第二部
間違い
アイズベルクは全身を
果たしてそれは現れた。突然、脳髄が視覚情報を認識する。目の前には見慣れた笑顔。今となっては忌々しいそれは背後に染み一つない純白の翼を具えていた。監督官アンドレアその人だった。
「御機嫌よう、
アンドレアは狭い室内をゆっくりと歩きながら言葉を紡いだ。それ故声が遠ざかったり近づいたりした。
「貴女は自分の敗北を認めていないでしょう。味方に大損害は出たものの、『
「何故、私がちょくちょく
点が繋がって線を描いた時、彼女は叫び出しそうになった。出来なかった。口元も喉も感覚がなかった。
アンドレアは彼女の目に浮かぶ色で笑みをさらに深めた。「天使はみんな分化生命体を用意してあったのですよ。襲撃の日程が決まっていたので、それに合わせて成長が完了するように。
彼は優雅な仕草で両手の指を合わせた。「ところで、殺された天使の皆さんはたいへん怒っておいでです。監督官リオンを誑かし、偽造の通行証を造らせ、中央の天使を残酷にも殺して回り、挙句に哀れな奇形児を嗾けて議会をぶち壊しにした貴女に。彼らは貴女の
「貴女は自分が唯一人の生き残りだと思っているでしょう。ですが、それさえも
アイズベルクはそれを幻覚だと思った。哄笑するアンドレアの翼が枯草色に変わり、背後に巨大な翡翠の色彩が広がるのを。その色彩の中に碧い目が幾つも並び、ぎょろりとこちらを見遣るのを。
彼女は息が詰まるような感覚を覚えた。碧い目から自分の目を逸らす事が出来ない。狂喜する
「貴女は以前言いましたね、『目的の為ならどんな障害でも踏み越える』と。『多少の犠牲で挫けはしない』と。目的の為なら手段を問わないなんて平気で口にする人間の説く
声が出せたなら、彼女は叫んでいただろう。
お前こそ、本物の
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