【百合・恋愛・微エロ】先輩と私の秘め事

小説投稿サイト「ノベルアッププラス」百合フェア2020応募作品の転載です。https://novelup.plus/story/598159591


【作品タイトル】

先輩と私の秘め事


【エピソードタイトル】

二人きりの教室で


【あらすじ】

先輩の手が、ゆっくりと私の制服を脱がせる。

本当は知っている。彼女がたくさんの生徒や教師を相手にしているって。

それでも、どうかこのひと時だけは、あなたを独り占めさせて。


――――――――――――――――――


 先輩の手が、するりと私の制服を脱がせた。

 パサリと軽い音を立て、床の上にスカートが落ちる。

 それだけで心臓が跳ねた。


 白く細い指が、リボンを優しくほどく。

 続いてブラウスのボタンに手が掛けられた。

 第一ボタンは既に開いている。

 第二ボタン、第三……と下がってくると、ブラウスの隙間から下着がのぞいた。

 恥ずかしさのあまり、思わず両手で胸元を隠す。

 先輩が頬を膨らませて私を見る。


「こらっ。ダメでしょ? それじゃ脱がせられないわ」

「……でも、恥ずかしくて……」

 そう答える声が、緊張で震えてしまう。

「大丈夫よ。ここなら誰も来ないわ」

「……はい」


 私が観念して手をどけると、先輩は「いい子ね」と笑った。


「こういうことするの、初めて?」

「は、はい」


 先輩は、と尋ねようとして、口をつぐむ。

 その手の動きはあまりにも馴れていて、まるで作業のようだ。


 彼女が誰にでもこういうことをしているのだという噂を聞いた。

 男子生徒にも、女子生徒にも。

 ときには複数人を相手にしたり、教師を相手にすることさえあるという。


 先輩の知らない一面を見てしまったようで、胸の中がもやもやする。

 その一方で、私は先輩のことが大好きなのだと改めて自覚した。


 白く透き通るような肌。整った顔立ち。

 まっすぐに伸ばした黒髪は、どこかミステリアスな印象を受ける。

 長いまつ毛で飾られた瞳が、色っぽく私を見つめている。


「あなたに着て欲しくて、下着を持ってきたの。これをつけてくれる?」

「下着……ですか……」


 私はドキドキしながらそれを受け取った。

 人から下着をプレゼントされたのなんて初めてだ。それを身に着けるなんて、なんだかいけないことをしているような気持になる。


「あっちを向いているから、下着をつけたら教えてね」

「……は、はい」


 こういった下着をつけるのは、初めてだ。

 いつもつけているブラジャーやショーツとは色も形も違う。

 せわしなく騒ぐ心臓を押さえつけながら、どうにか下着を交換する。


「ど、どうでしょうか」

 私が声をかけると、先輩は優しく微笑んでくれた。

「いいわ。……とても綺麗よ」

 それだけで、全身がかっと熱くなる。


「さ、こっちいらっしゃい。続きをしましょ」

 先輩の瞳が優しく揺れる。

「……はい」

 私は言われるがまま、先輩の元へ戻る。


「こちらへ背中を向けて」

「はい」


 背中を向けると、先輩が肩にさらりと浴衣を羽織らせてくれた。

 袖に腕を通し、前を合わせる。

 先輩の声のトーンが一気に跳ね上がった。


「はうぁ、最っ高だわ~! やっぱりこの柄あなたによく似合うわね~!」

「あ、ありがとうございますっ!」

 私は照れくさくて思わずうつむいてしまう。

「もっと背筋を伸ばして。そうよ、いい子ねぇ。帯を締めちゃいましょ。あら、これも可愛いわ~! あなたって本当に最高よ!」

「えへへ……嬉しいですぅ」


 私の浴衣は白地に赤とだいだいの花模様があしらわれたもので、選んでくれたのはもちろん先輩だ。

 浴衣を着るのは初めてだったが、ここまで褒められると緊張を忘れて幸せな気持ちになる。


 先輩が着ている浴衣は紺色に大きな花火が咲いているものだ。

 大人っぽい色合いが、よりいっそう彼女の美しさを引き立てている。


「これで、みんなと一緒に夏祭りへ行けるわね」

「先輩のおかげです! 本当にありがとうございます!」

「いいのよ。私の趣味が役に立って嬉しいわ~!」


 いつか二人きりで夏祭りに行ける日が来るといいなあ、などと夢見ながら、私は今この瞬間だけ、先輩を独り占めできる喜びをそっと噛みしめる。

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