【恋愛】「弄ぶ」「秋の公園」「あいつにはもったいない」

 雪が舞い降りるほど寒かった冬の放課後。

「あの人に『好きだ』って言われたの」

 頬を真っ赤に染めて嬉しそうに微笑んだ彼女。


 乱れ咲く桜に煽られた春の朝。

「やっと同じクラスになれたよ」

 眩しいぐらいの笑顔で報告してきた彼女。


 陽が落ちても団扇を手放せなかった夏の夜。

「一緒に花火を見て、夜店を回って、浴衣デートするの」

 最高に輝く瞬間を指折り数えて待っていた彼女。


 そうしてぐるりと季節が巡り、葉が紅く色づき始める頃。

「他に好きな人ができたんだって……」

 秋の匂いに満ちた公園で、ぽろぽろと止め処なく涙を流した。


 こんな辛い思いをさせるために応援したわけじゃない。

 こんな悲しい瞳を見るために言葉を飲み込んできたわけじゃない。

 陽だまりにも似た温かな表情を奪い、彼女の純情を弄んだ罪は深く重い。

 だから言ってやった。

「あいつにはもったいない」と。

 あいつよりよっぽど。


 よっぽど、私の方があなたのことを想っている。

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