第5話・偉能力

ナイチンゲールは今度は冷たいお茶を入れ直し、武蔵坊弁慶は話を始めた。

「ここは偉人が一つの時代に生きる世界だ。」

「はい、そこは前の話で聞きました。」

「初見の人もいるだろ。こんなヘンテコな話。」

「あまりふざけないで下さい。それに第1話からボケ過ぎです。後々シリアスになるのに。」

「そういうフラグ立てようとするな!」

と弁慶と歴坊の話が完全にズレていると

「うるせぇーー!!」

積んであったダンボールから一人のおじさんが現れた。


「ひぃえゃあぁぁぁ!!」

歴坊が驚き、コンセントの線につまづき、転んでしまった。

「すまない。この歳で言葉遣いが悪かったな。」

「ねぇ。源じいからあの話をしてよ。」

ナイチンゲールはおじさんに”異能力”について急かすように頼み込んだ。

「俺の出番が……セリフ量合わせに入ったか……」

するとみんな弁慶の顔を真顔で見つめた。

「いいぞ、ジジイ。話して。」「ジジイじゃない。私の名前はそう、”平賀源内”。その人である。」「どの人?」

「ゲール……そこは話を合わせて……」

するとナイチンゲールは源内に向けて正座して頭を下げた。

「ははぁ。平賀源内様~」

「うむ。」

源内は満更でもないようだ。


「”異能力”は”偉人”のみが使える特別な能力の事だ。」

「凄いです!源内さん!」

やはり満更でもないようだ。

「例えば……弁慶は歴坊君に1度能力を見せた事があるようだな。」「確かにな。」

歴坊はなんのことか分からずにいたが、ナイチンゲールが弁慶のモノマネらしく、手で前をかざすポーズをとるとすぐ歴坊は理解した。

「変なバリアのやつですね。」「変な……」

「安心しろ。弁慶。顔が変だから変なやつが出すバリアだ。」

「長いよ。源じい。ハゲバリアだよ。」

「普通のバリアだよ!」

弁慶は怒りをあらわにすると、源内に話を進めるようせがんだ。


「では話を続ける。私たち機密組織通称”ヒスト”は”異能力”を利用して警察や探偵との協力、裏の連中を表へ引っ張り出す事が目的だ。」

「裏の連中ですか?」

歴坊が疑問を持つと今度は弁慶が説明し出した。

「要するに犯罪者や”異能力を悪用する”連中だ。」

「それって……偉人なのに……”異能力”を使って悪さしているんですか……」

歴坊はこの世界の悲しい現実に肩を落とした。

「歴坊。お前達の世界と俺達の世界は別物と考えるんだ。お前達の世界の固定概念に囚われるな。」さらに源内は話を続けた。

「”異能力”によっては人を傷付ける。最悪、死に至る事だってある。それは理解して欲しい。」

先程とは違い、源内は真剣な顔で語った。

「あの……僕……まだここで働くって決めてないんですが……」

歴坊は恐る恐る話した。


「えっ?」

歴坊除く三人は目が点になってしまった。

「弁慶さんが強制的に!」

「いや、ここは嘘でも働くって言えよ。イェスマンになれよ。」

どうやら源内とナイチンゲールは歴坊がここで働く事に決めたと弁慶から説明があったようだ。「じゃあ、改めてようこそ歴坊君。今日から僕達の仲間だ。」「ついでにこのモップで床掃除してて。」

「頼んだ、歴坊。ビシバシ働けよ。」

そうして強引に機密機関”ヒスト”で働く事になったのだった。


「最悪死ぬんですよね?!」

「あくまで最悪だよ。つーかここの連中はみんな生きてるし。」「いや弁慶さん……も~お!!」

”異能力”について知り、”ヒスト”の目的について知った歴坊の長いここでの生活が始まった。

「”異能力”じゃなくて”偉能力っていうのはどうでしょう?」

歴坊はホワイトボードにそう書いてみた。

「センスいい~。」

源内とナイチンゲール、弁慶をもがその言葉にそう反応した。

「え……thank you……」

歴坊はちょっぴり嬉しかった。

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