決起集会
アイズベルクは空き倉庫に集まった三百人程の同志を見回した。うち七割強がアンドレアの手引きで
皆さん、今日という日に集まってくれてありがとうございます。私達は明日、議会に『突撃』し、これを占拠します。しかし、これを
私は、辺境の農夫の家に生まれました。誇張抜きに、生活水準はこの国で最底辺でした。私の家だけではありません。周囲の誰もが貧困に喘いでいたのです。痩せた土地で必死に作物を育てても半数は実らず、家畜は皆病んでいても治療さえ出来ませんでした。今からちょうど千日前、私は『
時として忍耐は美徳と称えられるでしょう。しかし、そうでない時もあります。それが今。異常に静止し停滞した時代を、私達で打ち砕きましょう。
私は『啓示』を受けてから、一昼夜とて休んだ事はありません。これからも立ち止まるつもりはない。この地に
場内は拍手と喝采が溢れた。音が外に漏れるのもお構いなし――もっとも、終業時間をとっくに過ぎているので周りに第三者がいるはずもないのだが。
アイズベルクは大きく息を吐いた。平静は破られ、言葉を続けるうちに緊張は興奮に変わっていった。傍らに立つアンドレアが微笑みながら拍手していた。
「
「いいえ、まだこれからです。これから、始まるんです」アイズベルクは汗を拭いながら答えたが、高揚は抑え難いものになっていた。
「大丈夫、きっと何もかも上手く行きます」物陰から現れた人物が言った。真っ白い翼、アンドレアのものとよく似た衣服。懐かしい顔。アイズベルクの故郷・第六十四区の
「リオン先生……!」アイズベルクは目頭が熱くなるのを感じた。
「アンドレア氏から決起集会の予定を聞いて、あなたの雄姿をどうしても見ておきたくなりましてね。仕事を片付けて、どうにか間に合わせる事が出来ました」
「先生……。言ってくだされば、時間を遅らせるくらい――」
「いえ、そんな事をしてはいけません。あなたはもう一個の人間ではなく、社会に奉仕する使命を負った存在です。私の都合で時間を融通させては、皆に示しがつかないでしょう」
「ああ、そうでした。ありがとうございます、先生。私はまだまだ学ばねばなりませんね」
「大丈夫、慌てる事はありません。ゆっくりでも確実に身につけていく事が肝要です――」
師弟の再会を、アンドレアは目を細めて眺めていた。造り物ではない、本当に心から楽しそうな笑顔で。
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