一方お嬢様はライバルと……


 純が指定された場所に猛ダッシュで向かっている最中、ノアは……。

 

 「久しぶりやな〜ノア。相変わらず素敵な面しなさって、憎たらしいったらありゃしないわー」


 「柚こそ、相変わらず姑息な手しか使わない脳なしで安心したわ」


 椅子に拘束された状態で、彼女を誘拐した主犯「六条柚」とあいまみえていた。スラッとしたスタイルにノアに負けず劣らずの美貌を持つ着物を来た彼女は、余裕を見せるためか扇子を仰ぎながらノアに話しかける。そして、ノアはそれに負けず不安を見せまいと余裕ぶっていた。


 長年この二人は対決をする機会が多く、特に柚がノアに勝負を仕掛けることが多かった。その際柚が様々な妨害をしてノアを出し抜こうとしていたが、それでも勝率はノアが優っている。いわば、この二人はライバル関係のようなものだ。


 「いややわー。うちはノアを傷つけないよう邪魔するためにこうしてあげたやで? むしろ感謝して欲しいぐらいなんよ?」


 「絶対にしないわ。そもそも、なんで今日私を捕まえたの。関西に拠点を移すようになってからは、ここまで大胆なことはしなかったでしょ」


 「せやな、実際パパもママもあんたら構ってる暇は今ないようやし。でもな、あんたらに忍び込ませてるうちらのスパイがな、今日のこと教えてくれたからわざわざユニ●行く予定やめてこっち来たんやよ」


 「今日のこと……? なに、私が純とここにくると何が悪いのよ」


 「悪いに決まっとるわなー。あんたみたいな乳しか取り柄ない奴が、あんなイケメンで、性格も良くて、料理もできて、運動神経も抜群で、でもちょっと抜けてて可愛いところもある純くんと一緒にディ●ニーデートだなんて……許されることではないで?」


 「…………え」


 真顔で純のいいところを急にたくさん言いだした柚に、ノアは驚きを隠せず口をぽかんとさせてしまう。


 「……も、もしかして……あ、貴女も純のことが……好きなの?」


 「……………………あー! し、しもたー!!! 怒りすぎてつい本音漏らしてもうた!!!」


 どうやら意図せず柚はそのことを言ってしまったらしく、それに気づいた後はあたふたと焦りだし、扇子を必死に降って真っ赤になった顔を涼ませようとしている。ノアもまさか柚が純に好意を寄せているとは思っておらずさらにキョトンとしてしまった。


 「……思えば、貴女が私の邪魔をするときはいつも純が一緒にいるときだったわね」


 「……せや! あんたの痴態見せてこっちに気を引こうとしたんよ! なのにノアときたらいつも難なく乗り越えて……ほんと、こっちの身にもなったらどうなん!? うちが純くんと結ばれへんやん!」


 「それはこっちのセリフよ! 貴女の都合で純とのデート台無しにされたんだから! それに……もうすぐ恋人になれるかもって時なのに……」


 「いやいや、うちが恋人になるから安心せえ」


 「ふ、ふざけないで!」


 怒りが溜まりに溜まるものの、椅子に縛られているためノアは椅子をガタゴト揺らすことしかできない。それを見て柚はほくそ笑みながら、落ち着きを取り戻したのかまたゆっくり扇子を仰ぎ出す。


 「そもそもな、うちがあんた今回捕まえたのはデートの邪魔するってのもあるんやけど……純くん、うちの彼氏にするためでもあんねん」


 「な、何を言ってるの!? 純は私のことが好きなの! 貴女みたいな性悪女のことなんて興味もないはずよ!」


 「でもノア、あんた純くんから直接好きって言われたことあんのかい?」


 「そ、それは……」


 それがないから、未だ踏み出せない。その事実を痛感させられたノアは、反抗する言葉を失ってしまう。


 「でもまあ、かつてあった主従関係があるからあんたのこと大事にはすると思うんよ。せやから、ノアを人質にとって、うちが純くんに彼氏になるよう要求する。それが今回の計画や」


 「ご、強引に付き合わせるって言うの!? そ、そんなの純が好きになるわけないわ!」


 「付き合ってから好きにさせるんや。うち、好きな人にはとことん尽くすタイプやから、楽しいこと、嬉しいこと、気持ちいいこと、いっぱいしてあげられると思うんよ。そしたら純くんもいつの間にかうちのこと最愛の彼女として認めてくれるわー」


 「そ、それは私だって負けてないわ! それに私は純と一緒にいる時間が貴女よりうんと長いのよ! だから貴女なんかになびくわけがない!」


 「でも付きおうてないやん。長い時間いるのに、純くん執事やめて一般人なっとるいうのにそういう関係になってへんのは……もう、二人はそうならないってことなんとちゃうか?」


 「うっ…………」


 そう言われてしまうと、ノアは何も言い返せない。事実、柚よりもノアはずっと純と一緒にいる。好きだって伝えるチャンスも、いくらでもあったはずだ。なのにそれを言えずにここまで付き合うことができないのは……柚のいう通り、そうならないのかも、とノアは思ってしまう。


 「……そうかもしれないわ。でもね……」


 だけど、これだけは確かなことがある。


 「私は純が世界で一番好きなの。昔も今も、これからも。だから貴女なんかに譲るつもりはないわ」


 そう、ノアははっきりと言い放つ。これだけは、ノアにとって間違いないことだから。


 「はっ。よういうわ! ならうちが純くんとイチャイチャしてるとこ見せてそう思わせられんようするわ! さて、そろそろ純くんがうちの執事達に捕まった頃かなあ………………え?」


 ノアと柚がいる部屋のドアが、ふと突然思いっきり開く。そしてドア付近には数名の男が倒れ込んでいる、その中で唯一倒れずに、息を切らしながらも立っている男が一人いた。


 「じゅ、純……!」


 「う、うせやろ……うちの見張り全部やっつけたってことやん……」


 「…………ごめん、待たせた。今助けるよ、ノア」


  ――――――――――――

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