあるから愛し合おう」

俺たちはまた露天風呂に入る。

「あー、月がきれい」

月明かりが彩奈を照らす。無邪気に笑う彩奈の白い肌が、月の光を浴びて美しくも妖艶にみえる。

「ホントにきれいだ」

寝るまでの時間、ずっと彩奈と愛し合っていた。愛しても愛しても彩奈が欲しくなる。俺、病気かもしれない。



旅館で迎える朝

布団がいつもより暖かい。気持ちいい。ずっと眠っていたい。

あれ、そうだ。昨日は彩奈と。

「千秋おはよう。ねぇ、これって朝チュン?」

「朝チュンだねぇ」

「すごい、これが有名な朝チュンだよ。あとで恵に朝チュンしちゃったってラインしよ」

「え、エッチしたのバレるよ」

「あっそうか。じゃ記念撮影」

彩奈はスマホ自撮りで2人の写真を撮った。

そして風呂。朝風呂の気持ちよさは至高。鳥の声を聞きながら風呂なんて贅沢だ。

すっきりとした気分で風呂を出ると朝食の用意がしてあった。俺が風呂に言ってる間に用意してったらしい。

しかし朝からすごい品数だな。一つ一つの量は少ないけど種類が沢山ある。朝からこんなに食べれるか?

「朝からすごいね。私いつも果物とかシリアルだからこんなに食べれないかも」

「俺が頑張るさ。早速頂こうか」

うわ、どれも美味しいや。これ普通に全部食べちゃうかも。

俺は全部綺麗に食べたが、彩奈は少し残したようだ。

朝食も食べたしあとはチェックアウトするだけ。時間はまだ数時間の余裕がある。ってことは?

そう、食後の運動だ。

「彩奈、こっちおいで」

彩奈を脱がして隅々まで堪能した。朝から2人して汗やら体液まみれに。

「ごめん、完全に彩奈にやられちゃってる」

「私にはいくらでもしていいんだよ。彼女なんだから」

いくらでもさせてもらいます。

俺たちはチェックアウトを2時間延長した。



帰り道

宿をチェックアウトする。朝から盛るとは思わなかった。俺は猿か。

「朝から負担かけてごめん」

「負担じゃないわ。私だって望んでいるんだから」

くぅ、その笑顔にやられる。

後は帰るだけだが、彩奈が大涌谷の黒たまごを買いたいと言うので寄ってみた。

温泉の高熱で茹でた卵は殻が黒くなってる。これを食べると寿命が7年延びると言われてるらしい。

その場で1個づつ食べて、家族と友人のお土産としていくつか買った。

普段とは違う彩奈がたくさん見れた今回の旅行は最高。

クールな彩奈もいいけど、俺の前では甘えん坊な彩奈でいてくれたほうが嬉しい。

「2人の時はたくさん甘えるよ。私だって女子高生だもん」

”だもん”だって。萌える。

帰りの電車もずっと手をつないでくっついていた。素晴らしい旅行をありがとう。



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