第17話 あたしは恋愛マスター

俺たちがパラソルの下でくつろいでいると恵が戻ってきた。

「あー、のど乾いたよー」

今の俺は誰にでも優しくしてあげられる。俺はコーラを買いに行って恵に渡した。

「サンキュー!それで2人は付き合ってるの?」

「何で?」

「だって海の中で抱き合いながらキスしてたし。しかも何回も何回も。軽いキスから濃厚なキスまで」

彩奈が手に持っていたコーラを落とした。

「だって私が岸に行こうとして振り返ったらキスしてるんだもん。見てたらどんどんエスカレートしてくし」

おい、お前は全部見てたのか。最初から最後までか。オーマイガー!

「ニヤニヤが止まらなかったよ。いつあたしが見てると気がつくかなーって見てたのに。全く気がつかないんだもん。完全に2人の空間に入り込んでた」

彩奈は一生懸命に顔を背けている。耳が真っ赤だぞ。

「いつから付き合ってたの?」

「30分前から」

ぷっ。

おい、今笑ったぞ。こいつ笑いやがった。隣の彩奈はさらに赤くなっている気がする。

「付き合って盛り上がった結果があれなの?」

「はい」

「千秋は場所を考えなさいな。彩奈もだよ。まぁ、おめでとう。早いか遅いかの違いで、こうなる事は予想してたけどさ」

あ、ありがとうございます。しかし、付き合って30分でばれるとは思わなかった。

「みんなに報告するの?」

まだ考えてないです。はい。

「ちゃんと2人で決めるんだよ」

「「はい」」

「恋愛に悩みはつきものだからね。何かあったら恋愛マスターのあたしに相談するように」

「お前、恋人いた事ないよな。いつ恋愛してるんだ?」

「TVで研究しました。なので恋愛マスターです」

恋愛マスターのハードル低いっ!



全員が海から上がったので、早めに帰って夕食の準備をする事になった。

帰りにスーパーで食材を購入する。今夜の夕食は……BBQ!ってまた肉祭りになるんじゃないか。

俊彦の手にはカルビが。恵の手にはホルモンが。彩奈はステーキ、秋司はハラミ、桂子はプリン?おい、可愛いな。ってまた野菜がないぞ。俺はシイタケと玉ねぎを購入した。

別荘の庭にあるかまどに炭をセットする。火熾しのプロ、俊彦さんお願いします!

時刻は17時。まだ明るいけど早めにBBQ開始。

みんな一斉に肉を焼きだす。これ前回とまるっきりおんなじ展開だな。網一面の肉。肉謝祭再び。

「みんな野菜も食べろよ」

俺は網の隅に野菜をのせる。

「野菜なんかちまちま食えるかってんだ。肉焼け肉焼け」

なんか恵が男前なこと言ってる。

俺たちは肉を死ぬほど食ってBBQは終わった。


風呂に入り後は寝るだけ。

男は1階。女は2階。ちゃんと分かれて寝たんだぜ。当たり前ですね。

深夜12時過ぎ。俊彦と秋司はぐっすり寝ている。俺は何故か眠れずにいた。多分、彩奈との事で心が興奮して眠れないのかな。

どうせ寝れないならと庭に出て涼むことにした。庭の椅子に腰をかけて彩奈の事を考えていた。告白にOK貰えるなんて。あの告白って失敗してたら犯罪だよなぁ。好きって言って返事も聞かずにキスしちゃったからな。変質者と呼ばれるよになっちまうとこだった。

椅子に座ったまま体を反らせて伸びをする。うーん、気持ちいい。

ん、体を反らせたままで目を開ける。視線は上。2階のベランダからこちらを見てる人影?

「千秋起きてたんだ」

彩奈か。マジでビビった。なんかこう、霊的な何かと思ったじゃないか。

「なんか眠れなくて。彩奈の事考えてたら心臓がドキドキしちゃってね」

「私も同じ。そっち行っていい?」

「おいで」

彩奈は下に降りてきて俺と椅子を並べて座った。

「なぁ、夢じゃないよな」

「今日の事?夢じゃないよ」

「よかった。目が覚めたら夢でしたって落ちだったら泣くぞ」

彩奈の手をとり、軽くキスした。唇で唇を挟むように。彩奈の柔らかくてプルプルとした唇の感覚を味わう。最高すぎる。

「ねぇ、千秋。お互い仕事で忙しいかもしれないけど、沢山の思いで作ろうね」

「あぁ、沢山作ろう。いつも一緒いよう。ずっと一緒にいよう。嬉しい事も悲しい事も一緒に。一緒なら何があっても乗り越えられる。そして一杯愛し合おう」

優しくキスをする。

「遅い時間だからそろそろ中に戻ろうか」

「うん」



~安西彩奈~

千秋に好きと言われた。付き合うことになった。キスを沢山した。

これは夢?

違う、夢じゃない。恥ずかしい。でもそれ以上に嬉しい。

何を話したかはっきり覚えてないけどしょうがないよね。舞い上がってたから。

あの時は周りが見えてなかった事だけは後悔。だって、恋愛マスターに一部始終を見られてたから。これずっと揶揄われるだろうな。


その晩、私は昼の事を思い出してしまい眠ることができなかった。

思い出すたびに心臓がドキドキしちゃうから。恵の桂子もとっくに寝ている。あー、やっぱり眠れない。ちょっと風に当たろう。

ベランダに出て外を眺める。目の前には真っ黒な海が広がる。所々明かりがついてるのは船かしら。

その時、下から音が聞こえた。誰かが外に出てきたようだ。

暗闇の中、目を凝らすと千秋が庭の椅子に座ってボーっとしている。千秋が伸びをした時に上で覗いてた私と目が合った。一瞬、ビクッってなったよね。

「千秋起きてたんだ」

千秋も私と同じで、昼の事を考えたら寝れなくなったんだって。可笑しい。

私は千秋の横に座って少しお話をした。まぁ、話だけじゃ終わらないんだけどね。

手をつなぎキスをした。キスがすごくいい。癖になる。当然、千秋とのキスだから嬉しくて楽しいのだ。

これから沢山の思い出を千秋と作りたい。これからが私の青春の始まりだから。

千秋、大好き!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る