23日目 ダミー映像

「今日は魔機構システム受像素材ムービーデータを作っていくからね、コタン君、協力してね」

受像素材ムービーデータ?」


 企画提案書は王都に提出した。それが採用されるかどうかはともかく、内容を説明するための説明書のようなものが次に必要になるらしい。その中には実際にその魔機構システムを活用している際の光景を見せる必要があるとのことで、つまりは実際に人がよみがえる場面を再現しなければならなかったのだ。


「でも、魔機構システムってもう完成したんですか? それに戦争の場面とかどうやって撮るんです?」

「いや、もちろん魔機構システムは完成してないよ。それどころか、それを作る会社と死霊術師ネクロマンサーを面接してる段階だよ。でも王都には早い段階で魔機構システムの説明をしなきゃいけないから、その映像を撮る必要があるんだよ」


 コタンの質問に、上司である2級魔道師セカンド・ソーサラーのアムラトは 気まずそうに答えた。


「えっ、嘘の映像を撮るってことですか?!」

「まあそういわないで。社長いわく、とらえ方の問題だそうだから」


 別にコタンは聖人君子というわけではない。ただ、国の中枢である王都政府を嘘の映像でたばかってしまうことに何の抵抗も示さない自分の会社の最高責任者に、不信感のようなものを一瞬で抱いた。まさかそんな、とコタンは考え直してアムラトに聞いた。


「あっ、ひょっとして、この魔機構システムはこういう感じですよって、一例としてダミー映像を紹介する感じですか?」

「いや、社長が言うには、ガチの戦争中に見えるように受像素材ムービーデータを作れって……」

「はあ……」


 コタンとアムラト、他数名のスタッフはその日、ぼろぼろの服と赤い染料を買いだし、受像撮影レコーディング機能の付いた水晶玉で街の裏通りなどで撮影を行った。


「ぐあ~」


 死者がよみがえるときはこんな感じだろうか、とコタンは考えながら演技をした。周りの通行人がクスクスと笑いながら通り過ぎていく。


「元気よく生き返ってるところも撮ろう。どういう魔機構システムかまだ定まってないからね」


 剣や鎧は高価すぎて購入許可が下りなかった。支社内にあった板や棒などで武装して何とかやりくりした。ほかの支社も同じように苦労しているんだろうかとコタンは考えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る