第23話 箱根

運命の箱根

朝9時。駅近くの駐輪場で彩奈と待ち合わせ。ここはあまり目立たない場所なので、有名人の彩奈との待ち合わせによく使う。15分前に待ち合わせ場所に着くと、同じタイミングで彩奈も着いたようだ。

「おはよう、彩奈」

「千秋っ」

おはようのキスをする。人がいないのは確認したよ!?

「今日が楽しみすぎて寝不足気味」

「私も」

互いに確認するように再度キス。

「じゃ、行こうか」

彩奈のキャリーバッグと自分の鞄を持ち駅に向かった。彩奈は俺の横にピタッとくっつて歩いている。

「私、芦ノ湖でボート乗ってみたい」

「スワン?手漕ぎ?」

「手漕ぎボート。千秋漕いでくれる?」

漕げるかなぁ。

「デートっぽくてロマンチックでしょ。カップルっぽいことをしたい」

「いいね。カップルっぽいこと沢山しよう。俺もやりたいな」

彩奈とつなぐ手に力が入る。手をつなぐだけで幸せになれる。



俺たちは芦ノ湖にいる。

ボートで1時間ばかり湖上散策を楽しむのだ。

レッツゴーと意気込んでボートに乗ったがなかなか進まない。

「千秋も苦手な事あるんだ」

ふふっ、と笑われてしまった。

「おかしいな、さっき動画で漕ぎ方調べたんだけどな。でも。ちょっとは進んでるよ」

彩奈は片手を船べりから下ろし、指先を水につけながら微笑んでいる。ちょっとした動き全てが絵になる女性。それが彩奈。

「湖の風が気持ちいい。千秋と旅行に来れてよかった」

「俺だってそう思ってるよ。こうした時間を彩奈と過ごせるのは、ものすごく贅沢で至福だと思う」

「ずっと……一緒にいたい」

「ああ、ずっと一緒にいる」

ボートの上での甘い言葉合戦は引き分けでした。2人は同じ気持ちだから、勝ち負けなんてないけどね。

ちょっと早めに岸に向かう。だって進むのにものすごく時間がかかるから。桟橋に着くころには腕がパンパンになっていた。

「楽しかった。ボートなんて小さい頃にお父さんと乗ったきり」

「俺は初めて乗ったよ。スワンだったら千尋と漕いだことあるけど」

2人で湖畔を散歩する。

たまにカップルとかが”あれ、安西彩奈だ”とバレてるようだが気にしない。ばれてもいいと事務所に言われているし。

恋愛自由な事務所でよかった。昔は、モデルや歌手は、恋人NGって時代があったらしいけど、今は全然そんなことない。TVに出てたって一人の人間なんだから好きな人位いるだろうと。ファンは多少減るかもしれないけど、そこから増やしていくのも本人の実力だ。

「お腹すかない?俺なんか食べたいな」

目の前にいくつかの食堂があった。


「海水浴行ったときに、桂子さんが言っていた、おんぼろな食堂は名店という言葉に倣ってみます。あそこにしましょう」

食堂の入り口には”おんぼろ食堂”と書かれていた。

そのまんまじゃないか。

店に入り席に通される。意外にもお客さんは入っている。店内はちゃんと清掃されており、この店のおんぼろは何処からきたのだろう。

壁に貼ってあるメニュー表をみて料理を注文。彩奈はチャーハン、俺は唐揚げ定食。互いに無難なものを頼んだ。

注文の品が着てびびった。皿に大きい唐揚げが6個乗ってる。チャーハンはどう見ても大盛だ。

「ものすごい量よ、食べきれるかしら」

彩奈がそう言うのもわかる。だって唐揚げ定食のご飯も山になってる。出されたからには食べきるしかない。

「食べきれなかったら俺が貰うよ。気合い入れて食べよう」

「「いただきます」」


頑張ったよー。普段食べない量を食べたよ。

今。俺と彩奈は湖畔のベンチに腰かけている。お腹いっぱいで動けない。

「すごい食堂だった。大盛頼んでたら、絶対に食べきれなかった」

「かなり食べちゃった。運動しなきゃ太っちゃいそう」

今夜は彩奈と運動したい。絶対する。

「ねぇ、あの湖の中に立っている鳥居に行ってみない?」

「少し離れてるけど歩ける?いや、食べた分を消化するためにも歩いてみるか」

「うん、頑張って歩こう」

ベンチから立ち上がり鳥居を目指すことにした。ちゃんと手はつないでね。

ゆっくり1時間ほどかけて目的地の鳥居に着いた。半分の時間で着く距離だったけど、お土産屋さんに入ってあれこれ買ったからね。

鳥居は湖に突き出して立っており、観光客が鳥居をバックに写真を撮っていた。湖の中に鳥居なんて神秘的だ。

俺たちも、2人並んでる写真を道行くおじさんに写メしてもらった。おじさんありがとう。



時間も15時になる。ちょっと早いが今日の宿に向かった。

芦ノ湖の湖畔にある落ち着いた感じの旅館。本当にここ?高級感がにじみ出てるんですけど。

「すいません、本日滞在予定のレイヴンプロモーションですけど」

旅館のフロントで事務所名を告げる彩奈。個人じゃなくて事務所で予約したのか。

すぐに部屋に通される。たくさん並んでる客室の前を通り、何故か外に出る。

「彩奈、外出ちゃった」

「離れの部屋だよ。露天風呂付の部屋」

木々の中を歩いていくと、小さな建物が現れる。これ普通に家みたいだな。

玄関を開けて中に入る。やっぱり広い。和室・ダイニング・寝室があり、寝室にはキングサイズの和風ベッドがあった。

「すごい。こんな部屋見たことない。ほら、庭に露天風呂もある」

「私もここまで立派だと思わなかった。だって無料宿泊券だし」

食事は18時半。今は15時半。

「彩奈、お風呂入ろう。温泉温泉~」

「うん」

小さくうなずきお風呂の支度をする。タオルOK、浴衣OK!

「俺、先に露天に行ってるよ。色々準備できたらおいで。心のね」

俺は先に露天風呂に向かう。

彩奈は恥ずかしがってすぐにはこないだろう。ゆっくり待つか。

……ってもう来た、はやっ!

タオルを巻いて恥ずかしそうに露天風呂にはいってくる彩奈。

もうね、タオル巻いててもわかるよ。そのわがままボディに目が釘付けだよ。

「あんまり見ないで、恥ずかしいから」

照れながら俺の横に座り体を洗う。もちろん体を洗うのでタオルはない。目の前の鏡越しにはっきりと見える。見えるよ。見えちゃってるよ。全部見えちゃってるよ。

体を洗い終わった彩奈に手を差し出し立たせる。2人とも何も体につけていない。

「お風呂に入ろう」

手を引いて露天風呂につかる。ゆっくりと湯につかる。彩奈は俺の前。後ろから抱きしめながら一緒につかる。

「千秋はエッチだ」

あれか?後ろから抱きしめる手が乳を覆っているからか?それとも彩奈のお尻にマイサンが当たっているからか?

「そうさせたのは彩奈だよ」

首筋にキスをしながら優しく胸を触ってみた。

「くすぐったい」

「やわらかい」

「もう、我慢できないの?」

「我慢する必要ある?」

ぎゅっと抱きしめる。

「好き」

「好きだよ」

「私に千秋をたくさん刻んでほしい」

体力よし!気力よし!攻撃準備完了!戦闘開始!

俺は彩奈をベッドに連れて行った。


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