第3話 「ヤツ」の特技は死霊術
「おいおい、洒落になってないぞ実際」
ホテル玄関前にずらりと並んだ狼らしき獣の群れ。
何故か某恐竜映画の「待て」のポーズを取ってしまっている俺。
俺の裡の「ヤツ」が囁く。
(手を貸してほしいかのう?)
「なんとかなるのか?」
(造作もない)
「じゃあすぐになんとかしてくれ。二度も死ぬのは御免被る」
このままでは生きた心地がしない。
(代価は……そうじゃな。おぬしの心を少しばかり覗かせてもらおうかのう)
代価?
っていうか――
「――心?」
(それともうひとつ、しばし体を借りるぞ)
「体をなんだって……ぐあっ!?」
俺の視界は一瞬暗転した。
俺の視界が切り変わった。
俺の見ている世界を、俺の内側から覗いているような不可解な視界だった。
「あはははははは! やはり生身は良いものじゃのう!」
儂は両手を天に突き上げ哄笑した。
獣どもが威嚇か警戒か、ぐるる、と唸る。
ケダモノ風情が。
生意気にも人の味を覚えておるらしい。
「ハッ、肩慣らしには丁度良いわ。しからば貴様らに食い散らかされた者どもの怨嗟、使わせて貰うとしようかのう」
儂はこの辺り一帯に埋まっている人骨を
儂の魔力を注ぎそれら全てを
骨だけでなく、痛み、苦しみ、怨嗟、未練。
つまりは死者どもの、生への渇望も一緒に、だ。
土と骨と妄執。
儂はそれらを練り上げていく。
練れば練るほど色が変わってゆく。
ただの
いざ!
そして一体の、全裸の少女が完成した。
うん?
少女?
歳は十二、三歳ほどか。
体の凹凸の少ない華奢な娘が出来上がった。
もしや儂、やってしもうたか?
なあ?
お主の触れてはならん禁忌の領域じゃあなかろうかコレ?
(知るか! こんなん普通だろうが!)
いやいやいやいや。三十がらみの男の記憶の深くに、自分の歳の半分以下の年齢の女子の裸体が転がっとるのはどう考えても普通ではあるまいよ。
儂はごほん、とわざとらしく咳払いをした。まあよいわ。見た目と性能はまた別の話よ。儂は違いの分かる死霊術師であるからして、そういったことには拘らん。
「さあ、儂を傷つけようとする害獣を駆逐せよ」
「はい、御主人様」
儂の創り出した全裸の少女は、無表情で頷くと狼の群れに突っこんで行った。
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