第8話 上着の下で手をつなぐ


校外学習2日目

昨晩は外で一夜を明かしたわけだが、厚手のマットと寝袋のおかげですこぶる調子いい。綺麗な星空の下で眠ったからか。

敏彦と浜崎君に風邪ひかなかったか聞かれたが、思いのほか体調はいい。

「おはよう、千秋眠れた?」

彩奈たちは顔を洗いに行ってたみたいだ。気配を感じたが、俺は起きずに寝袋にくるまっていた。

「おはよう。ぐっすり寝た。星が綺麗で快適だった。たまにはいいかもしれない。それにしてもみんな早いな」

「千秋、女の子は身だしなみの時間が必要なんだよ~。千秋にすっぴんの顔見られても気がつかれないかもね」

「お前ら化粧しないでも十分だろ。まぁ、女の子の気持ちはよくわからないけど」

朝食に向かう前に俺も顔洗いに行かなきゃ。

「俺も身支度整えなきゃ。んじゃ、身の回りの片づけはしといてね。飯食ったらテントを撤収しないといけないから」

「あの、上原君おはよう。昨日はありがとう」

お、小泉さんちゃんと眠れたようだね。元気そうだ。

「ちゃんと寝れた?」

「うん、おかげさまで。寝る前はものすごく怖かったんだけど、上原君がテントの前にいてくれたから安心して眠れたよ」

「ならよかった」

みんな元気なら問題なしだよね。


朝食は校外学習センターで食べる。

みんな眠そうな顔である。夜更かししたやつは結構いたみたい。半分目をつむりながらご飯を食べてる。

昨晩の男子生徒たちはどうなったか気になったので、食事を食べた後に先生のところ向かった。

先生に話を聞いたが、今回の事はかなり悪質のハラスメントであり学校側も重く受け止めてるようだ。そりゃそうだ、犯罪の一歩手前だったからな。

男子生徒3人は朝食後に強制送還。親も呼び出されるみたい。自業自得だな。

皆のところに戻って男子生徒の顛末を話した。生徒の間でも男子生徒が女子に手を出そうとして連行されたと噂になってるみたい。みんな情報早いな。

その後、彩奈・恵・小泉さんは先生に呼ばれて色々聞かれたみたい。小泉さんの怯え具合を知ってる2人は、貞操の危険を感じるほどだったと説明した。あいつらもう学校来れないんじゃないか。まぁ繰り返し言うが自業自得だ。深夜に女性のところに無理やり侵入しようとして体に触れようとしたんだからな。

彼女たちは今日のレクリエーションに参加するか聞かれたらしい。精神的につらかったら帰宅コースで構わないと提案されたと。ただ、3人とも通常通りのスケジュールを希望したみたい。特に大事にならなかったからだな。


朝食が終わったのでテントの撤収作業。

敏彦と浜崎君が頑張ってくれた。女子はマットや寝袋、そして昨日使った食器などを片付けていた。俺?俺は徹夜で番をしてたから休んでおけと座らされた。めっちゃ元気なんですけど。

「あんまり眠れなかったよね?いいから休んで」

彩奈よ。俺はぐっすり寝て昨日より体調いい位だぞ。まぁ、甘えさせてもらったけどな。俺ずるいな。

撤収作業が終了したあと弁当を受け取った。ハイキングでの弁当だ。

標高は低いけど、山登りにはかわりない。気合いを入れていこう。運動不足が露呈しませんように。

「ほらー、お前ら行くぞ。気合い入れてけよな。体力なくて途中棄権とかはずかしいからな」

敏彦は意外にも気合い入っている。絶対に嫌がると思っていたのに。

浜崎君に寝てないんじゃない?大丈夫?と心配されてしまった。

荷物を持とうか?とまで言わせてしまった。全然大丈夫です。むしろ元気です。

それから約2時間。

みんなで雑談をしながら歩いてたので山登りも苦にならずにすんだ。班員の誰もが、まだ余裕がありそうだった。

昼食予定の湖畔について昼食。さすがに疲れが出てくる。弁当食べたら帰るだけ。

その後、集合場所のバス乗り場に着いて早々に着席。他のクラスメイトもおんなじ感じで随分と静かだった。

俺たちの座席は行きと同じ。上着をかけて寝てる彩奈は徐々にもたれかかってくる。これも行きと同じだな。違うのは俺もぐっすり眠ってしまった事かな。バスが到着した時は、俺の肩にもたれかかっている彩奈の頭に、顔を寄せて一緒に寝てた。上着の中ではやっぱり手をつないでいた。ブラボー!

解散して家に着いたらスマホにライン着信。恵からだった。俺と彩奈が寄り添って寝ている写真や、手を握りあっている写真が送られてきていた。とりあえずPCに保管しておいた。


校外学習の総評

野外活動の体験は面白い。プライベートでもキャンプしてみたいと思った。

まずはBBQからかな。

そして彩奈と手をつないでたのは最高です。無意識だったけどね。恵から貰った写真は宝物。休み明けに学校で彩奈に怒られる恵の姿が目に浮かぶ。恥ずかしいから写真を消して言われそうだけど消さないぜ!

総合的に見て濃い校外実習だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る